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曇りも何一つない、もう見慣れ始めたまっさらな空に曝されながら、墓標の掃除を何とか終えた。手はもうガタガタで、左指の2本はとっくに抜けている。たまらず、どかと座り込んだ。墓標の下段にある小さな祭壇に入った金環を目に映しながら、おそらく最後の蛇を噛みしめる。
彩媛第二共同墓地 間 二三
主 ∫|┫∧Ιζ ΙЭ
Γ Λ ⌊ Π Ξ 静眠
早劫六八年 七月十九日 入
幸せだった。あいつも、心からそうだと良いが。
自分もすぐ、機能を停止する。あいつの居ない今、自分は自分のみならず、世界からも完全に死んでしまう。それはあいつも同じだ。これから二人で、無いものへの仲間入りをするのだ。
…………
このラジオは、きまって朝8時にいらつく声で喚く。タワーから放たれているラジオの定例放送だ。天気の話にはじまり、いやにヘンな挨拶で終わる。話によると、戦前に観光地として人気があった塔の瓦礫を、今まさにうるさく喋っている物好きなヒューマノイドが整備したことにより始まったらしい。それ以降、こうして毎朝ラジオに発信しているというのだ。けして真面目な番組とは言えないが、世界の動向を気楽に掴めるのと、時間が時間なので、これを目覚まし代わりにする者も多い。もっとも、遮断している者も同じくらいいるが。白灰濃度は40%……放射性物質もちょうどいい、ちょっと出掛ける程度には何ら支障はないなと思いながら、飲みかけの高純卵白を空ける。ことによっては、エキサイトリピーターの振幅数を上げる。毎朝やる恒例だ。それを終える8時10分あたりに、ベッドの横につけて寝ていた長髪を持つ台車式のII型が目を覚まし、ガーベジスタックに溜まった垢を真空抽斗に保管して家事を始める。右の触肢についたクーラーボトルに掛けられた金の腕輪を輝かせ、整った顔立ちと合わさる姿はとても美しい。彼女の名前はパルテという。雌市で見限られていたところを引き取ってきたのだ。
この世界には、もはや有機的なものは存在しないといっていい。いや、ほんの少し、大脳盤に使われている最小単位のボルト程度にはいるのかも知れないが、この身体になってからはとんと見ていない。見たこともないものを、無いとは言い切れないのだ。完全な無というのが存在しない以上、自分には無いものの話なんてどうでも良かった。今に文化的な生活をしている者は、みな金属や内燃機関で構成された身体をしている。全ての発端は、2047年に勃発した世界大戦だった。子供が紙飛行機を飛ばすような軽々しさで戦闘特化機が翔び、国頭たちは蛇口を捻るような感覚で核を降らせた。大半の生物を消し飛ばした後、鳥類から順にどんどん死んだ。人間は3番目だった。戦前から、日本が大学と共同して開発が進められていた、大脳などの情報を符号化して送り込むことで起動するヒューマノイド機体があった。当時はまだ試作段階だったが、実用化予定よりも大分早く開戦する予測が立てられたため、機能を一部縮退させて急遽運用することになった。それにより、初期のヒューマノイド──およそ2400人の希望者が、実験的に組み込まれた。彼らを一般にファスタと呼ぶ──は、みなパルテのように両脚の代わりとして台車を備え付けている。現在はそれから150年ほど経ち、ほぼ人間と同等の造形をした可転脚式が主流となり、つくられる建物も横長のものから縦長のものに替わりつつある。
パルテはいつも事務的に物事をこなし、洞察力に極めて長けた振る舞いを見せる。初めて会ったときから、分かりやすい喜怒哀楽を見たことがない。しかし、こちらが口にしていないことをピシャリと正確に言い当ててくることがある。以前、今日は垢で何を作るんだろうかと考えていると、横から「鶏油を垂らしてタタキにでもしましょうか」と言われたことがあった。また、多方面に知識が豊富で、医学、地学、文学、経営、さらに前身で俺が勉強していたIT分野のことも一通り知っていた。彼女は19歳の頃にファスタとしてヒューマノイドになったというが、それ以外のことを特に聞いていないので、どのようにして膨大な知識を得たかも、なぜ雌市に居たかも知らない。俺も俺で、どうして引き取ったのだろう。次に安かったII型の25%以下という破格だったが、それとはまた違う。雌市に寄ったのも気まぐれを超えやしないが、その気まぐれから彼女を一目見て、そうしてただ、良いと思ったのだ。
