【魔物島】～コミュ障な俺はモンスターが生息する島で一人淡々とレベルを上げ続ける～

第105話 リスタート

気がつくと俺は狭いほら穴の中のような場所にいた。
隣にはメタムンが眠っている。
どうやらメタムンが俺をここまで運んできてくれたらしい。
あれから一時間はとうに過ぎていたようで俺の体はもとの大きさに戻っている。
しかし全身はボロボロで身動き一つとれない。

俺はいちかばちか「キュア！」と口にした。
すると俺のMPはある程度回復していたのだろう、回復呪文であるキュアが発動した。
俺の体を黄色い暖かな光が包み込んでいく。

そして数秒後、
「……ふぅ。これで元通りだ」
俺は全回復を遂げていた。

隣で眠るメタムンはひどく疲れた顔をしている。
俺の身を案じてずっと付き添ってくれていたに違いない。

「ありがとう、メタムン」

俺は小さな声でそうささやくとメタムンの隣で再び横になった。


☆　☆　☆


『善ーっ！　よかった、よかったよ善ーっ！　善が元気になってほんとによかったーっ！！』
「おい、メタムン。そんなんにくっつくなって」
『善、善ーっ！！』

しばらくして目覚めたメタムンは、俺が元通りになったことを知ると俺の胸に飛びついてきた。
ぐりぐりと頭を俺の胸に押し付けてくる。

「わかったから。ほら、涙を拭いて」
『うん、うん……』
指で涙を拭ってやるとメタムンはやっと俺から離れ、落ち着きを取り戻した。

「ところでここはどこなんだ？　ほら穴の中みたいだけど……」
『よくわかんない。おいら夢中だったから』
「そっか。まあいいや、とりあえずここから出ようか」
『うんっ』

天井が低く立つことが出来ないので、俺は暗がりの中をはいはいで進んでいく。
そんな俺の後ろからメタムンもついてくる。

「それにしても、メタムンありがとうな。お前のおかげで助かったよ」
『えへへ、いいよそんなのっ。おいらと善の仲じゃないか』
「ああ、そうだな」

メタムンの笑顔が見れてホッとする。
いつの間にか、俺のそばにはメタムンがいることが当たり前になっていた。

「おっ、出口みたいだっ」

前方に小さな明かりが見えた。
俺はそこを目指して突き進んでいく。
そしてその小さな穴から顔を出すと、
『グルルァァァアアアッ！！』
グレイトティラノが大きな口を開けて待ち受けていた。

「はぁ～。一難去ってまた一難か……」

俺はこぶしを強く握り締めた。