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第28話 恋人はエルメス!?
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俺は自分の部屋の窓から外を眺めた。
「雨か……」
この世界に来て初めての雨だ。
この様子なら畑に水やりする必要はないな。
「カズン様、おはようございます」
朝食を運んできたミアが元気な声で朝の挨拶をしてくる。
「おはよう、ミア。もう大丈夫なのか?」
「はい、おかげさまで。昨日はありがとうございました」
「いや、気にするな」
風邪はもうよくなったようだな。
「今日は雨だから兵士の方々の元気のいい声が聞こえませんね」
「ああ、そうだな」
俺は窓の外を見下ろしながら返事をする。
たしかにいつもなら剣や槍の練習をする声やランニングのかけ声が聞こえてくるのに今はしない。雨音だけだ。
「きっとトレーニングルームか武道場にいるんでしょうね」
武道場か、そういえばまだ行ったことないな。
でも今日は人が沢山いそうだから後にしよう。
最近は筋トレの時間がとれていなかったから今日は一日中筋トレでもするかな。
「筋トレですか? お好きですね。誰かにやり方を教わったんですか?」
「いや誰にも。適当にやってるだけだけど」
「え、それってもったいなくないんですか? この前カルチェ様が筋トレには効果的なやり方があるんだって言ってましたけど」
超回復とかゴールデンタイムとかいうやつかな。よく知らないけど。
「そんな話してるんだ二人で」
「わたしがカズン様が筋トレがご趣味なんですってカルチェ様に話した時にそういう話になりまして……勝手にすみません」
「いや、別に謝ることじゃないけど」
効果的な筋トレの方法かぁ。今更って感じもするけど。
「じゃあ図書室にでも行ってみるかな。それらしい本があるかもしれないし」
「カルチェ様に直接聞けばいいのではないですか?」
「いやあいつは兵士長だから忙しいだろうし、逆に俺は暇だからな」
「そうですか」
俺は朝食を食べ終えると図書室とは名ばかりの古い書庫に足を運んだ。
さびついたドアを開ける。
すると。
「はぁ~」
エルメスが机につっぷして大きなため息をついていた。
「エルメス何してるんだ?」
「はぁ~」
返事がない。俺に気付いていないようだ。
「おい、エルメス」
俺は肩をポンとたたいた。
「へっ!? な、なんだカズン王子じゃないですか。驚かさないでくださいよ」
「どうしたんだ、こんなところでため息なんかついて」
「……別に。あなたには関係ありませんよ。はぁ~」
だったらため息なんてつくなよな。聞いてくれと言っているようなもんだぞ。
「俺ちょっと探し物したいんだけどいいか?」
本に囲まれて足の踏み場もない図書室で陣取られていると正直邪魔だ。
「はぁ~」
「もうなんなんだよ。気になるだろうが。話すなら話せ、話さないならちょっと出ていっててくれ」
「……私今年で二十七になるんですけど」
とエルメスが神妙な顔で話し始めた。
話すんかい。
「親が結婚しろ結婚しろってうるさくて。勝手にお見合いまで決めてきちゃったんですよ」
「へー、それはまた」
面倒くさそうな話だな。
「私まだ結婚するつもりなんてないのに。大体まだ私誰とも……こ、こほん。と、とにかく断りたいんですけど方法が思いつかなくて……」
「方法も何も断ればいいだろ」
「うちの親を知らないからそんなことが言えるんですよ」
頬杖をつきうなだれた様子で俺を見上げるエルメス。
そこで俺と目が合って固まった。
そして大きく目を見開く。
「そうだっ! いいこと思いついたわっ!」
嫌な予感。
「カズン王子、私の恋人になってください!」
恋人だって!?
