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5.研究機関の最終目標

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 書物を読み解くと、スキルを持つ人は、少なくとも数百年前から存在していたらしい。

 当時から多かったのは属性スキルと剣技スキルで、それ以外のスキルについてはごく一部のものしか解明されていない。

 生まれつきのスキルにも遺伝の可能性は低く、さらに後天性のものはいつ誰に発現するのかも分からない。謎が多すぎるからと今までは余程の物好きしか研究しなかった分野、それがスキル研究だという。

「まあ元々研究してた物好きが、ギルベルド所長なんだけどね」

 楽し気に笑いながらそう教えてくれたのは、副所長のジェシカさんだった。

 5年前に創設されたこの研究所では、まずスキルを詳細に調べる。既に存在が確認されているスキルなら、次にスキルの検証にうつる。

 存在が確認されていないスキルの場合は、実験を繰り返してそのスキルの能力を見極め、新しい名前を付けることになる。それからやっとスキルの検証だ。

 スキルの検証まで終わったら、その後はそのスキルをどう活かすかを考える事になる。この研究機関の最終目標は、珍しいスキルや新しいスキルを暴走しないようにどう管理するか、またはどう活用するかを考える事だ。

「と、いうことになってるの」
「ということになってる…?」
「そう、国からお金を引き出そうと思ったら、ちゃんとした建前がいるのよ」
「ジェシカ!トリンを困らせるでないわ!」

 いつの間にか部屋に入ってきていたギルベルド所長は、苦笑しながら声を挟んだ。

「あ、いえ、説明をお願いしたのは私なので」
「トリンちゃん、本当にいい子よね」
「遅れてすまんの」
「いいえ」
「トリンのスキルは特殊じゃから、わしとジェシカが担当になったが、問題はないかの?今ならまだ変更もできるが?」

 わざわざ聞いてくれるギルベルド所長に、笑顔で首を振る。

「よろしくお願いします」
「そうそう、さっきジェシカが言ってたことじゃが」
「あ、はい」
「国への報告は、しないわけにはいかないんじゃ」
「はい、それは分かります」

 国から資金が入っている研究機関が、国に情報を隠せる筈が無いことは、私にも分かる。

「確かに珍しいスキルや新しいスキルを暴走しないようにどう管理するか、どう活用するかが最終目標にはなっとる」

 そう言ってから、ギルベルド所長はにんまりと笑ってみせた。

「じゃが、本人の意思に反した事は絶対にさせんから安心して良いんじゃよ」
「そうそう、うちの所長の人脈すっごいから安心してまかせて良いよ!」
「おう、まかせておけ!」

 ふざけたように二人が口にしたのは、私の不安を軽くするための言葉だった。自分のスキルを怖がっている私が、そのスキルを活用すると聞けば不安になると分かっていたんだと思う。

「はい、よろしくお願いします!」
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