3 / 15
大人びていくマシュー様
しおりを挟む
15歳でマシュー様は希望通りに騎士学校に入りました。
例外なく全ての生徒が寮生活を送るのが、騎士学校の規則です。3年間の在学中はよほどの事が無い限り、実家に帰る事すらままなりません。そんな学校ですから、婚約者とはいえ二人きりで会うことは一度もできませんでした。
しかし、騎士を目指す彼らは街の警備や魔物の討伐が授業に組み込まれていることもあり、街中でその姿を見ることはできました。
マシュー様はどんどんたくましくなり、精悍さを増していきました。大人びていくマシュー様は、いつでもどこでも注目の的でした。
昔は無表情で無口、さらに愛想が無いとひどい言われようでしたが、気づいたら周りの評価は寡黙で落ち着いている素敵な騎士様候補に変わっていたのです。
「もし婚約者がいなければ私が立候補しましたのに」
「あの方と婚約できたら、夢のようでしょうね」
なんて言葉を、わざと私に聞こえるように言ってくる方もいらっしゃいましたし、あれだけ美丈夫に成長すると分かっていたら、私だってもっと仲良くしていたわなんて言葉を投げつけられた事もあります。
マシュー様は会えないかわりにと、2週間とあけずにお手紙を書いて下さっていましたから、周りから何を言われても私は笑っていられました。
ロンディーネ学園に入学したばかりの頃、マシュー様からお手紙が届きました。いつものお手紙と違ったのは、最後にさらりと明日二人でお茶にいきませんかというお誘いが書いてあったことです。
騎士学校を卒業したマシュー様は、すぐに王国第一騎士団への所属が決まりました。騎士様になられたお祝いをできると喜んで、即座にお返事を書きました。
翌日、私は寮の前まで迎えに来たマシュー様に圧倒されました。
この3年間で、マシュー様は素敵な大人の騎士様になっていたのです。姿はお見かけしていましたし、昔と変わらない優しいマシュー様のままだとお手紙で分かっています。
それでも見惚れずにいられない格好良さでした。たまたま入口近くにいた女学生達からの視線が突き刺さります。
正直、格好良く育ちすぎだと思います。私の心臓が持ちません。
「どうかしたの?リナ」
お手紙で許可を求められた愛称呼びも、実際に声に出して呼ばれると破壊力があります。
「いえ、何も」
「そう?」
「はい、お迎えありがとうございます」
「行こうか」
ふわりと微笑みながら差し出された手に、やっぱり好きだなあと実感しながら手を乗せました。心の中では身悶えていますが、表情には一切出ません。淑女教育の良い所は、感情を隠すのがうまくなることかもしれませんね。
例外なく全ての生徒が寮生活を送るのが、騎士学校の規則です。3年間の在学中はよほどの事が無い限り、実家に帰る事すらままなりません。そんな学校ですから、婚約者とはいえ二人きりで会うことは一度もできませんでした。
しかし、騎士を目指す彼らは街の警備や魔物の討伐が授業に組み込まれていることもあり、街中でその姿を見ることはできました。
マシュー様はどんどんたくましくなり、精悍さを増していきました。大人びていくマシュー様は、いつでもどこでも注目の的でした。
昔は無表情で無口、さらに愛想が無いとひどい言われようでしたが、気づいたら周りの評価は寡黙で落ち着いている素敵な騎士様候補に変わっていたのです。
「もし婚約者がいなければ私が立候補しましたのに」
「あの方と婚約できたら、夢のようでしょうね」
なんて言葉を、わざと私に聞こえるように言ってくる方もいらっしゃいましたし、あれだけ美丈夫に成長すると分かっていたら、私だってもっと仲良くしていたわなんて言葉を投げつけられた事もあります。
マシュー様は会えないかわりにと、2週間とあけずにお手紙を書いて下さっていましたから、周りから何を言われても私は笑っていられました。
ロンディーネ学園に入学したばかりの頃、マシュー様からお手紙が届きました。いつものお手紙と違ったのは、最後にさらりと明日二人でお茶にいきませんかというお誘いが書いてあったことです。
騎士学校を卒業したマシュー様は、すぐに王国第一騎士団への所属が決まりました。騎士様になられたお祝いをできると喜んで、即座にお返事を書きました。
翌日、私は寮の前まで迎えに来たマシュー様に圧倒されました。
この3年間で、マシュー様は素敵な大人の騎士様になっていたのです。姿はお見かけしていましたし、昔と変わらない優しいマシュー様のままだとお手紙で分かっています。
それでも見惚れずにいられない格好良さでした。たまたま入口近くにいた女学生達からの視線が突き刺さります。
正直、格好良く育ちすぎだと思います。私の心臓が持ちません。
「どうかしたの?リナ」
お手紙で許可を求められた愛称呼びも、実際に声に出して呼ばれると破壊力があります。
「いえ、何も」
「そう?」
「はい、お迎えありがとうございます」
「行こうか」
ふわりと微笑みながら差し出された手に、やっぱり好きだなあと実感しながら手を乗せました。心の中では身悶えていますが、表情には一切出ません。淑女教育の良い所は、感情を隠すのがうまくなることかもしれませんね。
14
お気に入りに追加
1,519
あなたにおすすめの小説
欲情しないと仰いましたので白い結婚でお願いします
ユユ
恋愛
他国の王太子の第三妃として望まれたはずが、
王太子からは拒絶されてしまった。
欲情しない?
