上 下
53 / 109

第53話 星空

しおりを挟む
「くらえっ!」
『ブォッ……!』

俺は正面のミノタウロスにボディブローを打ち込む。
その一撃でミノタウロスのお腹に風穴があく。
続けざま俺は、その隣で宙に浮いていたソードフライの首を掴んで強引にへし折った。

さらに、
「まだまだっ」
『グゲェッ……!』
背後にいたゴリラ戦士に裏拳を浴びせ後方の岩壁に吹っ飛ばすと、
「最後はお前だっ!」
俺から距離をとって身構えていたデスナイトに一瞬で近付き、これを粉砕、あっという間に四体とも葬った。

俺が四体のモンスター相手に大立ち回りをしていた間メタムンはというと、少し離れたところにある木の陰から俺の戦う様をじっと見守っていた。

そして、
『やったね、善ーっ!』
モンスターたちが消滅したのを確認してからメタムンが俺のもとへと駆けつける。

『やっぱすごいや善はっ。さすがレベル3000オーバーだねっ』
「お、今の戦闘でレベルがさらに24上がったぞ」
『イェーイ! やったじゃん!』
「これはお前のおかげだな」
『えっへへへ』

メタムンの特性の恩恵により、俺はモンスターを倒した際に通常の2倍の経験値を獲得できるようになっていた。
そのおかげで俺は思っていた以上の早さでレベルアップを成し遂げていた。


*************************************

NAME:シバキ・ゼン

Lv:3818

HP:4001 MP:2734

ATK:3976 DEF:3669

AGI:3617 LUK:2613

SPELL:キュア
       :チャージ
       :リリース
   :アスドム
   :ダークホール
   :ハイランド
   :ウォーク
   :ノストラ

*************************************


☆ ☆ ☆


その夜、俺とメタムンは小高い丘の上で満天の星空を眺めながら横になっていた。
日本にいた時には見られなかった美しい景色に目を奪われながら、俺は両親のことを考える。

今ごろ父さんと母さんはどうしているだろうか、と。
俺を含めた学生、教師たちおよそ五百人が一斉にいなくなったことで、きっと日本中が大騒ぎになっているに違いない。
なんとか島の外にいる誰かと連絡をとれればいいのだが、俺にはその方法はさっぱり思いつかない。
やはりレベルを上げ続けてMPの値を10000にして、瞬間移動呪文のアスドムを使えるようにするしかないのか。

『善、今何考えてるの?』
隣で横になっているメタムンが口を開く。

「ん、俺の親のこととか、もといた場所のこととかかな」
『ふーん……やっぱり帰りたい?』
「うーん、そうだなぁ……」

もちろん帰りたいさ。そのために俺は行動しているのだからな。
とはいえメタムンを日本に連れ帰るわけにはいかない以上、それはすなわちメタムンとの別れを意味する。
メタムンとは会ってまだ三日ほどだが、ここでメタムンの気持ちを無視して帰りたいとはっきり言えるほど俺は無神経ではない。

なので、
「もし帰る時にはメタムンも一緒に来るか? なんてな、はははは」
なんとなく冗談めかした回答でお茶を濁した。
俺は反応が気になって横目で隣をちらりと見てみたが、メタムンは自分から質問してきたくせにすっかり眠りこけていた。

「なんだよ……」

変に気を遣って損した気分だった。


☆ ☆ ☆


一人静かに星空を眺めていると流れ星が視界に入った。
その時ふと俺に、とある疑問がわいて出てきた。

この【魔物島】に来てそろそろ四ヶ月になろうとしている。
その間俺は【魔物島】の全容を知るために歩き続けていた。
もちろん常に歩いていたわけではないが、それでも多い日では一日に二百キロ近く歩いたことだってある。
にもかかわらず未だに【魔物島】を一周できてはいない。
これはさすがにおかしいのではないだろうか。
そんな大きな島が外界から四ヶ月もの間隔離された状態で、誰にも発見されないなんてことがあるのだろうか。

俺は地理に詳しいわけではないし、本来通るべき道を俺が気付かないうちにそれていたという可能性もなくはない。
なくはないが、それにしてもやはりどこか納得がいかない。
なので俺はある一つの考えたくもない仮説にたどり着いてしまっていた。

その仮説とは――俺たちが今いるここは、地球ではないのではないか。というものだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話

紅赤
ファンタジー
ここは、地球とはまた別の世界―― 田舎町の実家で働きもせずニートをしていたタロー。 暢気に暮らしていたタローであったが、ある日両親から家を追い出されてしまう。 仕方なく。本当に仕方なく、当てもなく歩を進めて辿り着いたのは冒険者の集う街<タイタン> 「冒険者って何の仕事だ?」とよくわからないまま、彼はバイトで冒険者を始めることに。 最初は田舎者だと他の冒険者にバカにされるが、気にせずテキトーに依頼を受けるタロー。 しかし、その依頼は難度Aの高ランククエストであることが判明。 ギルドマスターのドラムスは急いで救出チームを編成し、タローを助けに向かおうと―― ――する前に、タローは何事もなく帰ってくるのであった。 しかもその姿は、 血まみれ。 右手には討伐したモンスターの首。 左手にはモンスターのドロップアイテム。 そしてスルメをかじりながら、背中にお爺さんを担いでいた。 「いや、情報量多すぎだろぉがあ゛ぁ!!」 ドラムスの叫びが響く中で、タローの意外な才能が発揮された瞬間だった。 タローの冒険者としての摩訶不思議な人生はこうして幕を開けたのである。 ――これは、バイトで冒険者を始めたら最強だった。という話――

『付与』して『リセット』!ハズレスキルを駆使し、理不尽な世界で成り上がる!