卵白を飲み、斥候靴に履き替えて、仕事に取りかかる。こんな世界でも、意外と仕事はある。トレーダー、市職員、地質調査、他頭研究者、建築専門士、蛇狩りなど様々だ。だが仕事をするのは主にI型で、II型は専ら家事などをする。うちもその例で、パルテは家全般を任せ、俺は蛇狩りをしている。外で機械の蛇を捕って、トレーダーに売って金に替えるのだ。蛇は主に食用、愛玩用として、トレーダーを通じて客の手に渡る。ヒューマノイドは、I型が作る燃料さえあれば動けるので、食事をする必要は全く無いが、元が人間である以上、食事を捨てることはできないのだろう。食べられた蛇は、体内を意味もなく散策し、いずれ排出されるだけである。靴を脛に固定し、吸着機──放射性物質や白灰を除去するためのもの──の電源を入れる。ゴウゴウ鈍い音と共に20秒ほど動いて、止まる。そうして最後に、パルテに見送ってもらう。これを済ませてようやく外に出られる。
外は白灰の影響で常にやや白みがかっており、とても視界がいいとは言えない。たまに500m先すらも見通せそうなほど透き通った日もあれば、伸ばした手の先も怪しいくらいに見えなくなる日もある。信じ難いが、この灰と放射性物質から蛇は生まれてくる。雌雄の概念も繁殖行動もなしに、虚からポンと生まれるのだ。蛇にもいろいろいて、のろい異形だったり、小っちゃくてすばしっこいのもいる。これを焼いたり蒸したり、物好きはそのまま食べたりもする。俺もパルテも、塩焼きが一番好きだ。蛇のほかに、鶏もいる。例の通り、これも機械だ。しかし、蛇と違ってヒューマノイドが作り出した存在で、蛇とは別の面で今のヒューマノイド達の生活に多大な恩恵を与えてくれている。大脳盤のスループットを向上させる卵白や卵黄は、鶏の卵からでき、本体からは油が採れる。寿命を迎えた個体は、解体すると品種改良に使える。鶏はほとんど、縦積型集合団地の棟それぞれの玄関先に作られた小屋に、棟の住民の共有物として入れられている。俺もいつも帰りに小屋を覗き、卵と油を少々拝借しては、パルテに預けている。
蛇捕りで生きていくうえで特別な道具は要らない。大物をバタバタ捕るとなるとまた違ってくるが、今では金などそこまで重要ではないのだ。この世界で金と引き換えに手に入るものは、どれも生活をささやかに彩る飾り付けに過ぎない。俺は袋から厂拉──誘引式の罠。餌を入れて蛇を待つだけ──をいくつか取りだし、瓦礫の下、灰溜りと適当な場所に設置していく。3時間ほど経てば、中堅はともかく、安価な蛇であれば大体引っ掛かる。その間に、自分の足で手頃な蛇、いうならエタやネハミなどを探すといったやり方が、一番親しまれている。エタは既に絶滅したカナヘビに似た種類だが、脚がとにかく特徴的だ。必ず左右非対称に生え、数は個体によって違う。長さも変わるため、蛇の中でも見てくれがすごい。以前には右3本、左17本の個体が見つかったこともある。その特徴ゆえに逃げ足が遅い。味は中の下といったところで、簡単に手に入るから食べるといった、人間でいうコメのような感覚だが、脚の部分は食感が独特で、特に付け根が好まれる。ネハミは小型の蛇で動きも速いが、植物屑を見つけた途端噛み付き、一度そうなると寿命が尽きるまで離さない。そのため、捕獲難易度はエタと並んで最易である。たまに咬力が強い個体がおり、それについては頭を切り落とし身体を持っていくほかない。淡白な味で、機械蛇特有の油臭さがあまりない。摂食から排泄をほとんどしない種であるため、生でも食べやすい。
数十分かけて、巨大なドーム状の廃墟があるポイントに来た。ここは以前から、大型の捕獲例がちょくちょくあり、このために大きめの直角厂拉を持ってきてある。ドームの周りには、すでに他の者が仕掛けた厂拉が点々としているので、邪魔にならない感覚を空けて、叢に紛れさせた。肝心の直角厂拉は、ドームの中に設置する。瓦礫の隙間を潜り抜け、やや広い空洞に出、中心からわずかに離れた岩陰に下げた。中にはパルテの垢を入れてある。垢の風味はII型によって千差万別だが、彼女の出すものは我々I型からすると兎角クセが強い。そもそも機械であるため、油分や錆臭さが主な評価軸となるのが前提じみているが、彼女は生物的な臭気、旨味を強く残している。そこに機械特有の油、錆が重なるのだから、もしも垢品評会なるものがあったら即刻珍味扱い、議論の荒れは免れないだろう。しかし、その分彼女そのものの味を感じられて、俺はけっこう気に入っている。蛇は特長の強い垢に寄せられやすい研究結果があるので、それで言えばパルテのものはまさに適任なのである。
