婚約破棄された悪役令息は隣国の王子に持ち帰りされる

kouta

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ノア、行きまーす!

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 魔法の基礎が書かれている書を読み込むこと二日。

(ふむ。なるほど……なんとなく仕組みがわかってきた)

 乙女ゲームには魔法が出てこなかった。その理由がよくわかった。基本的にこの世界の魔法は地味なのである。
 よく転生チートで出て来る無詠唱出来る奴が強いムーヴが効かない。何故ならこの世界の魔法は基本的に無詠唱、あるいはごく短い掛け声だからである。
 そして魔力とは鍛えてコントロールが上手くなることはあっても、魔力の総量は生まれた時から変わらず増えることはない。
 『血』によって継承されるものとあるので、恐らく前世でいうDNAに刻まれた情報なのだろう。だから、同じ一族であっても魔法の情報を受け継がれる子と受け継がれない子がおり、魔法が使える人間は子どもの頃から使えるし、逆に子供の頃使えなかった人が大人になってから開花するという事もない。

 オスカーにそれとなく聞いてみると、今は亡き祖父が土属性の魔法を使えたらしい。なので、幼少期に土から人形を作っていたノアが土属性の魔法を継承していることは間違いないだろう。

(魔法に関する情報は、本来なら一族の中で受け継がれていくもの。だからその鍛錬方法は様々で魔法の種類もその『血』ごとに無数存在する。それをあえて属性に当てはめて、殆どの魔法に関する共通事項をまとめた本がコレということだが…………肝心の魔法の使い方に関しては『イメージが大事』としか書かれていないのがなぁ……)

 物は試しなので、ノアは早速自分の家の中庭で実験してみることにした。

(土属性の魔法……やっぱりゴーレムとかかな? となるとイメージしやすいのは宇宙でも使えるあの機体か)

 某アニメを思い出してノアは魔術を起動してみる。人によっては……と言うより受け継がれた魔法によって力が漲る部位が違うらしいが、ノアがイメージしやすいのは自分の右手に魔力を集中させることだった。本でも、ほとんどの魔法使いは手に力を集中させて操るらしい。

(かっこよくて、ビームが出せて、ライトセーバーもいいな! あとコックピットがあって乗れると尚良し!)

 ゴゴゴゴゴゴゴッ!! という凄まじい音と共にノアがイメージしたゴーレムが中庭に出現した。
 しかし、ノアのイメージが具体的過ぎてしまったらしい。実物大の巨大〇ンダムが中世風の中庭に出現した。違和感が凄い。

「きゃああああああ!!」

そして、当然屋敷の中庭でやっちまったので、屋敷の使用人達の目にとまり、茶器を運んでいたメイドは手に持っていた食器を落として割り、齢70歳の執事はしりもちをついてそのまま腰を痛め、庭師はうっかり剪定ばさみを放り投げてしまい、それに当たりそうになったハトの群れがバサバサを音を立てて羽ばたいていった。

「……てへっ、やっちゃった☆」

精神年齢アラフォーおじさんがぺろっと舌を出して可愛く言ってみても、もはやどうしようもない事態である。慌ててゴーレムを元に戻して、幻覚でしたーってするにはあまりの使用人たちに見られてしまった。

(どうやって誤魔化すかなー……いや、もう誤魔化すの無理かな? ん? でも待てよ。ゴーレムに皆気を取られてて足元にいた俺に気づいている人はいないんじゃないか?)

「……三十六計逃げるに如かず」

ノアは急いでゴーレムを土に戻すと、土埃を目くらましにその場から逃亡した。自分の部屋に急いで戻り、椅子に座って読書をしているフリをする。すると約十分後、一人のメイドが訪ねてきた。

「ノア様、失礼します。ご無事でいらっしゃいますか?」
「無事って、なんのこと?」

ノアはすっとぼけてみせた。メイドは安堵した様子で胸を撫でおろした。

「良かったです……実は先ほど謎のゴーレムが庭に出現致しまして」
「ゴーレムが?」
「ひどい騒ぎでしたが、お気づきになられませんでしたか?」
「ああ、ごめん……読書に集中していたから」
「そうですか。でもノア様がご無事で良かったです。もしかしたら、旦那様の留守中にノア様を狙った人攫いの仕業かと冷や冷やしました」
「人攫いなんて大げさな……」
「そんなことありません。今町では人攫いが出るって噂になっているんです。ノア様も気を付けてくださいね」
「そうなんだ。心配してくれてありがとう」
「いえ……それでは失礼します」

メイドはぺこりと頭を下げて部屋を出ようとして……ドアノブに手をかけたままノアを振り返った。

「……ところで、先ほど中庭でノア様を見かけたのですが」
「うぐっ……そ、そうなの?」
「幸い、私以外は目撃していない様子でしたが……手をかざして何かしていましたよね? もしかしてノア様、魔法使えます?」
「な、なんのことでしょう?」
「…………旦那様にはご報告いたします。よろしいですね?」
「ハイ……ウソツイテ、スミマセンデシタ」

確信しているらしいメイドの有無を言わせない低い声に、ノアは思わず自分の犯行だと認めてしまったのだった。


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