「い、いきなり何言ってんだお前は」
「もちろん振りですよ、恋人の振り。要はもうすでに心に決めた相手がいるからって理由で断ればいいんですよ」
何言ってんだこいつ。
「そんなの上手くいくわけないだろ。絶対バレるぞ」
「やってみなくちゃわからないでしょうが」
エルメスが机をドンとたたく。
「俺は絶対嫌だからな。これ以上誰かをだますとか俺には荷が勝ちすぎる」
「こんな美人と恋人の振りが出来るんですよ。最高でしょうがっ」
「自分で言うな」
「……バラしますよ。カズン王子が偽物だってこと」
「はぁあ? お前が召喚しておいてそれ言う?」
「ふん、私は本気ですからね」
「お前なぁ」
「……」
それからは何を言ってもなしのつぶてだった。
つーんと涼しげな顔を見せるだけ。
「何か喋れよ」
「……」
そう。ダールトン姉妹は頑固なんだった。
「……俺は何をすればいいんだよ」
「うふふっ。そういう素直なカズン王子好きですよ。ここは狭くて息苦しいんでとりあえず私の部屋に行きましょうか」
「雨か……」
この世界に来て初めての雨だ。
この様子なら畑に水やりする必要はないな。
「カズン様、おはようございます」
朝食を運んできたミアが元気な声で朝の挨拶をしてくる。
「おはよう、ミア。もう大丈夫なのか?」
「はい、おかげさまで。昨日はありがとうございました」
「いや、気にするな」
風邪はもうよくなったようだな。
「今日は雨だから兵士の方々の元気のいい声が聞こえませんね」
「ああ、そうだな」
俺は窓の外を見下ろしながら返事をする。
たしかにいつもなら剣や槍の練習をする声やランニングのかけ声が聞こえてくるのに今はしない。雨音だけだ。
「きっとトレーニングルームか武道場にいるんでしょうね」
武道場か、そういえばまだ行ったことないな。
でも今日は人が沢山いそうだから後にしよう。
最近は筋トレの時間がとれていなかったから今日は一日中筋トレでもするかな。
「筋トレですか? お好きですね。誰かにやり方を教わったんですか?」
「いや誰にも。適当にやってるだけだけど」
「え、それってもったいなくないんですか? この前カルチェ様が筋トレには効果的なやり方があるんだって言ってましたけど」
超回復とかゴールデンタイムとかいうやつかな。よく知らないけど。
「そんな話してるんだ二人で」
「わたしがカズン様が筋トレがご趣味なんですってカルチェ様に話した時にそういう話になりまして……勝手にすみません」
「いや、別に謝ることじゃないけど」
効果的な筋トレの方法かぁ。今更って感じもするけど。
「じゃあ図書室にでも行ってみるかな。それらしい本があるかもしれないし」
「カルチェ様に直接聞けばいいのではないですか?」
「いやあいつは兵士長だから忙しいだろうし、逆に俺は暇だからな」
「そうですか」
俺は朝食を食べ終えると図書室とは名ばかりの古い書庫に足を運んだ。
さびついたドアを開ける。
すると。
「はぁ~」
エルメスが机につっぷして大きなため息をついていた。
「エルメス何してるんだ?」
「はぁ~」
返事がない。俺に気付いていないようだ。
「おい、エルメス」
俺は肩をポンとたたいた。
「へっ!? な、なんだカズン王子じゃないですか。驚かさないでくださいよ」
「どうしたんだ、こんなところでため息なんかついて」
「……別に。あなたには関係ありませんよ。はぁ~」
だったらため息なんてつくなよな。聞いてくれと言っているようなもんだぞ。
「俺ちょっと探し物したいんだけどいいか?」
本に囲まれて足の踏み場もない図書室で陣取られていると正直邪魔だ。
「はぁ~」
「もうなんなんだよ。気になるだろうが。話すなら話せ、話さないならちょっと出ていっててくれ」
「……私今年で二十七になるんですけど」
とエルメスが神妙な顔で話し始めた。
話すんかい。
「親が結婚しろ結婚しろってうるさくて。勝手にお見合いまで決めてきちゃったんですよ」
「へー、それはまた」
面倒くさそうな話だな。
「私まだ結婚するつもりなんてないのに。大体まだ私誰とも……こ、こほん。と、とにかく断りたいんですけど方法が思いつかなくて……」
「方法も何も断ればいいだろ」
「うちの親を知らないからそんなことが言えるんですよ」
頬杖をつきうなだれた様子で俺を見上げるエルメス。
そこで俺と目が合って固まった。
そして大きく目を見開く。
「そうだっ! いいこと思いついたわっ!」
嫌な予感。
「カズン王子、私の恋人になってください!」
恋人だって!?
「い、いきなり何言ってんだお前は」
「もちろん振りですよ、恋人の振り。要はもうすでに心に決めた相手がいるからって理由で断ればいいんですよ」
何言ってんだこいつ。
「そんなの上手くいくわけないだろ。絶対バレるぞ」
「やってみなくちゃわからないでしょうが」
エルメスが机をドンとたたく。
「俺は絶対嫌だからな。これ以上誰かをだますとか俺には荷が勝ちすぎる」
「こんな美人と恋人の振りが出来るんですよ。最高でしょうがっ」
「自分で言うな」
「……バラしますよ。カズン王子が偽物だってこと」
「はぁあ? お前が召喚しておいてそれ言う?」
「ふん、私は本気ですからね」
「お前なぁ」
「……」
それからは何を言ってもなしのつぶてだった。
つーんと涼しげな顔を見せるだけ。
「何か喋れよ」
「……」
そう。ダールトン姉妹は頑固なんだった。
「……俺は何をすればいいんだよ」
「うふふっ。そういう素直なカズン王子好きですよ。ここは狭くて息苦しいんでとりあえず私の部屋に行きましょうか」
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