しばらく蛇を捕まえていると、背中のミキシングタンクが軋む。こうなったら、帰宅の合図だ。I型は空気中の白灰と放射性物質を取り込み、中身を油と一緒にミキサーにかけ燃料を作る。それを脇腹の中にあるスフィアに格納し、大腿の間に付けられた給入管を通じて、II型に分ける。こうしてヒューマノイドは生きているのだ。このタンクの中身の半分程度も、パルテのものになる。今までに仕掛けたポイントを歩き、厂拉を回収していく。大体入るには入っているが、やはりエタかシモタチが大半だ。今日は可もなく不可もなしか、と思っていたが、ドーム内の直角厂拉に、何やら長いものが入っている。照明器で見てみると、大ぶりなテケテケがパルテの垢を貪っていた。通常のテケテケのふた回りほどはあるだろうか、とにかく大きい。これならば大層な金になり、数日は成果を気にせずによくなるだろう。売らずに二人で食べてもいい。彼女はどっちを喜ぶだろう。小さい厂拉をまとめ、テケテケ入りのは背負い、帰路に着きはじめる。途中でカミタチ同士が喧嘩をしていたが、さすがに捕る余裕がないので見逃した。
今日の稼ぎは34ベルムだった。結局テケテケは売らずにいる。明日からパルテと一緒に食べよう。トレーダーのI型から売ってほしいと言われたが、また別の収穫があった時にすることにした。日が沈んできているのか、少し薄暗い。団地に着き、自分の棟の鶏小屋を覗く。大抵寝ているが、5匹くらいはまだコッココッコと動いていた。籠には卵が4個ほど落ちていたので、2個ひっ掴んで昇降機に乗った。
吸着機を動かすと、いつものようにパルテが出迎えてくれる。さっきまで料理をしていたからか、部屋からいい匂いが漂う。今日のメニューは、ネハミ刺しと臓絡めだった。食後には、いつもの垢を出してくれる。鶏油をかけてタタキにしただけの、極めて簡素なものだが、俺はパルテの垢はできるだけ素の味を残したい。生で食べさせてほしいとは、さすがに言えないが。いくらパルテでも、軽蔑されかねない。
食事が終われば、やることは2つになる。給入と就寝だ。II型は自分で燃料を作れないので、I型がいなければ機能できない。ゆえに俺は、毎晩パルテに給入をする必要がある。台車式なのもあり、彼女には口からしか入れた経験がない。彼女は面倒がるかも知れないが、一度は……。と思うが、いつも言わないでいる。台車を外した姿にも、少し興味はあるが。 雌市から買い取る際、明細書の備考欄に給入についての事項があった。理由などは書いていなかったが、“経口を推奨”とあった。台車式はそもそも経口摂取が主流になっているフウがあるので、わざわざ備考として記載されることはない。なので、彼女は給入口に何かしら問題がある、ぐらいしか推測がつかない。
自分が他のヒューマノイドと少し違うことは、よく分かっている。台車式であることもそうだけど、今でも台車式のヒューマノイドはたまに見る。それ以上に、自分自身そのものについてだ。雌市に入る前は、まだヒューマノイドそのものが少ないのもあったけど、I型どころかヒューマノイドが近くに居なかったので、給入はせず無人機の燃料缶で補っていた。燃料さえあれば動けるから、大きな瓦礫の隙間に住んで、とにかく文化DBから書籍を漁り、読み込むだけの生活をしていた。気付けば、人間として生きていた時間の何倍も経っていた。I型とII型の比率が取れてきた頃までその生活を続けてきたせいか、給入口の感覚器が一切劣化しないままの状態で慣れきってしまい、雌市に入ってから初めて給入してもらった時に、給入口やリザーブタンクから垢やら油やらが漏れ出して、更に燃料が入り込む度に身動ぎ声が出るので、ろくに進まない。本来なら5分程度で終わるのが、40分近くかけてしまった。
それ以降、私の給入作業は経口摂取で行われることになった。もともと台車式で、給入の度に台から外したりしていては面倒だし、私もそれで良かった。給入口でしてもらうより効率は落ちるけど、要らない手間を沢山増やすよりずっといい。その後の雌市の生活は悪くはなかったけれど、誰も私には注目してはいなかった。内気ではないけど、表情を出すのが苦手で、愛想がなくてつまらない奴だと思われがちで、リザーブタンクも小さい。垢まで不味い。市には脚のあるII型も沢山いたから、お客のI型はみんなそっちに夢中になっていた。別に、何か嫌なことをされたわけではない──ヒューマノイドになるような人に、そんなのはいない──けど、私はどうしても、孤独に帰結するんだと半ば諦めていた。