びーぜろ@転移世界のアウトサイダー発売中
ファンタジー
ハズレスキルも組み合わせ次第!?付与とリセットで成り上がる! 孤児として教会に引き取られたサクシュ村の青年・ノアは10歳と15歳を迎える年に2つのスキルを授かった。 授かったスキルの名は『リセット』と『付与』。 どちらもハズレスキルな上、その日の内にステータスを奪われてしまう。 途方に暮れるノア……しかし、二つのハズレスキルには桁外れの可能性が眠っていた! ハズレスキルを授かった青年・ノアの成り上がりスローライフファンタジー! ここに開幕! ※本作はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

ダンジョン菌にまみれた、様々なクエストが提示されるこの現実世界で、【クエスト簡略化】スキルを手にした俺は最強のスレイヤーを目指す

名無し
ファンタジー
 ダンジョン菌が人間や物をダンジョン化させてしまう世界。ワクチンを打てば誰もがスレイヤーになる権利を与えられ、強化用のクエストを受けられるようになる。  しかし、ワクチン接種で稀に発生する、最初から能力の高いエリート種でなければクエストの攻略は難しく、一般人の佐嶋康介はスレイヤーになることを諦めていたが、仕事の帰りにコンビニエンスストアに立ち寄ったことで運命が変わることになる。

ダンジョン世界で俺は無双出来ない。いや、無双しない

鐘成
ファンタジー
世界中にランダムで出現するダンジョン 都心のど真ん中で発生したり空き家が変質してダンジョン化したりする。 今までにない鉱石や金属が存在していて、1番低いランクのダンジョンでさえ平均的なサラリーマンの給料以上 レベルを上げればより危険なダンジョンに挑める。 危険な高ランクダンジョンに挑めばそれ相応の見返りが約束されている。 そんな中両親がいない荒鐘真(あらかねしん)は自身初のレベルあげをする事を決意する。 妹の大学まで通えるお金、妹の夢の為に命懸けでダンジョンに挑むが……

異世界クラス転移した俺氏、陰キャなのに聖剣抜いたった ~なんかヤバそうなので学園一の美少女と国外逃亡します~

みょっつ三世
ファンタジー
――陰キャなのに聖剣抜いちゃった。  高校二年生である明星影人(みょうじょうかげと)は目の前で起きた出来事に対し非常に困惑した。  なにせ異世界にクラス転移した上に真の勇者のみが引き抜けるという聖剣を引き抜いてしまったからだ。どこからどう見ても陰キャなのにだ。おかしいだろ。  普通そういうのは陽キャイケメンの役目じゃないのか。そう考え影人は勇者を辞退しようとするがどうにもそういう雰囲気じゃない。しかもクラスメイト達は不満な視線を向けてくるし、僕らを転移させた王国も何やらキナ臭い。 仕方ないので影人は王国から逃亡を決意することにした。※学園一の美少女付き ん? この聖剣……しゃべるぞ!!※はい。魔剣もしゃべります。

俺だけ展開できる聖域《ワークショップ》~ガチャで手に入れたスキルで美少女達を救う配信がバズってしまい、追放した奴らへざまあして人生大逆転~

椿紅颯
ファンタジー
鍛誠 一心(たんせい いっしん)は、生ける伝説に憧憬の念を抱く駆け出しの鍛冶師である。 探索者となり、同時期に新米探索者になったメンバーとパーティを組んで2カ月が経過したそんなある日、追放宣言を言い放たれてしまった。 このことからショックを受けてしまうも、生活するために受付嬢の幼馴染に相談すると「自らの価値を高めるためにはスキルガチャを回してみるのはどうか」、という提案を受け、更にはそのスキルが希少性のあるものであれば"配信者"として活動するのもいいのではと助言をされた。 自身の戦闘力が低いことからパーティを追放されてしまったことから、一か八かで全て実行に移す。 ガチャを回した結果、【聖域】という性能はそこそこであったが見た目は派手な方のスキルを手に入れる。 しかし、スキルの使い方は自分で模索するしかなかった。 その後、試行錯誤している時にダンジョンで少女達を助けることになるのだが……その少女達は、まさかの配信者であり芸能人であることを後々から知ることに。 まだまだ驚愕的な事実があり、なんとその少女達は自身の配信チャンネルで配信をしていた! そして、その美少女達とパーティを組むことにも! パーティを追放され、戦闘力もほとんどない鍛冶師がひょんなことから有名になり、間接的に元パーティメンバーをざまあしつつ躍進を繰り広げていく! 泥臭く努力もしつつ、実はチート級なスキルを是非ご覧ください!

【完結】投げる男〜異世界転移して石を投げ続けたら最強になってた話〜

心太
ファンタジー
【何故、石を投げてたら賢さと魅力も上がるんだ?!】 (大分前に書いたモノ。どこかのサイトの、何かのコンテストで最終選考まで残ったが、その後、日の目を見る事のなかった話) 雷に打たれた俺は異世界に転移した。 目の前に現れたステータスウインドウ。そこは古風なRPGの世界。その辺に転がっていた石を投げてモンスターを倒すと経験値とお金が貰えました。こんな楽しい世界はない。モンスターを倒しまくってレベル上げ&お金持ち目指します。 ──あれ? 自分のステータスが見えるのは俺だけ? ──ステータスの魅力が上がり過ぎて、神話級のイケメンになってます。 細かい事は気にしない、勇者や魔王にも興味なし。自分の育成ゲームを楽しみます。 俺は今日も伝説の武器、石を投げる!

処理中です...