婚約破棄された悪役令息は隣国の王子に持ち帰りされる

kouta

文字の大きさ
10 / 53

夢の中で

しおりを挟む


 ああ、これは夢だな。とわかる瞬間がある。
 何故なら、それはもう昔の話。一度見たことがある光景だったからだ。


「アルフレッドさま! 出来ましたっ」

興奮する少年ノアは、恐らくこの頃は10歳前後だったはずだ。

「見てくださいこの素晴らしい造形! これを売ればお金になりますよ!」
「お前なぁ……公爵家令息で将来俺の嫁になる男が、なんでこんなくだらない人形遊びで金儲けしようとしてんだよ?」

飽きれたように顔を顰める幼い時のアルフレッド殿下。彼の言っている事は大変ごもっともである。

「遊びじゃないですよ。これ、土で出来ているんですけど、魔力の膜で包んでいるので水にも浮くんですよ! ほらほらぁ」

ノアは自分で作った土の箱舟を中庭の池に浮かばせた。小さな人形を乗せた箱舟は水の上をプカプカと浮いている。

「……ノア」
「はい」
「その魔法、俺以外の奴の前で使うなよ」

ノアはきょとんとアルフレッド殿下を瞬きして見つめる。何故彼がそんなことを言うのか、わからなかったからだ。

「ぼくの魔法はアルフレッド殿下のようなえげつないやつじゃないですよ?」
「充分エグいわ、アホ。こんだけ精巧な細工を魔法で作れるって知られたら……」
「知られたら?」
「……俺の父上に思いっきりコキ使われるぞ。しかも身内だからとか言い出して謝礼は多分出さない」
「えぇー!! 陛下ケチすぎます!」
「お前もタダ働きなんて嫌だろ? だから、魔法が使えることは黙っていろ……勿論、俺の魔法の事もな」
「わかってますよー。アルフレッド殿下のそれって本当は結婚するまで言っちゃダメなやつだったんでしょ?」
「ああ。でもお前には隠し事なんてしたくなかったからな……ノアは特別だから」
「へへっ。ぼくにとってもアルフレッドさまは一番特別な人ですよ」

ノアが笑うと、アルフレッドも嬉しそうに微笑んだ。それは、春の陽だまりのようなとても愛おしい時間だった。




「…………懐かしい夢だったな」

ほとんど忘れていた過去の出来事だった。幼少期からアルフレッドとノアは多忙ではあったが、それでも二人きりで王城の中庭で遊ぶ時もあった。
 ノアはそんなアルフレッドとの時間がとても好きで……好きで……。

「……はぁー……なんで今更夢にまで出てくるかねぇ……」

窓の外は少し明るくなってきた頃だった。まだ起床の時間には早い。ノアは再び目を瞑り二度寝しようとしたが、目が覚めてしまったのか眠気は訪れなかった。

(そういえば……なんであの時アルフレッド殿下は魔法のことを口止めしようとしたんだろうか?)

 アルフレッドに忠実だったノアは、あの日以降魔法は使ってこなかったし、自分に魔力があること、また扱えることを家族にすら話してない。
 『陛下にバレたら大変だから』というのは当時のノアは納得したが、今思い返してみればあれは幼いノアを納得させるための嘘だとわかる。
 あの時の真剣なアルフレッドの顔からして、それなりの理由があるはずなのだが、結局考えてもよくわからなかった。

(うーん……魔法の勉強を進めたらその理由がわかるのかもな)

 目が覚めてしまったノアは、二度寝する事を諦めて上体を起こし、枕元に置いていた本を手に取った。それは昨日図書館から借りてきた魔法の基本的な知識が書かれている書物だった。

(……さすが、優秀な司書が選んだ著書だ。解説書が要らないくらいわかりやすい)

 この世界の書物は難解なものも多く、時には読み解くのに入門書の入門書が必要な本がゴロゴロとしているのだが、エディの薦めてくれた本はとても丁寧でわかりやすい書物だった。

(この二冊が読み終わったら、また図書館に行くか。エディなら冒険者になるための入門書も探してくれるに違いない……楽しみだ)

