潜魔窟物語

番外編『潜魔窟を彩る人々』

青衣亭の主人

潜魔窟の入口のほど近い場所に、青衣亭はある。
趣のある佇まいの扉をくぐると、酔人たちの陽気な歌声やノーイス島で採れる食材を使った美味い料理や酒の数々が出迎えてくれる、賑やかな酒場兼宿場だ。

青衣亭の名の由来は、ウェスセスに古くから伝わる、遠い遠い場所で巨大な悪と戦った一人の戦士の戦衣であり、店の看板にもそれがあしらわれている。


青衣亭の主人はオーパ・イロン。
中年の男性で「申し訳ございません」が口癖だが、稀に「おろろんちょちょぱ」などの妙な発言をすることもある。

趣味は潜魔窟に現れる動物型の怪物を模した小さな人形を魔法によって動くようにして、箱庭と呼ぶ屋根裏部屋で模擬生態系の観察をすることだ。


青衣亭の名物といえば、港から運ばれる魚介類をふんだんに使った料理が思い浮かぶが、それよりも、賭け事に興じて財産を失う従業員の愚痴や、ゼロの集いと呼ばれる主人の仲間との集会でのやり取りが人気を博している。


潜魔窟に挑もうとする冒険者諸君も、潜魔窟で命を落とす前に一度は青衣亭を訪れて、楽しいひとときを過ごしてみてはいかがだろうか？