雌市に入ってから1年ほどが過ぎて、一人のI型が私の売買ブースに来た。後のご主人だ。そこには私のほかに、脚のあるII型が3人いた。全員、リザーブタンクも大きくて、腰や脚は機械でありながらも人間の雌と思わせるほど整っていた。1人が早速その人に色のある笑顔で接し始めたけど、その人は少し思を巡らしたように見えて、私のことを職員に相談し始めた。何か気に障ってしまったかと思ったら、夢にも思わないことを言われた。私を買いたいとのことだった。職員もそうだが、私が一番驚いていた。最も、顔には出なかったけど。最初は何か目的があるのかと勘繰った。けれど、翌日からは私のために玄関にスロープを付けてくれていた。給入事情を何の閊えもなしに受け入れてくれた。仕事をくれた。卵をくれた。好きな蛇を憶えてくれた。腕輪をくれた。愛称を考えてくれた。ご主人は、私に沢山くれた。ご主人に目的なんてなかった。ただ私を求めてくれていた。私がご主人をご主人と呼び始めたのは、それからだった。
“J5II型CC4”……私の本名。ヒューマノイドにはそれぞれ型番があり、それが名前として扱われる。けど、大半の機体は、人間と同じように呼びやすい名前を新しくつける。ご主人の名前は “J2I型AA”だ。 一回で憶えた。6日目の日、私はご主人から名前をもらった。その日のうちに、台車のボディに彫られた型番の上から「ΓΛ⌊ΠΞ」と刻んだ真鍮版を覆って取り付けた。手のいい工具がなかったから、過給スチームと空調メンテナンス用のスパナで彫った。ソフトウェア引継ぎの時に面倒じゃないかと訊かれたが、この名前でいられるならそれくらい何でもなかった。取り外しの仕組も付けてあるので、問題はない。今では、何か手をつけたりしていないと大脳でご主人が反芻される。出来ることなら、外に出なくて済むこと以外は何もしてほしくないと思うときもあるけど、それは望まないことにしている。ご主人には私に対する目的はないけど、私以外には持たずにいられないで欲しい。理由をつけていて欲しい。それに、台車式の私を連れて外出するのはかなり手が掛かる。この棟にも何体かは台車式がいるらしいけど、全員がまるで家具のよう。私もそう。でも家具でいい。ご主人の家具なら、いい。ご主人は今日も、いつものように給入してくれるだろう。私を気遣いながら、喉にゆっくりと濃厚な燃料を出してくれるだろう。けど、いつかはしっかりした給入をご主人としたい。いつかは…………。
ヒューマノイドにおける家事は、人間より楽だと思う。蛇や垢の調理、掃除、卵白加工、金庫管理くらいのものだ。あとは寝床のセット。調理以外は、正直いってすぐ終わる。私は銀籠にしまっていたネハミを3匹取り出し、断熱油をベースにした浸け汁を作る。そうしたらエタを4匹取り出し、脚を切り、胴をミンチにする。横に脚を並べ添えて完成だ。私たちは、普段から2品をゆっくりと食べている。ご主人は私の料理を何でも食べてくれる。普段は澄ましていて頼りがあるけど、好きなものを食べている時は少し若返って見える。まだ知られてないと思っているけど、私はそれをいつもこっそり眺めている。
垢を加工する時、私はいつも、初めてご主人に垢を食べてもらった場面を思い返す。明るめの茶色に、白くなった油の塊が点々としている私の垢は、はっきり言って変に臭みがある。垢だから臭いのは当然だけど、機械由来の錆や油ではない、人間でいた時の臭気が強いのだ。糞尿とは違う、もっと根本の、腐敗と形容されるような臭みがあって、そのために私の垢は悉く不評だった。だからご主人にも、出す前に謝った。渋い顔をされると分かっていたから。だけども、ご主人は一口をゆっくり口で転がしつつ味わうと、その後の第一声は次は鶏油との相性も試してみたいと言い出した。私は七段階針長擬耳を疑った。けどご主人は、良かったら明日も作ってほしい、と、最後まで満足そうに平らげた。それを思い出す度に嬉しくて、いけないことと分かっているけど、時々「スタックから出したままで食べさせられたら」と思う。無加工の私を食べてくれる妄想をする。けど、すぐ振り払う。そろそろご主人も帰ってくる。さすがに、変な妄想を残したまま相手をする自信はない。今日もいつも通り、自分を律してすぐに止めた。
今日は珍しく晴れている。空の青さを拝めたのは、誇張抜きで数年越しである。タワーの向こうに丸禿げの山肌があることにも、今日初めて気が付いた。後ろに見える第二棟から、鶏の声が微かに聞こえてくる。住宅の廃墟に簡易スロープをかけ、俺たちはそこで朝に作った蛇の煮付をつつき始めた。
「……本当に、ご主人は変わってます。何から、何まで。私のどこがそんなに良いんですか」
「そう言われても、パルテだから、かなぁ」
そよ風が、すと吹き、今踏んでいる地面の灰をぱらぱらと流した。灰が通過していくパルテの両太腿には、パリパリに乾いた燃料が張り付いたままだった。
「パルテこそ、急にどうしたんだ。嬉しいのはそうだが、俺のどこが良かったんだ」
この人ときたら、まだ私が、買ってもらった恩を意識してると──
「ふうん、ご主人がそれを聞きます?」
私は、はじめから、
「ご主人は、ご主人だからですよ。それ以外にありません……が、強いて言うとしたら、ですね、」
