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第63話 新世界
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「スキル、重力操作っ!」
グルム大総統が口にした途端、僕の体が急激に重くなる。
「ぅおっ!? なんだこれっ……」
「げはははっ! これでもうお前は動けないぞ、なんせお前の周りの重力を最大出力の百倍にしたからなぁっ! さあ、潰れろ潰れろっ!」
勝ち誇った笑みを浮かべるグルム大総統。
だがその笑みは次の瞬間脆くも崩れ去る。
「なんだ本気出してこれか……だったら問題ないよ」
「なっ!? お、お前なんで動けるんだっ……!」
僕は百倍になった重力の中を突き進んでいく。
そして、
「ひ、ひいぃぃっ……!」
逃げ出そうとしていたグルム大総統の首根っこを掴んだ。
「た、助けてくれっ、見逃してくれぇっ……!!」
「あんたは自国民を大量大虐殺した。それを世界評議会は決して捨て置けないそうだ」
「お、お前、世界評議会の回し者かっ……!」
「僕個人としてはあんたに恨みはないけど死んでもらうよ」
「ま、待ってく――ぐげっ……!」
僕は掴んでいた首を一気にねじ曲げるとグルム大総統を絶命させた。
グルム大総統の頭部がだらんと垂れる。
すると、
『終わったようですね。それでは次はスウィッシュ共和国のマラッカ元帥を殺していただけますか』
僕の耳にラウールさんの声が届いてきた。
「はぁ~、人使いが荒いですね」
『マラッカ元帥は自国の若く美しい女性を無理矢理自分の妻とするために、兵士に命令して誘拐を繰り返しています。現在その被害女性の数は数千人に上っています。わたくしたちはそのような状況を良しとしません。クロノ様はどうお感じになりますか?』
少し責めるような口調で訊ねてくるラウールさん。
「わかりましたよ。僕もそういう人間はこの世からいなくなったほうがいいと思います。だからやりますよ」
『ありがとうございます。それではお気をつけて』
ラウールさんがそう言うと通信が一方的に切られた。
「さてと……じゃあ行くか」
僕はグルム大総統を投げ捨てるとスウィッシュ共和国目指して再び歩みを進めるのだった。
☆ ☆ ☆
僕は世界評議会の言いつけ通り世界中の凶悪な独裁者を殺して回っていた。
それによりSランク冒険者のジャック・フラッシュという名前だけが世界中にどんどん知れ渡っていった。
そしていつの間にか世界の独裁者たちからは恐怖の対象としておそれられる一方、虐げられている者たちからは救世主としてあがめられる存在となっていた。
『すでに二十人以上の独裁国家の要人を手にかけている現在、クロノ様つまりジャック・フラッシュは世界にとって必要悪となっています』
とはラウールさんの言葉だ。
僕は期せずして世界一の有名人となってしまっていた。
☆ ☆ ☆
「ぐあああぁぁっ……!」
スウィッシュ共和国のマラッカ元帥の断末魔の叫びを聞きながら、僕はマラッカ元帥の体から腕を引き抜く。
僕の腕から血がぽたぽたと滴り落ちていくがもちろん僕の血ではなくマラッカ元帥のものだ。
「ラウールさん終わりましたよ」
腕についた血を振り払いつつラウールさんに声をかけると、
『ご苦労様でしたクロノ様。それではクロノ様はセンダン村にお戻りになられて結構ですよ』
ラウールさんから思いがけない言葉が返ってきた。
「え、どういうことですか? もう独裁者はすべて始末し終わったんですか?」
『いえ、そうではないのですが、クロノ様つまりジャック・フラッシュにおそれをなした世界中の独裁者たちがここにきて急遽態度をあらため出したのです』
「え? というと……?」
『突然これまでの方針を一変させ国民に対し真摯に向き合う姿勢をとる者や国のリーダーの座から自ら進んで降りる者、中には自分の罪を認めて刑務所に入る者など様々ですが、皆一様にジャック・フラッシュに殺されることをおそれて行動し出したというわけです』
「へー……そうなんですか」
僕の行動が知らず知らずのうちに世界を変えていたということだろうか。
『おかげで世界からは凶悪な独裁者が姿を消しました。一時的なものかもしれませんのでしばらくは様子を見ますが、とりあえずジャック・フラッシュとしての活動はここまでというのが世界評議会の下した決定です』
「はあ、なるほど……わかりました。じゃあ僕はもうセンダン村に帰っていいんですね」
『はい。今まで大変お世話になりました。迎えの馬車を用意してありますのでご自由に使ってください』
ラウールさんとの会話を終えると馬車がタイミングよく僕のもとへとやってきた。
御者の男性が「どうぞ乗ってください」とやけに小さな声で言ってくる。
僕はその男性に軽く会釈をしてからその馬車へと乗り込んだ。
と次の瞬間だった。
ドゴオオォォーン!!