 それがかなりの無茶ぶりだという事に、ノアは全く気付いていなかった。



しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

妹に婚約者を取られるなんてよくある話

龍の御寮さん
BL
ノエルは義母と妹をひいきする父の代わりに子爵家を支えていた。 そんなノエルの心のよりどころは婚約者のトマスだけだったが、仕事ばかりのノエルより明るくて甘え上手な妹キーラといるほうが楽しそうなトマス。 結婚したら搾取されるだけの家から出ていけると思っていたのに、父からトマスの婚約者は妹と交換すると告げられる。そしてノエルには父たちを養うためにずっと子爵家で働き続けることを求められた。 さすがのノエルもついに我慢できず、事業を片付け、資産を持って家出する。 家族と婚約者に見切りをつけたノエルを慌てて追いかける婚約者や家族。 いろんな事件に巻き込まれながらも幸せになっていくノエルの物語。 *ご都合主義です *更新は不定期です。複数話更新する日とできない日との差がありますm(__)m

悪役令嬢と呼ばれた侯爵家三男は、隣国皇子に愛される

木月月
BL
貴族学園に通う主人公、シリル。ある日、ローズピンクな髪が特徴的な令嬢にいきなりぶつかられ「悪役令嬢」と指を指されたが、シリルはれっきとした男。令嬢ではないため無視していたら、学園のエントランスの踊り場の階段から突き落とされる。骨折や打撲を覚悟してたシリルを抱き抱え助けたのは、隣国からの留学生で同じクラスに居る第2皇子殿下、ルシアン。シリルの家の侯爵家にホームステイしている友人でもある。シリルを突き落とした令嬢は「その人、悪役令嬢です!離れて殿下!」と叫び、ルシアンはシリルを「護るべきものだから、守った」といい始めーー ※この話は小説家になろうにも掲載しています。

もう一度君に会えたなら、愛してると言わせてくれるだろうか

まんまる
BL
王太子であるテオバルトは、婚約者の公爵家三男のリアンを蔑ろにして、男爵令嬢のミランジュと常に行動を共にしている。 そんな時、ミランジュがリアンの差し金で酷い目にあったと泣きついて来た。 テオバルトはリアンの弁解も聞かず、一方的に責めてしまう。 そしてその日の夜、テオバルトの元に訃報が届く。 大人になりきれない王太子テオバルト×無口で一途な公爵家三男リアン ハッピーエンドかどうかは読んでからのお楽しみという事で。 テオバルドとリアンの息子の第一王子のお話を《もう一度君に会えたなら~2》として上げました。

侯爵令息は婚約者の王太子を弟に奪われました。

克全
BL
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

推しのために自分磨きしていたら、いつの間にか婚約者!

木月月
BL
異世界転生したモブが、前世の推し(アプリゲームの攻略対象者)の幼馴染な側近候補に同担拒否されたので、ファンとして自分磨きしたら推しの婚約者にされる話。 この話は小説家になろうにも投稿しています。

過労死転生した公務員、魔力がないだけで辺境に追放されたので、忠犬騎士と知識チートでざまぁしながら領地経営はじめます

水凪しおん
BL
過労死した元公務員の俺が転生したのは、魔法と剣が存在する異世界の、どうしようもない貧乏貴族の三男だった。 家族からは能無しと蔑まれ、与えられたのは「ゴミ捨て場」と揶揄される荒れ果てた辺境の領地。これは、事実上の追放だ。 絶望的な状況の中、俺に付き従ったのは、無口で無骨だが、その瞳に確かな忠誠を宿す一人の護衛騎士だけだった。 「大丈夫だ。俺がいる」 彼の言葉を胸に、俺は決意する。公務員として培った知識と経験、そして持ち前のしぶとさで、この最悪な領地を最高の楽園に変えてみせると。 これは、不遇な貴族と忠実な騎士が織りなす、絶望の淵から始まる領地改革ファンタジー。そして、固い絆で結ばれた二人が、やがて王国を揺るがす運命に立ち向かう物語。 無能と罵った家族に、見て見ぬふりをした者たちに、最高の「ざまぁ」をお見舞いしてやろうじゃないか!

美人なのに醜いと虐げられる転生公爵令息は、婚約破棄と家を捨てて成り上がることを画策しています。

竜鳴躍
BL
ミスティ=エルフィードには前世の記憶がある。 男しかいないこの世界、横暴な王子の婚約者であることには絶望しかない。 家族も屑ばかりで、母親(男)は美しく生まれた息子に嫉妬して、徹底的にその美を隠し、『醜い』子として育てられた。 前世の記憶があるから、本当は自分が誰よりも美しいことは分かっている。 前世の記憶チートで優秀なことも。 だけど、こんな家も婚約者も捨てたいから、僕は知られないように自分を磨く。 愚かで醜い子として婚約破棄されたいから。

処理中です...