あの日から、あなたしか、見ていないから。
「そういうとこです」
──────────
彩媛第二共同墓地 間 二三
主 ∫|┫∧Ιζ ΙЭ
Γ Λ ⌊ Π Ξ 静眠
早劫六八年 七月十九日 入
幸せだった。あいつも、心からそうだと良いが。
自分もすぐ、機能を停止する。あいつの居ない今、自分は自分のみならず、世界からも完全に死んでしまう。それはあいつも同じだ。これから二人で、無いものへの仲間入りをするのだ。
…………
このラジオは、きまって朝8時にいらつく声で喚く。タワーから放たれているラジオの定例放送だ。天気の話にはじまり、いやにヘンな挨拶で終わる。話によると、戦前に観光地として人気があった塔の瓦礫を、今まさにうるさく喋っている物好きなヒューマノイドが整備したことにより始まったらしい。それ以降、こうして毎朝ラジオに発信しているというのだ。けして真面目な番組とは言えないが、世界の動向を気楽に掴めるのと、時間が時間なので、これを目覚まし代わりにする者も多い。もっとも、遮断している者も同じくらいいるが。白灰濃度は40%……放射性物質もちょうどいい、ちょっと出掛ける程度には何ら支障はないなと思いながら、飲みかけの高純卵白を空ける。ことによっては、エキサイトリピーターの振幅数を上げる。毎朝やる恒例だ。それを終える8時10分あたりに、ベッドの横につけて寝ていた長髪を持つ台車式のII型が目を覚まし、ガーベジスタックに溜まった垢を真空抽斗に保管して家事を始める。右の触肢についたクーラーボトルに掛けられた金の腕輪を輝かせ、整った顔立ちと合わさる姿はとても美しい。彼女の名前はパルテという。雌市で見限られていたところを引き取ってきたのだ。
この世界には、もはや有機的なものは存在しないといっていい。いや、ほんの少し、大脳盤に使われている最小単位のボルト程度にはいるのかも知れないが、この身体になってからはとんと見ていない。見たこともないものを、無いとは言い切れないのだ。完全な無というのが存在しない以上、自分には無いものの話なんてどうでも良かった。今に文化的な生活をしている者は、みな金属や内燃機関で構成された身体をしている。全ての発端は、2047年に勃発した世界大戦だった。子供が紙飛行機を飛ばすような軽々しさで戦闘特化機が翔び、国頭たちは蛇口を捻るような感覚で核を降らせた。大半の生物を消し飛ばした後、鳥類から順にどんどん死んだ。人間は3番目だった。戦前から、日本が大学と共同して開発が進められていた、大脳などの情報を符号化して送り込むことで起動するヒューマノイド機体があった。当時はまだ試作段階だったが、実用化予定よりも大分早く開戦する予測が立てられたため、機能を一部縮退させて急遽運用することになった。それにより、初期のヒューマノイド──およそ2400人の希望者が、実験的に組み込まれた。彼らを一般にファスタと呼ぶ──は、みなパルテのように両脚の代わりとして台車を備え付けている。現在はそれから150年ほど経ち、ほぼ人間と同等の造形をした可転脚式が主流となり、つくられる建物も横長のものから縦長のものに替わりつつある。
パルテはいつも事務的に物事をこなし、洞察力に極めて長けた振る舞いを見せる。初めて会ったときから、分かりやすい喜怒哀楽を見たことがない。しかし、こちらが口にしていないことをピシャリと正確に言い当ててくることがある。以前、今日は垢で何を作るんだろうかと考えていると、横から「鶏油を垂らしてタタキにでもしましょうか」と言われたことがあった。また、多方面に知識が豊富で、医学、地学、文学、経営、さらに前身で俺が勉強していたIT分野のことも一通り知っていた。彼女は19歳の頃にファスタとしてヒューマノイドになったというが、それ以外のことを特に聞いていないので、どのようにして膨大な知識を得たかも、なぜ雌市に居たかも知らない。俺も俺で、どうして引き取ったのだろう。次に安かったII型の25%以下という破格だったが、それとはまた違う。雌市に寄ったのも気まぐれを超えやしないが、その気まぐれから彼女を一目見て、そうしてただ、良いと思ったのだ。
卵白を飲み、斥候靴に履き替えて、仕事に取りかかる。こんな世界でも、意外と仕事はある。トレーダー、市職員、地質調査、他頭研究者、建築専門士、蛇狩りなど様々だ。だが仕事をするのは主にI型で、II型は専ら家事などをする。うちもその例で、パルテは家全般を任せ、俺は蛇狩りをしている。外で機械の蛇を捕って、トレーダーに売って金に替えるのだ。蛇は主に食用、愛玩用として、トレーダーを通じて客の手に渡る。ヒューマノイドは、I型が作る燃料さえあれば動けるので、食事をする必要は全く無いが、元が人間である以上、食事を捨てることはできないのだろう。食べられた蛇は、体内を意味もなく散策し、いずれ排出されるだけである。靴を脛に固定し、吸着機──放射性物質や白灰を除去するためのもの──の電源を入れる。ゴウゴウ鈍い音と共に20秒ほど動いて、止まる。そうして最後に、パルテに見送ってもらう。これを済ませてようやく外に出られる。