僕が馬車のドアを閉めた直後僕の足元にあった箱が大爆発を起こしたのだった。
馬車の残骸がぱらぱらと空から降ってくる中、逃げおおせていた御者の男性が地面に仰向けになって倒れている僕に向かって言葉を投げかけてくる。
「ふっ、本当にご苦労様でした。あなたの役割はこれにて終了です」
その声には聞き覚えがあった。
僕は爆発の衝撃を受けながらも目をゆっくりと開ける。
「!?」
するとそこにはラウールさんが立っていて、涼しい顔で僕を見下ろしていたのだった。
グルム大総統が口にした途端、僕の体が急激に重くなる。
「ぅおっ!? なんだこれっ……」
「げはははっ! これでもうお前は動けないぞ、なんせお前の周りの重力を最大出力の百倍にしたからなぁっ! さあ、潰れろ潰れろっ!」
勝ち誇った笑みを浮かべるグルム大総統。
だがその笑みは次の瞬間脆くも崩れ去る。
「なんだ本気出してこれか……だったら問題ないよ」
「なっ!? お、お前なんで動けるんだっ……!」
僕は百倍になった重力の中を突き進んでいく。
そして、
「ひ、ひいぃぃっ……!」
逃げ出そうとしていたグルム大総統の首根っこを掴んだ。
「た、助けてくれっ、見逃してくれぇっ……!!」
「あんたは自国民を大量大虐殺した。それを世界評議会は決して捨て置けないそうだ」
「お、お前、世界評議会の回し者かっ……!」
「僕個人としてはあんたに恨みはないけど死んでもらうよ」
「ま、待ってく――ぐげっ……!」
僕は掴んでいた首を一気にねじ曲げるとグルム大総統を絶命させた。
グルム大総統の頭部がだらんと垂れる。
すると、
『終わったようですね。それでは次はスウィッシュ共和国のマラッカ元帥を殺していただけますか』
僕の耳にラウールさんの声が届いてきた。
「はぁ~、人使いが荒いですね」
『マラッカ元帥は自国の若く美しい女性を無理矢理自分の妻とするために、兵士に命令して誘拐を繰り返しています。現在その被害女性の数は数千人に上っています。わたくしたちはそのような状況を良しとしません。クロノ様はどうお感じになりますか?』
少し責めるような口調で訊ねてくるラウールさん。
「わかりましたよ。僕もそういう人間はこの世からいなくなったほうがいいと思います。だからやりますよ」
『ありがとうございます。それではお気をつけて』
ラウールさんがそう言うと通信が一方的に切られた。
「さてと……じゃあ行くか」
僕はグルム大総統を投げ捨てるとスウィッシュ共和国目指して再び歩みを進めるのだった。
☆ ☆ ☆
僕は世界評議会の言いつけ通り世界中の凶悪な独裁者を殺して回っていた。
それによりSランク冒険者のジャック・フラッシュという名前だけが世界中にどんどん知れ渡っていった。
そしていつの間にか世界の独裁者たちからは恐怖の対象としておそれられる一方、虐げられている者たちからは救世主としてあがめられる存在となっていた。
『すでに二十人以上の独裁国家の要人を手にかけている現在、クロノ様つまりジャック・フラッシュは世界にとって必要悪となっています』
とはラウールさんの言葉だ。
僕は期せずして世界一の有名人となってしまっていた。
☆ ☆ ☆
「ぐあああぁぁっ……!」
スウィッシュ共和国のマラッカ元帥の断末魔の叫びを聞きながら、僕はマラッカ元帥の体から腕を引き抜く。
僕の腕から血がぽたぽたと滴り落ちていくがもちろん僕の血ではなくマラッカ元帥のものだ。
「ラウールさん終わりましたよ」
腕についた血を振り払いつつラウールさんに声をかけると、
『ご苦労様でしたクロノ様。それではクロノ様はセンダン村にお戻りになられて結構ですよ』
ラウールさんから思いがけない言葉が返ってきた。
「え、どういうことですか? もう独裁者はすべて始末し終わったんですか?」
『いえ、そうではないのですが、クロノ様つまりジャック・フラッシュにおそれをなした世界中の独裁者たちがここにきて急遽態度をあらため出したのです』
「え? というと……?」
『突然これまでの方針を一変させ国民に対し真摯に向き合う姿勢をとる者や国のリーダーの座から自ら進んで降りる者、中には自分の罪を認めて刑務所に入る者など様々ですが、皆一様にジャック・フラッシュに殺されることをおそれて行動し出したというわけです』
「へー……そうなんですか」
僕の行動が知らず知らずのうちに世界を変えていたということだろうか。
『おかげで世界からは凶悪な独裁者が姿を消しました。一時的なものかもしれませんのでしばらくは様子を見ますが、とりあえずジャック・フラッシュとしての活動はここまでというのが世界評議会の下した決定です』
「はあ、なるほど……わかりました。じゃあ僕はもうセンダン村に帰っていいんですね」
『はい。今まで大変お世話になりました。迎えの馬車を用意してありますのでご自由に使ってください』
ラウールさんとの会話を終えると馬車がタイミングよく僕のもとへとやってきた。
御者の男性が「どうぞ乗ってください」とやけに小さな声で言ってくる。
僕はその男性に軽く会釈をしてからその馬車へと乗り込んだ。
と次の瞬間だった。
ドゴオオォォーン!!
僕が馬車のドアを閉めた直後僕の足元にあった箱が大爆発を起こしたのだった。
馬車の残骸がぱらぱらと空から降ってくる中、逃げおおせていた御者の男性が地面に仰向けになって倒れている僕に向かって言葉を投げかけてくる。
「ふっ、本当にご苦労様でした。あなたの役割はこれにて終了です」
その声には聞き覚えがあった。
僕は爆発の衝撃を受けながらも目をゆっくりと開ける。
「!?」
するとそこにはラウールさんが立っていて、涼しい顔で僕を見下ろしていたのだった。
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