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大人びていくマシュー様

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 15歳でマシュー様は希望通りに騎士学校に入りました。

 例外なく全ての生徒が寮生活を送るのが、騎士学校の規則です。3年間の在学中はよほどの事が無い限り、実家に帰る事すらままなりません。そんな学校ですから、婚約者とはいえ二人きりで会うことは一度もできませんでした。

 しかし、騎士を目指す彼らは街の警備や魔物の討伐が授業に組み込まれていることもあり、街中でその姿を見ることはできました。

 マシュー様はどんどんたくましくなり、精悍さを増していきました。大人びていくマシュー様は、いつでもどこでも注目の的でした。

 昔は無表情で無口、さらに愛想が無いとひどい言われようでしたが、気づいたら周りの評価は寡黙で落ち着いている素敵な騎士様候補に変わっていたのです。

「もし婚約者がいなければ私が立候補しましたのに」
「あの方と婚約できたら、夢のようでしょうね」

 なんて言葉を、わざと私に聞こえるように言ってくる方もいらっしゃいましたし、あれだけ美丈夫に成長すると分かっていたら、私だってもっと仲良くしていたわなんて言葉を投げつけられた事もあります。

 マシュー様は会えないかわりにと、2週間とあけずにお手紙を書いて下さっていましたから、周りから何を言われても私は笑っていられました。


 ロンディーネ学園に入学したばかりの頃、マシュー様からお手紙が届きました。いつものお手紙と違ったのは、最後にさらりと明日二人でお茶にいきませんかというお誘いが書いてあったことです。

 騎士学校を卒業したマシュー様は、すぐに王国第一騎士団への所属が決まりました。騎士様になられたお祝いをできると喜んで、即座にお返事を書きました。

 翌日、私は寮の前まで迎えに来たマシュー様に圧倒されました。

 この3年間で、マシュー様は素敵な大人の騎士様になっていたのです。姿はお見かけしていましたし、昔と変わらない優しいマシュー様のままだとお手紙で分かっています。

 それでも見惚れずにいられない格好良さでした。たまたま入口近くにいた女学生達からの視線が突き刺さります。

 正直、格好良く育ちすぎだと思います。私の心臓が持ちません。

「どうかしたの?リナ」

 お手紙で許可を求められた愛称呼びも、実際に声に出して呼ばれると破壊力があります。

「いえ、何も」
「そう?」
「はい、お迎えありがとうございます」
「行こうか」

 ふわりと微笑みながら差し出された手に、やっぱり好きだなあと実感しながら手を乗せました。心の中では身悶えていますが、表情には一切出ません。淑女教育の良い所は、感情を隠すのがうまくなることかもしれませんね。
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