外は白灰の影響で常にやや白みがかっており、とても視界がいいとは言えない。たまに500m先すらも見通せそうなほど透き通った日もあれば、伸ばした手の先も怪しいくらいに見えなくなる日もある。信じ難いが、この灰と放射性物質から蛇は生まれてくる。雌雄の概念も繁殖行動もなしに、虚からポンと生まれるのだ。蛇にもいろいろいて、のろい異形だったり、小っちゃくてすばしっこいのもいる。これを焼いたり蒸したり、物好きはそのまま食べたりもする。俺もパルテも、塩焼きが一番好きだ。蛇のほかに、鶏もいる。例の通り、これも機械だ。しかし、蛇と違ってヒューマノイドが作り出した存在で、蛇とは別の面で今のヒューマノイド達の生活に多大な恩恵を与えてくれている。大脳盤のスループットを向上させる卵白や卵黄は、鶏の卵からでき、本体からは油が採れる。寿命を迎えた個体は、解体すると品種改良に使える。鶏はほとんど、縦積型集合団地の棟それぞれの玄関先に作られた小屋に、棟の住民の共有物として入れられている。俺もいつも帰りに小屋を覗き、卵と油を少々拝借しては、パルテに預けている。
蛇捕りで生きていくうえで特別な道具は要らない。大物をバタバタ捕るとなるとまた違ってくるが、今では金などそこまで重要ではないのだ。この世界で金と引き換えに手に入るものは、どれも生活をささやかに彩る飾り付けに過ぎない。俺は袋から厂拉──誘引式の罠。餌を入れて蛇を待つだけ──をいくつか取りだし、瓦礫の下、灰溜りと適当な場所に設置していく。3時間ほど経てば、中堅はともかく、安価な蛇であれば大体引っ掛かる。その間に、自分の足で手頃な蛇、いうならエタやネハミなどを探すといったやり方が、一番親しまれている。エタは既に絶滅したカナヘビに似た種類だが、脚がとにかく特徴的だ。必ず左右非対称に生え、数は個体によって違う。長さも変わるため、蛇の中でも見てくれがすごい。以前には右3本、左17本の個体が見つかったこともある。その特徴ゆえに逃げ足が遅い。味は中の下といったところで、簡単に手に入るから食べるといった、人間でいうコメのような感覚だが、脚の部分は食感が独特で、特に付け根が好まれる。ネハミは小型の蛇で動きも速いが、植物屑を見つけた途端噛み付き、一度そうなると寿命が尽きるまで離さない。そのため、捕獲難易度はエタと並んで最易である。たまに咬力が強い個体がおり、それについては頭を切り落とし身体を持っていくほかない。淡白な味で、機械蛇特有の油臭さがあまりない。摂食から排泄をほとんどしない種であるため、生でも食べやすい。
数十分かけて、巨大なドーム状の廃墟があるポイントに来た。ここは以前から、大型の捕獲例がちょくちょくあり、このために大きめの直角厂拉を持ってきてある。ドームの周りには、すでに他の者が仕掛けた厂拉が点々としているので、邪魔にならない感覚を空けて、叢に紛れさせた。肝心の直角厂拉は、ドームの中に設置する。瓦礫の隙間を潜り抜け、やや広い空洞に出、中心からわずかに離れた岩陰に下げた。中にはパルテの垢を入れてある。垢の風味はII型によって千差万別だが、彼女の出すものは我々I型からすると兎角クセが強い。そもそも機械であるため、油分や錆臭さが主な評価軸となるのが前提じみているが、彼女は生物的な臭気、旨味を強く残している。そこに機械特有の油、錆が重なるのだから、もしも垢品評会なるものがあったら即刻珍味扱い、議論の荒れは免れないだろう。しかし、その分彼女そのものの味を感じられて、俺はけっこう気に入っている。蛇は特長の強い垢に寄せられやすい研究結果があるので、それで言えばパルテのものはまさに適任なのである。
しばらく蛇を捕まえていると、背中のミキシングタンクが軋む。こうなったら、帰宅の合図だ。I型は空気中の白灰と放射性物質を取り込み、中身を油と一緒にミキサーにかけ燃料を作る。それを脇腹の中にあるスフィアに格納し、大腿の間に付けられた給入管を通じて、II型に分ける。こうしてヒューマノイドは生きているのだ。このタンクの中身の半分程度も、パルテのものになる。今までに仕掛けたポイントを歩き、厂拉を回収していく。大体入るには入っているが、やはりエタかシモタチが大半だ。今日は可もなく不可もなしか、と思っていたが、ドーム内の直角厂拉に、何やら長いものが入っている。照明器で見てみると、大ぶりなテケテケがパルテの垢を貪っていた。通常のテケテケのふた回りほどはあるだろうか、とにかく大きい。これならば大層な金になり、数日は成果を気にせずによくなるだろう。売らずに二人で食べてもいい。彼女はどっちを喜ぶだろう。小さい厂拉をまとめ、テケテケ入りのは背負い、帰路に着きはじめる。途中でカミタチ同士が喧嘩をしていたが、さすがに捕る余裕がないので見逃した。
