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第66話 チャット
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「北原。実は俺、お前の妹にたまたま会ってさ、北原を探して再会させてあげるって約束しちゃったんだよな。だからさ、悪いけど――」
「うん、知ってるよ」
北原は俺の言葉には動じず、それどころか俺の話を遮ってそんなことを言った。
「え? ……知ってるって、どういうことだ?」
「あ、ごめんごめん。ちょっと前にチャットルームが解放されたでしょ、柴木くんがレベル2000になった時に」
「あ、ああ、うん」
「それですみれと連絡が取れたのよ」
「あ……そ、そうなんだ」
そういえば、俺がレベル2000を超えたことで、この島の人間同士でチャットが出来るようになっていた。
そうか、北原と北原すみれはそこで連絡をすでに取り合っていたのか。
「うん。それでね、初めはわたしがすみれに会いに行こうとしたんだけど、すみれはなんかすごい呪文を覚えててモンスターに絶対にみつからないっていうから、すみれにこっちに来てもらうことにしたの」
北原すみれは認識阻害呪文という他者に自分の存在を気付かせない呪文を覚えていた。
たしかにその呪文があるのならば、北原すみれが動いた方がより安全と言えるだろう。
「すみれはここから少し離れたところにいるみたいだからこっちに着くまでにもうちょっとかかるっぽいけど、ここで待っていればすみれと再会できるってわけなの。ごめんね、すみれに頼まれてわたしのこと探してくれていたのに勝手なことしちゃって」
「いや、別にいいけどさ……」
俺だって北原探しにそこまで本腰を入れていたわけではないので、謝られると心が痛む。
「それでさ、わたし以上にすみれが気にしちゃっててさ。柴木さんに悪いことしちゃった、どうしよう姉さんって泣きそうな感じだったのよ。だからさ、もしよかったらすみれとチャットしてくれないかなぁ。そうすればすみれも安心すると思うからさ。なんかいろいろわたしたち姉妹が迷惑かけてほんっとごめんっ」
深々と頭を下げる北原。
そんなことをされたら怒るに怒れないじゃないか。
いやまあ、怒る気など初めからないのだけれど。
「いいよ。チャット、今してみようか?」
「いいのっ? ありがと、柴木くんっ」
俺の手をぎゅっと握って大きく振る。
北原らしい行動だが、一歩間違えば相手を誤解させてしまうのではないだろうか。
俺は自分というものをわかっているのでそんな誤解は間違ってもしないがな。
などと冷静に自己分析しつつ、俺はスマホを取り出してチャットルームに入った。
俺が文字を打ち込んでいると、
「でも柴木くんも悪いんだよ」
と北原が口を開く。
「ん? 何が?」
「だってわたしもすみれも毎日時間をみつけては、チャットで柴木くんに呼びかけてたんだからね。なのに柴木くんは全然返事くれないんだもんっ」
「あー、そう……だね」
チャットは俺には関係ないものだと思っていたので、チャットルームが開かれた日以降、それに関わることは一度もなかったのだ。
まさか北原姉妹が俺に連絡をとろうとしていただなんて思いもしなかった。
俺は文字を打ち終わり、
「これでいいかな?」
「うん、まあいいんじゃない」
「よし、じゃあ送信っ」
北原すみれに対してメッセージを送ってみた。
俺の送った文章は以下の通り。
《北原すみれへ
今北原と一緒にいるよ。北原から話は聞いた。俺は全然気にしてないからそっちも気にしなくて大丈夫だから。じゃあ気を付けて。柴木善より》
やや冷たい印象を与えそうな文章だと思ったが、これ以上親し気に書くのはためらわれたので適当なところで妥協した。
これを北原すみれがみつけてくれれば万事解決だ、そう思った次の瞬間、北原すみれからの返事が画面上に映った。
《柴木さんへ
本当にすみませんでした。姉を探してほしいと言い出したのは私なのに、柴木さんの知らないところで勝手に姉と話を進めてしまって、本当に申し訳ありません。なんとお詫びをしたらよいか。直接謝りたいので姉のいる場所で少しだけ待っていてはいただけないでしょうか。すぐにそちらに行きますので。どうかよろしくお願いいたします。北原すみれ》
