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第13話 唾

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声のもとへと駆けつけると木々がない開けた場所に出た。
オブジェとでも呼べばよいのか、そこかしこに立派な石像が立っている。

そんなことより、と辺りを見回すが女性の姿はなく、いたのは体長二メートルほどの今まで遭遇したことのない首の長い鳥型のモンスターだけだった。

遅かったか……。
どうやら悲鳴を上げていた女性は俺がたどり着く前に食べられてしまったようだった。

『グェ?』

俺に気付いた鳥型のモンスターは首をかしげつつとぼけた顔を俺に向けてくる。
そんなモンスターを視界にとらえながら俺は思案する。
当初の目的は果たせなくなったわけだが、さてどうしたものか、と。

『グェェ?』

目の前のモンスターは俺に対して敵意がないのか、襲ってこようとはしない。
それどころか、鯉のように口をパクパクさせてまるで俺に何かを語りかけているかのようだ。

『グェ? グェ?』

俺は空腹で今にも倒れそうだし、倒したところで女性が生き返るわけでもない。
敵意がないのであれば今回だけは見逃してやってもいい。
そう思い、俺はきびすを返した。


その判断が間違っていた。


『グェェーッ!!』

俺が背中を見せた途端、鳥型のモンスターは大きな鳴き声を上げた。
それを受けとっさに振り返った俺の鼻先にはアメーバのごとき半透明なものが迫っていた。

「うおっ!」
それが何かはわからなかったが、反射的に俺は体をのけぞらしなんとかやり過ごす。
だがしかし、得体の知れないその何かは俺の前髪にわずかばかり触れていた。

あとになって知ったことだが俺と相対していた鳥型のモンスターの名前はコカトリス。
驚くべきことにそのコカトリスの唾には石化作用があったのだった。

その唾が前髪に付着したことで――
「ぅげっ……!?」
俺の体は前髪から徐々に石化していき、それに対して抵抗するすべを持たない俺は、
「っ……!」
二十秒ほどで全身が動かなくなる。

そしてさらにその十秒後、
「…………」
俺は見事なまでの石像と化していた。
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