今日の稼ぎは34ベルムだった。結局テケテケは売らずにいる。明日からパルテと一緒に食べよう。トレーダーのI型から売ってほしいと言われたが、また別の収穫があった時にすることにした。日が沈んできているのか、少し薄暗い。団地に着き、自分の棟の鶏小屋を覗く。大抵寝ているが、5匹くらいはまだコッココッコと動いていた。籠には卵が4個ほど落ちていたので、2個ひっ掴んで昇降機に乗った。
吸着機を動かすと、いつものようにパルテが出迎えてくれる。さっきまで料理をしていたからか、部屋からいい匂いが漂う。今日のメニューは、ネハミ刺しと臓絡めだった。食後には、いつもの垢を出してくれる。鶏油をかけてタタキにしただけの、極めて簡素なものだが、俺はパルテの垢はできるだけ素の味を残したい。生で食べさせてほしいとは、さすがに言えないが。いくらパルテでも、軽蔑されかねない。
食事が終われば、やることは2つになる。給入と就寝だ。II型は自分で燃料を作れないので、I型がいなければ機能できない。ゆえに俺は、毎晩パルテに給入をする必要がある。台車式なのもあり、彼女には口からしか入れた経験がない。彼女は面倒がるかも知れないが、一度は……。と思うが、いつも言わないでいる。台車を外した姿にも、少し興味はあるが。 雌市から買い取る際、明細書の備考欄に給入についての事項があった。理由などは書いていなかったが、“経口を推奨”とあった。台車式はそもそも経口摂取が主流になっているフウがあるので、わざわざ備考として記載されることはない。なので、彼女は給入口に何かしら問題がある、ぐらいしか推測がつかない。
自分が他のヒューマノイドと少し違うことは、よく分かっている。台車式であることもそうだけど、今でも台車式のヒューマノイドはたまに見る。それ以上に、自分自身そのものについてだ。雌市に入る前は、まだヒューマノイドそのものが少ないのもあったけど、I型どころかヒューマノイドが近くに居なかったので、給入はせず無人機の燃料缶で補っていた。燃料さえあれば動けるから、大きな瓦礫の隙間に住んで、とにかく文化DBから書籍を漁り、読み込むだけの生活をしていた。気付けば、人間として生きていた時間の何倍も経っていた。I型とII型の比率が取れてきた頃までその生活を続けてきたせいか、給入口の感覚器が一切劣化しないままの状態で慣れきってしまい、雌市に入ってから初めて給入してもらった時に、給入口やリザーブタンクから垢やら油やらが漏れ出して、更に燃料が入り込む度に身動ぎ声が出るので、ろくに進まない。本来なら5分程度で終わるのが、40分近くかけてしまった。
それ以降、私の給入作業は経口摂取で行われることになった。もともと台車式で、給入の度に台から外したりしていては面倒だし、私もそれで良かった。給入口でしてもらうより効率は落ちるけど、要らない手間を沢山増やすよりずっといい。その後の雌市の生活は悪くはなかったけれど、誰も私には注目してはいなかった。内気ではないけど、表情を出すのが苦手で、愛想がなくてつまらない奴だと思われがちで、リザーブタンクも小さい。垢まで不味い。市には脚のあるII型も沢山いたから、お客のI型はみんなそっちに夢中になっていた。別に、何か嫌なことをされたわけではない──ヒューマノイドになるような人に、そんなのはいない──けど、私はどうしても、孤独に帰結するんだと半ば諦めていた。
雌市に入ってから1年ほどが過ぎて、一人のI型が私の売買ブースに来た。後のご主人だ。そこには私のほかに、脚のあるII型が3人いた。全員、リザーブタンクも大きくて、腰や脚は機械でありながらも人間の雌と思わせるほど整っていた。1人が早速その人に色のある笑顔で接し始めたけど、その人は少し思を巡らしたように見えて、私のことを職員に相談し始めた。何か気に障ってしまったかと思ったら、夢にも思わないことを言われた。私を買いたいとのことだった。職員もそうだが、私が一番驚いていた。最も、顔には出なかったけど。最初は何か目的があるのかと勘繰った。けれど、翌日からは私のために玄関にスロープを付けてくれていた。給入事情を何の閊えもなしに受け入れてくれた。仕事をくれた。卵をくれた。好きな蛇を憶えてくれた。腕輪をくれた。愛称を考えてくれた。ご主人は、私に沢山くれた。ご主人に目的なんてなかった。ただ私を求めてくれていた。私がご主人をご主人と呼び始めたのは、それからだった。
