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一章・グリフォンって唐揚げで食べられるんですか?

10話:消えやがった。逃げやがった。

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 グリフォンは動くものを追いかける傾向がある。だが、通常は大空で何かパクパク食べてる事が多い。
 それを地上に引きずり下ろすため、グリフォンが大好きな鶏肉を身体に巻いた人間が囮として走り回るらしい。
 なんて、
「納得できるかああああああああ!」
 ドドドドドッ! と大地を踏み締め走り回りながら俺は叫び声を上げた。
 その後方数十メートルには。
「キョエエエエエエエ!」
「うるせえ! でけえ! キショイ! もうヤダ!」
 巨大な翼をばさばさやりながら、化け物が地上すれすれを滑空している。
「ていうかさあ、なんでいろはは囮やらないんだくそ! なあテン! …………、テン?」
 横を走っている、先ほどからやたらと静かなテンをちらりと見ると、口の中でぶつぶつと何か唱えているようだった。
「なむみょうほうれんげきょう……なむみょうほうれんげきょう……」
「おい、テン! 縁起でもないからお経を唱えるのはやめてくれ! つかなんでお前が南無妙法蓮華経を知ってるんだ!」
「いろはに教えてもらいました」
「あ、そう。ってお前意外と冷静じゃないか!」
「ええ。今なら頭にパンツを被って肥溜めに飛び込める気がします。サクの事大好きです」
「ダメだ! やっぱりぶっ壊れてる!」
 なぜなら、僕が女子から告白されるのは世界が滅びる日だからだ。ふふふ……。泣いてもいいかな?
「良いですか、そもそも私達に囮をさせるということは、私達は死なないって事です。囮なんですから。釣り餌じゃないんですから」 
「ほう。まあそれは確かに」
「だから……」
 テンがそこまで言って、ぴたりと喋るのをやめた。それは、前方からガシャ! と嫌な感じの機械音が聞こえてきたからだ。
 遥か前方。そこに見えたのは、イサム。……と、彼が持ってた長い筒。今は筒の後ろに何か四角いものがくっついている。
「ヤバイです」
 テンが今度こそ冷静になったのか、冷や汗を流しながら言った。
「あの筒は戦闘用マジックアイテムです。後ろの箱に石ころを入れると、あの筒の先から、最大で十数個の石ころを打ち出せます」
「え゛」
 ちょっと待て。
「あんな大型なら、拳大の石も打ち出せます。…………秒速二〇〇メートルくらいで」
 待て待て。それは確かに脅威的だが…………、そんなことより、俺はそれによく似た武器を知っている。
 FPSシューティングゲームでいやと言うほど向けられた武器。短射程高火力の、面制圧銃器。

 すなわち、散弾銃ショットガン、と。

「はああああ!? なんで散弾銃あんなもんこっちに向けて構えてやがる」
「決まってるじゃないですか。撃つためですよ、グリフォンを。あ、それとサク、やっぱりさっきの無しで」
「と言いますと?」
「全力で避けなきゃ死にます」
 前からは化け物みたいな銃。後ろからは正真正銘の化け物。
「あああああ、最低だあああああ!」
 ここで。
 突然、今度は俺にも聞こえるくらいはっきりと、しかし俺の知らない言語でテンが何か唱えた。すると、テンの手に魔方陣が生まれる。
「それじゃ、頑張って下さい」
 は? と思った時には、テンはキュパッ! と消えた。

 消 え た 。

 消 え や が っ た 。
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