ならば白い結婚で。
同伴公務も拒否します。
だけど王太子が何故か付き纏い出す。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
兄を溺愛する母に捨てられたので私は家族を捨てる事にします!
ユウ
恋愛
幼い頃から兄を溺愛する母。
自由奔放で独身貴族を貫いていた兄がようやく結婚を決めた。
しかし、兄の結婚で全てが崩壊する事になった。
「今すぐこの邸から出て行ってくれる?遺産相続も放棄して」
「は?」
母の我儘に振り回され同居し世話をして来たのに理不尽な理由で邸から追い出されることになったマリーは自分勝手な母に愛想が尽きた。
「もう縁を切ろう」
「マリー」
家族は夫だけだと思い領地を離れることにしたそんな中。
義母から同居を願い出られることになり、マリー達は義母の元に身を寄せることになった。
対するマリーの母は念願の新生活と思いきや、思ったように進まず新たな嫁はびっくり箱のような人物で生活にも支障が起きた事でマリーを呼び戻そうとするも。
「無理ですわ。王都から領地まで遠すぎます」
都合の良い時だけ利用する母に愛情はない。
「お兄様にお任せします」
実母よりも大事にしてくれる義母と夫を優先しすることにしたのだった。
所詮は他人事と言われたので他人になります!婚約者も親友も見捨てることにした私は好きに生きます!
ユウ
恋愛
辺境伯爵令嬢のリーゼロッテは幼馴染と婚約者に悩まされてきた。
幼馴染で親友であるアグネスは侯爵令嬢であり王太子殿下の婚約者ということもあり幼少期から王命によりサポートを頼まれていた。
婚約者である伯爵家の令息は従妹であるアグネスを大事にするあまり、婚約者であるサリオンも優先するのはアグネスだった。
王太子妃になるアグネスを優先することを了承ていたし、大事な友人と婚約者を愛していたし、尊敬もしていた。
しかしその関係に亀裂が生じたのは一人の女子生徒によるものだった。
貴族でもない平民の少女が特待生としてに入り王太子殿下と懇意だったことでアグネスはきつく当たり、婚約者も同調したのだが、相手は平民の少女。
遠回しに二人を注意するも‥
「所詮あなたは他人だもの!」
「部外者がしゃしゃりでるな!」
十年以上も尽くしてきた二人の心のない言葉に愛想を尽かしたのだ。
「所詮私は他人でしかないので本当の赤の他人になりましょう」
関係を断ったリーゼロッテは国を出て隣国で生きていくことを決めたのだが…
一方リーゼロッテが学園から姿を消したことで二人は王家からも責められ、孤立してしまうのだった。
なんとか学園に連れ戻そうと試みるのだが…
【完結】転生地味悪役令嬢は婚約者と男好きヒロイン諸共無視しまくる。
なーさ
恋愛
アイドルオタクの地味女子 水上羽月はある日推しが轢かれそうになるのを助けて死んでしまう。そのことを不憫に思った女神が「あなた、可哀想だから転生!」「え?」なんの因果か異世界に転生してしまう!転生したのは地味な公爵令嬢レフカ・エミリーだった。目が覚めると私の周りを大人が囲っていた。婚約者の第一王子も男好きヒロインも無視します!今世はうーん小説にでも生きようかな〜と思ったらあれ?あの人は前世の推しでは!?地味令嬢のエミリーが知らず知らずのうちに戦ったり溺愛されたりするお話。
本当に駄文です。そんなものでも読んでお気に入り登録していただけたら嬉しいです!
運命の選択が見えるのですが、どちらを選べば幸せになれますか? ~私の人生はバッドエンド率99.99%らしいです~
日之影ソラ
恋愛
第六王女として生を受けたアイリスには運命の選択肢が見える。選んだ選択肢で未来が大きく変わり、最悪の場合は死へ繋がってしまうのだが……彼女は何度も選択を間違え、死んではやり直してを繰り返していた。
女神様曰く、彼女の先祖が大罪を犯したせいで末代まで呪われてしまっているらしい。その呪いによって彼女の未来は、99.99%がバッドエンドに設定されていた。
婚約破棄、暗殺、病気、仲たがい。
あらゆる不幸が彼女を襲う。
果たしてアイリスは幸福な未来にたどり着けるのか?
選択肢を見る力を駆使して運命を切り開け!
【完結】己の行動を振り返った悪役令嬢、猛省したのでやり直します!
みなと
恋愛
「思い出した…」
稀代の悪女と呼ばれた公爵家令嬢。
だが、彼女は思い出してしまった。前世の己の行いの数々を。
そして、殺されてしまったことも。
「そうはなりたくないわね。まずは王太子殿下との婚約解消からいたしましょうか」
冷静に前世を思い返して、己の悪行に頭を抱えてしまうナディスであったが、とりあえず出来ることから一つずつ前世と行動を変えようと決意。
その結果はいかに?!
※小説家になろうでも公開中
異世界ゆるり紀行 ~子育てしながら冒険者します~
水無月 静琉
ファンタジー
神様のミスによって命を落とし、転生した茅野巧。様々なスキルを授かり異世界に送られると、そこは魔物が蠢く危険な森の中だった。タクミはその森で双子と思しき幼い男女の子供を発見し、アレン、エレナと名づけて保護する。格闘術で魔物を楽々倒す二人に驚きながらも、街に辿り着いたタクミは生計を立てるために冒険者ギルドに登録。アレンとエレナの成長を見守りながらの、のんびり冒険者生活がスタート!
***この度アルファポリス様から書籍化しました! 詳しくは近況ボードにて!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる