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第67話 アテナの服
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「よくお似合いですよお客様」
試着室から出てきたアテナを店員さんが拍手をしながら褒める。
アテナは清楚な花柄のワンピースに身を包みその上に大人っぽいコートを着て、大きめの帽子をかぶっている。
「すごく可愛いです、アテナ様」
ミアが顔を明るくする。
「おお」
と俺も思わず声をもらす。
やっぱり葉っぱで出来た服とは大違いだ。
普通の女の子……いや、かなりの美少女になった。
だがその張本人はというと、着ている服を引っ張って、
「……ちくちくする」
とやや不満げ。
「でしたらこれなどはどうですか?」
店員さんが別の服を勧める。
「……カズン」
アテナが俺を見る。
助けを求めているのかもしれないが無表情なのでそれもわからない。
「俺には女の子の服とかさっぱりだからミア、ここは任せるよ」
そう言って俺は逃げるように店を出た。
女性ものの服屋さんに男がいるのはやはり居心地が悪いからな。
適当に時間を潰すか。
俺は町をぶらついた。
しばらく歩くと鍛冶屋が目に入ってくる。
「あれ……ここって前に来たよな」
たしか不愛想なおじさんが一人で切り盛りしてたはず。
寄ってみるか。
「お邪魔します」
「……邪魔すんなら帰んな」
やっぱり不愛想だ。
「ちょっと剣を見せてもらいます」
鍛冶屋の店主が剣を研いでいる横を通り、俺は店の奥に入っていく。
店の奥には鍛え抜かれた剣がずらっと並んでいた。
その出来栄えは芸術品のようだ。
「きれいだなぁ」
俺は一本の剣を手に取り軽く振ってみた。
手にしっくり馴染む。まるで剣が体の一部になったみたいに。
値札を見ると、
「金貨二枚か……」
結構するな。
いいものが値が張るのは当然か。
悩みどころだな。剣を使う機会なんてそうないだろうし。
まあ使わなかったらカルチェかパネーナにでもやればいいか。
よしっ。
「これください」
俺は金貨二枚を差し出した。
「……」
鍛冶屋の店主は剣を研ぐ手を止め金貨を受け取ると無言でまた手を動かし始めた。
うーん。腕がよくなきゃとっくに潰れてるだろうな、この店は。
そろそろ戻ってもいい頃かなぁ。
俺はミアたちがいる服屋へ歩を進めた。
途中ダンが働いている花屋の前を通り過ぎる。
行列が出来ていたから多分ダンの奴はまだこの町に居座るつもりらしい。
さっさとテスタロッサのいるエスタナへ帰ればいいものを。
俺との再戦を期待しているのか。全く。
服屋に近付くと向こうにミアとアテナの姿が見えた。
買い物が終わって店を出たところのようだ。
「待たせてごめんね」
王子だとバレないようタメ口で話しかけてくるミア。
「アテナ様の服どうかな?」
「いいんじゃないか、かなり」
アテナは緑色のセーターとロングスカートをはいていた。
頭にはとがった耳が隠れるようにこれまた緑色のニット帽をかぶっている。
「アテナ様が緑色がいいって言うから」
とミア。
ずっと着ていた葉っぱで出来た服に雰囲気がちょっと似ている。
「アテナ、それが気に入ったのか?」
「……うん」
アテナは小さい頭を動かした。
「他にもいくつか買ったんだけど全部緑色なの」
「へー」
エルフは緑色が好きなのかな。それともアテナだけがそうなのか。
「全部緑色でいいのかアテナ?」
「……いい」
そう答えるアテナ。
まあ本人がそれでいいなら俺たちがとやかく言うことじゃないが。
「ミア、昼休みは大丈夫か?」
ミアは腕時計を見て、
「うん、今から戻れば間に合うよ」
と返す。