同級生なのに硬い文章。気にしなくていいと言ったのに謝り通し。
どうやら北原すみれも相変わらず、人とコミュニケーションをとるのが上手くはないようだ。
「うん、知ってるよ」
北原は俺の言葉には動じず、それどころか俺の話を遮ってそんなことを言った。
「え? ……知ってるって、どういうことだ?」
「あ、ごめんごめん。ちょっと前にチャットルームが解放されたでしょ、柴木くんがレベル2000になった時に」
「あ、ああ、うん」
「それですみれと連絡が取れたのよ」
「あ……そ、そうなんだ」
そういえば、俺がレベル2000を超えたことで、この島の人間同士でチャットが出来るようになっていた。
そうか、北原と北原すみれはそこで連絡をすでに取り合っていたのか。
「うん。それでね、初めはわたしがすみれに会いに行こうとしたんだけど、すみれはなんかすごい呪文を覚えててモンスターに絶対にみつからないっていうから、すみれにこっちに来てもらうことにしたの」
北原すみれは認識阻害呪文という他者に自分の存在を気付かせない呪文を覚えていた。
たしかにその呪文があるのならば、北原すみれが動いた方がより安全と言えるだろう。
「すみれはここから少し離れたところにいるみたいだからこっちに着くまでにもうちょっとかかるっぽいけど、ここで待っていればすみれと再会できるってわけなの。ごめんね、すみれに頼まれてわたしのこと探してくれていたのに勝手なことしちゃって」
「いや、別にいいけどさ……」
俺だって北原探しにそこまで本腰を入れていたわけではないので、謝られると心が痛む。
「それでさ、わたし以上にすみれが気にしちゃっててさ。柴木さんに悪いことしちゃった、どうしよう姉さんって泣きそうな感じだったのよ。だからさ、もしよかったらすみれとチャットしてくれないかなぁ。そうすればすみれも安心すると思うからさ。なんかいろいろわたしたち姉妹が迷惑かけてほんっとごめんっ」
深々と頭を下げる北原。
そんなことをされたら怒るに怒れないじゃないか。
いやまあ、怒る気など初めからないのだけれど。
「いいよ。チャット、今してみようか?」
「いいのっ? ありがと、柴木くんっ」
俺の手をぎゅっと握って大きく振る。
北原らしい行動だが、一歩間違えば相手を誤解させてしまうのではないだろうか。
俺は自分というものをわかっているのでそんな誤解は間違ってもしないがな。
などと冷静に自己分析しつつ、俺はスマホを取り出してチャットルームに入った。
俺が文字を打ち込んでいると、
「でも柴木くんも悪いんだよ」
と北原が口を開く。
「ん? 何が?」
「だってわたしもすみれも毎日時間をみつけては、チャットで柴木くんに呼びかけてたんだからね。なのに柴木くんは全然返事くれないんだもんっ」
「あー、そう……だね」
チャットは俺には関係ないものだと思っていたので、チャットルームが開かれた日以降、それに関わることは一度もなかったのだ。
まさか北原姉妹が俺に連絡をとろうとしていただなんて思いもしなかった。
俺は文字を打ち終わり、
「これでいいかな?」
「うん、まあいいんじゃない」
「よし、じゃあ送信っ」
北原すみれに対してメッセージを送ってみた。
俺の送った文章は以下の通り。
《北原すみれへ
今北原と一緒にいるよ。北原から話は聞いた。俺は全然気にしてないからそっちも気にしなくて大丈夫だから。じゃあ気を付けて。柴木善より》
やや冷たい印象を与えそうな文章だと思ったが、これ以上親し気に書くのはためらわれたので適当なところで妥協した。
これを北原すみれがみつけてくれれば万事解決だ、そう思った次の瞬間、北原すみれからの返事が画面上に映った。
《柴木さんへ
本当にすみませんでした。姉を探してほしいと言い出したのは私なのに、柴木さんの知らないところで勝手に姉と話を進めてしまって、本当に申し訳ありません。なんとお詫びをしたらよいか。直接謝りたいので姉のいる場所で少しだけ待っていてはいただけないでしょうか。すぐにそちらに行きますので。どうかよろしくお願いいたします。北原すみれ》
同級生なのに硬い文章。気にしなくていいと言ったのに謝り通し。
どうやら北原すみれも相変わらず、人とコミュニケーションをとるのが上手くはないようだ。
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