上 下
3 / 4

光音社「日本怪異ハンドブック100」(著:夏笠ナハ)47~48ページより抜粋

しおりを挟む
三十一【おでいさま】

 新潟県の一部に伝わっている怪異。語られる範囲の狭さからは考えられないほど、伝承内容に多様性を持つことが特徴。そのパターンは20通り以上といわれる。有力とされる説は4つあり、守雨町、早良町、笠真町、江良郡にそれぞれ伝わる。



  ❬守雨町の伝承❭
 1700年頃に童話として語られ始め、以後各所から出版され続けている。ざっくり意訳すると「川でやたらにふざけると、二度と生まれ変わらなくなる」という話。仏教を浸透させるために作られたという見方もある。
 話の中には「びしゃぬ」という怪奇存在が出てくるが、近年の絵本では何故か「さゆり」という女の幽霊に置き換わっている。


  ❬早良町の伝承❭
 帰らなくなった人の総称である。この地域では、通夜や葬儀で故人のことを「****御尼」と表記するそうだ。
 この伝承は比較的新しく、元となる出来事が存在する。それは、1978年に行われた、早良町4番地7の東 高彦さん(享年78)の葬儀で起こった。塔婆に書かれていた戒名の末に、式の途中で何者かによって "氵" が書き足され『御泥』となっていた。その後の花向けの儀で棺を開けた際、高彦さんの口と顎が、胴に向かって著しく垂れており、右目が肥大化し、左目は消え入りそうなほどすぼまっていたという。また、口内には黄色をした潰瘍のようなものが10個ほど出来ていた。
 これにより、早良町では今でも根強く"おでいさま"が信じられ、畏れられており、戒名に書き足した犯人が捜されている。


  ❬笠真町の伝承❭
 泥で形成された田圃の精霊。米の豊作に尽力し、田植えの時期には米農家に活力を分け与えるとされ、作業を終える夕刻になると、おでいさまへの供物として家の娘が田圃に糞をする。
 竺真町は今でも農耕が盛んだが、何故か大根だけはどこの家でも栽培されていないらしい。


  ❬江良郡の伝承❭
 女が13歳、15歳、21歳になる誕生日に顕れ、腹と陰部を食らうとされる怪異。おでいさまを退けるため、女はその日に純米酒を4度に分けて飲む習慣がある。
 この伝承を確実なものにしたのは2000年の出来事で、横田家の次女である横田梨流(当時15)が、自室で下腹部を抉られた状態で見つかったことから、江良郡では一層おでいさまの存在が信じられるようになったようである。


  ❬鷹谷澪の伝承❭
 成れの果て
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

規則怪談:漆黒の山荘

太宰菌
ホラー
温泉山荘の規則は以下の通り、厳守してください。規則を守らない者は、それに同化され、永遠に山荘から離れることができない!

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。

三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。 何度も断罪を回避しようとしたのに! では、こんな国など出ていきます!

本当にあった怖い話

邪神 白猫
ホラー
リスナーさんや読者の方から聞いた体験談【本当にあった怖い話】を基にして書いたオムニバスになります。 完結としますが、体験談が追加され次第更新します。 LINEオプチャにて、体験談募集中✨ あなたの体験談、投稿してみませんか? 投稿された体験談は、YouTubeにて朗読させて頂く場合があります。 【邪神白猫】で検索してみてね🐱 ↓YouTubeにて、朗読中(コピペで飛んでください) https://youtube.com/@yuachanRio ※登場する施設名や人物名などは全て架空です。

人違いラブレターに慣れていたので今回の手紙もスルーしたら、片思いしていた男の子に告白されました。この手紙が、間違いじゃないって本当ですか?

石河 翠
恋愛
クラス内に「ワタナベ」がふたりいるため、「可愛いほうのワタナベさん」宛のラブレターをしょっちゅう受け取ってしまう「そうじゃないほうのワタナベさん」こと主人公の「わたし」。 ある日「わたし」は下駄箱で、万年筆で丁寧に宛名を書いたラブレターを見つける。またかとがっかりした「わたし」は、その手紙をもうひとりの「ワタナベ」の下駄箱へ入れる。 ところが、その話を聞いた隣のクラスのサイトウくんは、「わたし」が驚くほど動揺してしまう。 実はその手紙は本当に彼女宛だったことが判明する。そしてその手紙を書いた「地味なほうのサイトウくん」にも大きな秘密があって……。 「真面目」以外にとりえがないと思っている「わたし」と、そんな彼女を見守るサイトウくんの少女マンガのような恋のおはなし。 小説家になろう及びエブリスタにも投稿しています。 扉絵は汐の音さまに描いていただきました。

王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る

家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。 しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。 仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。 そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。

貧乏男爵家の末っ子が眠り姫になるまでとその後

空月
恋愛
貧乏男爵家の末っ子・アルティアの婚約者は、何故か公爵家嫡男で非の打ち所のない男・キースである。 魔術学院の二年生に進学して少し経った頃、「君と俺とでは釣り合わないと思わないか」と言われる。 そのときは曖昧な笑みで流したアルティアだったが、その数日後、倒れて眠ったままの状態になってしまう。 すると、キースの態度が豹変して……?

処理中です...