“J5II型CC4”……私の本名。ヒューマノイドにはそれぞれ型番があり、それが名前として扱われる。けど、大半の機体は、人間と同じように呼びやすい名前を新しくつける。ご主人の名前は “J2I型AA”だ。 一回で憶えた。6日目の日、私はご主人から名前をもらった。その日のうちに、台車のボディに彫られた型番の上から「ΓΛ⌊ΠΞ」と刻んだ真鍮版を覆って取り付けた。手のいい工具がなかったから、過給スチームと空調メンテナンス用のスパナで彫った。ソフトウェア引継ぎの時に面倒じゃないかと訊かれたが、この名前でいられるならそれくらい何でもなかった。取り外しの仕組も付けてあるので、問題はない。今では、何か手をつけたりしていないと大脳でご主人が反芻される。出来ることなら、外に出なくて済むこと以外は何もしてほしくないと思うときもあるけど、それは望まないことにしている。ご主人には私に対する目的はないけど、私以外には持たずにいられないで欲しい。理由をつけていて欲しい。それに、台車式の私を連れて外出するのはかなり手が掛かる。この棟にも何体かは台車式がいるらしいけど、全員がまるで家具のよう。私もそう。でも家具でいい。ご主人の家具なら、いい。ご主人は今日も、いつものように給入してくれるだろう。私を気遣いながら、喉にゆっくりと濃厚な燃料を出してくれるだろう。けど、いつかはしっかりした給入をご主人としたい。いつかは…………。
ヒューマノイドにおける家事は、人間より楽だと思う。蛇や垢の調理、掃除、卵白加工、金庫管理くらいのものだ。あとは寝床のセット。調理以外は、正直いってすぐ終わる。私は銀籠にしまっていたネハミを3匹取り出し、断熱油をベースにした浸け汁を作る。そうしたらエタを4匹取り出し、脚を切り、胴をミンチにする。横に脚を並べ添えて完成だ。私たちは、普段から2品をゆっくりと食べている。ご主人は私の料理を何でも食べてくれる。普段は澄ましていて頼りがあるけど、好きなものを食べている時は少し若返って見える。まだ知られてないと思っているけど、私はそれをいつもこっそり眺めている。
垢を加工する時、私はいつも、初めてご主人に垢を食べてもらった場面を思い返す。明るめの茶色に、白くなった油の塊が点々としている私の垢は、はっきり言って変に臭みがある。垢だから臭いのは当然だけど、機械由来の錆や油ではない、人間でいた時の臭気が強いのだ。糞尿とは違う、もっと根本の、腐敗と形容されるような臭みがあって、そのために私の垢は悉く不評だった。だからご主人にも、出す前に謝った。渋い顔をされると分かっていたから。だけども、ご主人は一口をゆっくり口で転がしつつ味わうと、その後の第一声は次は鶏油との相性も試してみたいと言い出した。私は七段階針長擬耳を疑った。けどご主人は、良かったら明日も作ってほしい、と、最後まで満足そうに平らげた。それを思い出す度に嬉しくて、いけないことと分かっているけど、時々「スタックから出したままで食べさせられたら」と思う。無加工の私を食べてくれる妄想をする。けど、すぐ振り払う。そろそろご主人も帰ってくる。さすがに、変な妄想を残したまま相手をする自信はない。今日もいつも通り、自分を律してすぐに止めた。
今日は珍しく晴れている。空の青さを拝めたのは、誇張抜きで数年越しである。タワーの向こうに丸禿げの山肌があることにも、今日初めて気が付いた。後ろに見える第二棟から、鶏の声が微かに聞こえてくる。住宅の廃墟に簡易スロープをかけ、俺たちはそこで朝に作った蛇の煮付をつつき始めた。
「……本当に、ご主人は変わってます。何から、何まで。私のどこがそんなに良いんですか」
「そう言われても、パルテだから、かなぁ」
そよ風が、すと吹き、今踏んでいる地面の灰をぱらぱらと流した。灰が通過していくパルテの両太腿には、パリパリに乾いた燃料が張り付いたままだった。
「パルテこそ、急にどうしたんだ。嬉しいのはそうだが、俺のどこが良かったんだ」
この人ときたら、まだ私が、買ってもらった恩を意識してると──
「ふうん、ご主人がそれを聞きます?」
私は、はじめから、
「ご主人は、ご主人だからですよ。それ以外にありません……が、強いて言うとしたら、ですね、」
あの日から、あなたしか、見ていないから。
「そういうとこです」
──────────
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