「じゃあ城に帰るか」
「……うん」
「また三人で来ましょうねアテナ様、ユ・ウ・キ・くん」
試着室から出てきたアテナを店員さんが拍手をしながら褒める。
アテナは清楚な花柄のワンピースに身を包みその上に大人っぽいコートを着て、大きめの帽子をかぶっている。
「すごく可愛いです、アテナ様」
ミアが顔を明るくする。
「おお」
と俺も思わず声をもらす。
やっぱり葉っぱで出来た服とは大違いだ。
普通の女の子……いや、かなりの美少女になった。
だがその張本人はというと、着ている服を引っ張って、
「……ちくちくする」
とやや不満げ。
「でしたらこれなどはどうですか?」
店員さんが別の服を勧める。
「……カズン」
アテナが俺を見る。
助けを求めているのかもしれないが無表情なのでそれもわからない。
「俺には女の子の服とかさっぱりだからミア、ここは任せるよ」
そう言って俺は逃げるように店を出た。
女性ものの服屋さんに男がいるのはやはり居心地が悪いからな。
適当に時間を潰すか。
俺は町をぶらついた。
しばらく歩くと鍛冶屋が目に入ってくる。
「あれ……ここって前に来たよな」
たしか不愛想なおじさんが一人で切り盛りしてたはず。
寄ってみるか。
「お邪魔します」
「……邪魔すんなら帰んな」
やっぱり不愛想だ。
「ちょっと剣を見せてもらいます」
鍛冶屋の店主が剣を研いでいる横を通り、俺は店の奥に入っていく。
店の奥には鍛え抜かれた剣がずらっと並んでいた。
その出来栄えは芸術品のようだ。
「きれいだなぁ」
俺は一本の剣を手に取り軽く振ってみた。
手にしっくり馴染む。まるで剣が体の一部になったみたいに。
値札を見ると、
「金貨二枚か……」
結構するな。
いいものが値が張るのは当然か。
悩みどころだな。剣を使う機会なんてそうないだろうし。
まあ使わなかったらカルチェかパネーナにでもやればいいか。
よしっ。
「これください」
俺は金貨二枚を差し出した。
「……」
鍛冶屋の店主は剣を研ぐ手を止め金貨を受け取ると無言でまた手を動かし始めた。
うーん。腕がよくなきゃとっくに潰れてるだろうな、この店は。
そろそろ戻ってもいい頃かなぁ。
俺はミアたちがいる服屋へ歩を進めた。
途中ダンが働いている花屋の前を通り過ぎる。
行列が出来ていたから多分ダンの奴はまだこの町に居座るつもりらしい。
さっさとテスタロッサのいるエスタナへ帰ればいいものを。
俺との再戦を期待しているのか。全く。
服屋に近付くと向こうにミアとアテナの姿が見えた。
買い物が終わって店を出たところのようだ。
「待たせてごめんね」
王子だとバレないようタメ口で話しかけてくるミア。
「アテナ様の服どうかな?」
「いいんじゃないか、かなり」
アテナは緑色のセーターとロングスカートをはいていた。
頭にはとがった耳が隠れるようにこれまた緑色のニット帽をかぶっている。
「アテナ様が緑色がいいって言うから」
とミア。
ずっと着ていた葉っぱで出来た服に雰囲気がちょっと似ている。
「アテナ、それが気に入ったのか?」
「……うん」
アテナは小さい頭を動かした。
「他にもいくつか買ったんだけど全部緑色なの」
「へー」
エルフは緑色が好きなのかな。それともアテナだけがそうなのか。
「全部緑色でいいのかアテナ?」
「……いい」
そう答えるアテナ。
まあ本人がそれでいいなら俺たちがとやかく言うことじゃないが。
「ミア、昼休みは大丈夫か?」
ミアは腕時計を見て、
「うん、今から戻れば間に合うよ」
と返す。
「じゃあ城に帰るか」
「……うん」
「また三人で来ましょうねアテナ様、ユ・ウ・キ・くん」
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