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10.高位魔術と恋心
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魔術の授業が始まってから、もうすぐ二年になる。
最初は小さな水球を浮かべるだけで精一杯だったけれど、今では中位の魔術も何とかこなせるようになってきた。
「トリン、今日から高位魔術の授業に入るぞ」
「はい!」
遂に高位の魔術を学べるんだと思うと、ワクワクしてしまう。笑顔の私を見て、先生も笑顔を返してくれた。
「これは、グレイス魔術師団長閣下から指定されたものだ」
私に魔術を教える許可を取った日から、ジョーさんはお父様と定期的に連絡を取っているらしい。最初に会った時に聞きたがっていた情報も、本人から聞けたと大喜びで話していた。
そのお父様から指定された高位魔術は、水の防御魔法だった。身を守るために覚えておいて損はないというおすすめの魔術で、剣だろうと魔法だろうと弾くことができるという防御魔法だ。
素晴らしい効力を持っているけれど、その分、難易度は一気に上がる。
パシャンと音を立てて、また水球が床へと落下した。
「まだ大丈夫か?」
「はい、まだ魔力はあります!」
「よし、もう一度だ」
何度も何度も失敗したけれど、さっきの失敗で何となく感覚は掴めた気がする。
「はい、いきます!」
私はふうと息を吐いてから、心を落ち着かせてゆっくりと魔力を練り上げていく。
まず作るのは大きな水球だ。水球が完成してもそのまま魔力は練り続ける。目の前に浮かんでいる水の中へと、その魔力を少しずつじんわりと溶かしこんでいく。一気に入れたら失敗するし、ゆっくりすぎても失敗する。
「そのまま続けて」
「はいっ」
透明だった水が、少しずつ光を帯びていく。それでもただひたすらに魔力を送り続ければ、水球が眩く輝いた。キラキラした光を帯びた水の防御魔法の完成だ。
「で、できました!」
「さすが俺の愛弟子!!よくやった!!!!!」
興奮した様子のジョーさんの前で、まだ水球は消えずに輝いていた。
お父様が知ったら、誉めてくださるかしら。そんな事を考えながら、私はキラキラ光る水球をいつまでも見つめていた。
その日の夜ごはんの時には、研究所の皆から初めての高位魔術の成功をお祝いしてもらった。多分先生が皆に伝えてくれたんだと思う。
「さすがは、トリンじゃの」
すっかり本当のお爺ちゃんみたいに接してくれるギルベルト所長は、そう言って頭を撫でてくれた。もうすぐ15歳になるのにって恥ずかしい気持ちもあるけれど、所長に頭を撫でられるとぽかぽか暖かい気分になる。
「本当によく頑張ったわね!」
久々に会えた気がする、どこか疲れた様子のジェシカさんもそう言って誉めてくれたし、メルさんには思いっきり抱きしめてもらった。
もちろん、アルフもお祝いしてくれた。
「おめでとう、トリン」
「ありがとう、アルフ」
アルフは最近になって急に背が伸び出した。剣の訓練のおかげか、筋肉も綺麗についているし、なんだか急に少年から青年になったみたいで、話していると実はちょっと緊張する。
でも、自分のことのように嬉しそうにしている姿はいつものアルフで、私の肩からも力が抜けた。
「また大きくなった?」
「え?トリンが小さくなったんじゃない?」
悪戯っぽく笑う姿に、私も一緒になって笑ってしまった。
「でも高位魔術まで使いこなすとか、本当にすごいよ」
「ありがと」
「僕も負けないように頑張らないと」
「え、私はアルフに負けないように頑張ってるのに?」
思わずそう返すと、アルフは一瞬目を見張ってからふわりと笑った。
最近さらに格好良くなった気がするのは、私がアルフの事を好きだからそう見えるだけなのかしら。
最初は小さな水球を浮かべるだけで精一杯だったけれど、今では中位の魔術も何とかこなせるようになってきた。
「トリン、今日から高位魔術の授業に入るぞ」
「はい!」
遂に高位の魔術を学べるんだと思うと、ワクワクしてしまう。笑顔の私を見て、先生も笑顔を返してくれた。
「これは、グレイス魔術師団長閣下から指定されたものだ」
私に魔術を教える許可を取った日から、ジョーさんはお父様と定期的に連絡を取っているらしい。最初に会った時に聞きたがっていた情報も、本人から聞けたと大喜びで話していた。
そのお父様から指定された高位魔術は、水の防御魔法だった。身を守るために覚えておいて損はないというおすすめの魔術で、剣だろうと魔法だろうと弾くことができるという防御魔法だ。
素晴らしい効力を持っているけれど、その分、難易度は一気に上がる。
パシャンと音を立てて、また水球が床へと落下した。
「まだ大丈夫か?」
「はい、まだ魔力はあります!」
「よし、もう一度だ」
何度も何度も失敗したけれど、さっきの失敗で何となく感覚は掴めた気がする。
「はい、いきます!」
私はふうと息を吐いてから、心を落ち着かせてゆっくりと魔力を練り上げていく。
まず作るのは大きな水球だ。水球が完成してもそのまま魔力は練り続ける。目の前に浮かんでいる水の中へと、その魔力を少しずつじんわりと溶かしこんでいく。一気に入れたら失敗するし、ゆっくりすぎても失敗する。
「そのまま続けて」
「はいっ」
透明だった水が、少しずつ光を帯びていく。それでもただひたすらに魔力を送り続ければ、水球が眩く輝いた。キラキラした光を帯びた水の防御魔法の完成だ。
「で、できました!」
「さすが俺の愛弟子!!よくやった!!!!!」
興奮した様子のジョーさんの前で、まだ水球は消えずに輝いていた。
お父様が知ったら、誉めてくださるかしら。そんな事を考えながら、私はキラキラ光る水球をいつまでも見つめていた。
その日の夜ごはんの時には、研究所の皆から初めての高位魔術の成功をお祝いしてもらった。多分先生が皆に伝えてくれたんだと思う。
「さすがは、トリンじゃの」
すっかり本当のお爺ちゃんみたいに接してくれるギルベルト所長は、そう言って頭を撫でてくれた。もうすぐ15歳になるのにって恥ずかしい気持ちもあるけれど、所長に頭を撫でられるとぽかぽか暖かい気分になる。
「本当によく頑張ったわね!」
久々に会えた気がする、どこか疲れた様子のジェシカさんもそう言って誉めてくれたし、メルさんには思いっきり抱きしめてもらった。
もちろん、アルフもお祝いしてくれた。
「おめでとう、トリン」
「ありがとう、アルフ」
アルフは最近になって急に背が伸び出した。剣の訓練のおかげか、筋肉も綺麗についているし、なんだか急に少年から青年になったみたいで、話していると実はちょっと緊張する。
でも、自分のことのように嬉しそうにしている姿はいつものアルフで、私の肩からも力が抜けた。
「また大きくなった?」
「え?トリンが小さくなったんじゃない?」
悪戯っぽく笑う姿に、私も一緒になって笑ってしまった。
「でも高位魔術まで使いこなすとか、本当にすごいよ」
「ありがと」
「僕も負けないように頑張らないと」
「え、私はアルフに負けないように頑張ってるのに?」
思わずそう返すと、アルフは一瞬目を見張ってからふわりと笑った。
最近さらに格好良くなった気がするのは、私がアルフの事を好きだからそう見えるだけなのかしら。
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