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エピローグ

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 翌日の昼過ぎ、茂美は半ば強引に病院を退院してきた。
 医者は退院にごねたそうだが、非の打ち所がないほどに完璧な検査結果に茂美の驚異的な回復力を認めざる得なかったようだ。
 オレたちが休むアパートには寄らず、まっすぐ店に行くという茂美のメールを、オレは寝ぼけまなこで受け取った。
「毎日店の売り上げや状況は報告していたけど、やっぱり心配だよな」
 ようやく茂美が店に帰ってくる。そう思うとオレも妙に落ち着かなくて、いつもより早い時間からメイクを始め、ドクターストップに向かった。
 裏口から店に入ると、茂美はいつものカウンター席に静かに座っていた。
「茂美、おかえり!」
 会わなかったのはたった三日間のはずなのに、茂美のゴリラフェイスを見るのはものすごく久しぶりな気がした。
「あら彰人、早いじゃない」
「なんか落ち着かなくてな。茂美、体調のほうはもういいのか?」
「バッチリ。検査はオールAで退院してきたわ。あたしの体力なめんじゃないわよ」
「あはは、茂美らしいや」
 笑って開店準備に取り掛かるオレの肩に、茂美の大きな手が置かれた。
「茂美?」
「彰人、話は史明からいろいろ聞いているわ。三日間、ドクターストップをありがとう」
 そう言って、茂美がオレに頭を下げた。
 茂美に向きなおり、オレも茂美に向けて頭を下げた。
「未熟者だけど、三日間一生懸命勤めさせてもらいました。茂美、オレを信じてくれて、任せてくれてありがとう」
「アンタに頼んで正解だった。嬉しいわ、彰人」
「茂美……」
 ただよい始めた優し気な空気を、蒸気船のような茂美の鼻息が吹き飛ばした。
「というわけでぇ~! これからはアンタが結構使いものになるってわかったぶん、ビシバシと容赦なく使っていくからね! 覚悟しなさい彰人!」
「お前なぁ、せっかくの雰囲気台無し。あはは、でも、それでこそオレの知ってる茂美だ。いいさ、なんだってどんと来いだ!」
 オレは思い切り胸を張って、ドンっと胸板を打ち鳴らした。
 やがて古賀やナルやフランソワもやってきて、ドクターストップに開店の時間がおとずれる。それを待っていたかのように、カランとドクターストップのドアベルが鳴った。
 オレたちは、期せずして声をそろえて言った。

「「「ようこそ! ドクターストップへ!」」」



【了】
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