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仮題:生存率約 10 %
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しおりを挟む長々と続いたオカルトトーク。【こっくりさん】から始まり【姦姦蛇螺】【コトリバコ】など……私の知識が及ばない話題に対して、作り笑いと【ポマード】のみを武器として乗り切るのには難儀をしたものです。
ですが、その流れはようやく終焉を迎えました。【こっくりさん】……どうぞお帰りください。
「すいません、オカルトを話し出すと止まらなくなっちゃうんです」
瀬戸さんは正気に戻ったみたいですね。ペロっと舌を出すと反省した様を見せています。先程までの……まさに取り憑かれたかのような早口オカルトトークは緊急ブレーキがかけられると、普通の速度に減速したみたいです。多分、きさらぎ駅から帰ってきたんでしょうね。おかえりなさい。
「いえいえ……お気になさらず。僕も久々にこういう話が出来て、楽しかったです」
コムさんがフォローを入れています。それならば、まず……口裂け女扱いしていた私へのフォローをすべきではないのでしょうか。まあ、そういう人だ。しょうがない……諦めましょう。
「それで本題なんですけど……私、幽霊を見に行ったんです」
幽霊ですか。瀬戸さんの趣味からしても、その行動には納得がいきますね。
「生前の頃にですね、私は全国各地の有名なオカルトスポットを巡っていたのは話したと思いますけど……それで、当時の掲示板で話題になっていた因習のある村だとかにも行っていたんです。そんな時でした。なんと地元にも……オカルトで有名な場所があると耳にしたんです」
【地元で有名】……どんな地域にも、そんな話ってありますよね。でも大抵は……たわいのない話だってのが相場なんですよ。【地元最強】と並んで、信頼性の著しく低い情報に付けられる形容な気がします。
「それがですね、実は地元のオカルトスポットは……思った以上に全国的に有名だったんです」
私の表情はつくづく物を語りますね。疑ってすいませんでした。
「その場所は公園なんですが、近くにですね……有名な廃墟旅館があるんですよ。多分、それとの相乗効果で有名になったんでしょうね」
ほうほう、廃墟ですか。よく写真とかがインターネットに出てますけど……あの雰囲気は怖いですよね。特に遊園地の廃墟の写真は、今でも印象に残っています。
「その公園は山の中腹にあってですね。そこを下った先……谷間で川も急流になった場所に廃墟があるんです。ちなみに廃墟とか関係なく、絶景ですからオススメですよ。他にも、その山には由緒あるお寺もあってですね……【いかにも】な心霊スポットだったんです」
そうですね、強いて言えば……他にも井戸があれば完璧でしょう。それとトンネルも欲しいところですね。
「今から語るのは、そこを訪れた時の話です。私の体験した……恐ろしく不思議な話。楽しんでくださいね」
そう言うと、瀬戸さんは妖しげに微笑むのでした。
━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━
「それは、私が大学3年生の時でした。地元に有名な心霊スポットがあると聞いた私は、居ても立っても居られず、そこを訪れたんです。当然ですが、目的上……着いたのは深夜でした。当たり前ですよね。だって……真昼に出てくる幽霊なんて聞いたことがありませんし」
瀬戸さんが語りだすと同時に、部屋の照明が落とされました。演出上なんでしょうけど……こういう小技には感心しますね。
「その公園はですね……周囲を山に囲まれた中、少し開けた場所に設けられていました。思った以上に広く、敷地には池もあったんです。そこには小島が浮かんでいて、和風の赤い橋で繋がれていました。そして、その小島には……お堂が建てられていたんです」
おお……何だか雰囲気ありますね。まさに【いかにも】な感じです。
「私は、この公園の異様な雰囲気に……【出る】と、そう感じました。私、霊感が強い方ではないんですけど……間違いなく感じたんです」
これは【いかにも】どころではありません。【たこにも】も追加していいでしょう。ひょっとしたら、その池から巨大なイカとタコが【出る】のかもしれませんね。……すいません。私はいまだ、頭の中のB級映画が追い払えていないようです。私は頭の中のイカとタコを追い出すと、話に集中しました。
「噂では……そのお堂に【出る】との事でした。そして私もお堂の付近から不穏な気配を感じていたので……噂は真実だったんだと、少し興奮気味になったのを覚えています」
舞台は揃った感じですね。期待が高まってきます。
そして私は瀬戸さんの話の続きを待ちましたが……なかなか言葉が継がれません。彼女の方を見てみましょうか。すると、彼女の顔は一変していました。その顔は……酷く強張っているんです。先程までの霊的存在を語る雰囲気とは違って、まるで現実的な恐怖を思わせる……そんな表情でした。
「実はですね……もう一つ気になる情報があったんです。それは、当時……近隣で十人以上の女性が連続して失踪していると……そんな噂が立っていました」
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