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第52話 Sランクパーティー

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「こほっ、こほっ……まさか自爆するとはな」

土煙が舞う中、僕は体中砂とすすだらけになりながらもほとんどダメージを受けてはいなかった。
指先から多少血は出ているものの、命をかけた【自爆】攻撃をこの程度の傷で受けきることが出来たのなら上出来か。
僕は自分のライフポイントを押すと自然治癒力を高め治療する。

兵士の自爆も多分ルチ将軍の発案だろう。
僕が誘いを蹴った時は自爆するよう命令されていたに違いない。
今思い返すと自爆した兵士はかなり緊張していた。

「くそ、ルチ将軍……やっぱりあんただけは殺しておかないとな」


☆ ☆ ☆


交渉が決裂したことを知ってか知らずか、僕のもとへは今まで以上にサリルロンド大帝国の兵士たちがやってきていた。
ムーンバルト王国の兵士たちとは対照的にサリルロンド大帝国の兵士たちはみな勇猛果敢に僕に挑んでくる。
ルチ将軍の命令は絶対なようで中には爆弾を体中に巻き付けながら向かってくる者もいた。
僕はそんな兵士たちを躊躇せず皆殺しにしていった。
殺す覚悟が出来ているのならば殺される覚悟も持っていて当然という持論を盾にして、僕は兵士たちに家族がいようが命令で動いていようがお構いなしに命を奪い続ける。
……どうでもいいことだが僕は寿命を終えたら間違いなく地獄に落ちるだろうな。

サリルロンド大帝国の領土内に侵入してから五日、僕はすでに数えきれないだけの兵士の息の根を止めていた。
寝る間だけはさすがに無防備になるので僕は森の中で身を隠すようにして仮眠をとった。

一方サリルロンド大帝国の国民はというと、僕が兵士以外には手を出さないという話が行き渡ったらしく、時折り「ルチ将軍を殺してくれ」と小声でささやいてくる者もいた。
小さな村ではそれがさらに顕著で、ルチ将軍の恐怖政治によってまるで奴隷のような扱いを受けていた村人たちからは水や食糧、寝床を提供してもらうこともしばしばだった。
僕は知らなかったがサリルロンド大帝国は貧富の差が非常に激しい国だということが中に入ってみて初めて分かった。


☆ ☆ ☆


一週間が経過して、僕がこれまでに仕入れた情報によるとルチ将軍は今いる場所からさほど離れていないゲルググの町というところに僕を捕まえに出向いているということだった。
その情報の真偽のほどは定かではないが、それでも僕はそのゲルググの町とやらに向かうことを決めた。

その道中、珍しく兵士ではなく冒険者たちが僕の行く手に立ちふさがった。
勝手に自己紹介を始めたので聞いてみると彼らはSランクパーティーの冒険者たちだということだった。

「僕の捕獲依頼を受けてきたのか?」
「ああそうさ。お前は今世界一有名なFランク冒険者だからな」
「今やお前の首には金貨七百枚の値がついてるんだぜ。知ってたか?」
「あなたの生死は問わないっていう話だからね、抵抗するなら死んでもらうわよっ」
三人の冒険者たちは僕を囲むように三角形に広がる。

「スキル、氷結っ」
レベッカと名乗った女の冒険者が僕に向かって手を差し伸ばすと口にした。
その途端、僕の足元の地面が凍りつきその氷が徐々に僕の足を伝っていく。

「ふふん、あなたはもうこれでお終いよ」
「なんだ、意外とあっけなかったな」
僕の足が凍りついていくのを見て冒険者たちが言葉を交わす。

「さあ、降参する? じゃないと全身氷漬けになってほんとに死んじゃうんだからね」
レベッカの言う通りもう僕の胸の辺りまで氷が迫ってきていた。
かなり冷たくて寒い。

でも、
「いや、降参はしないよ」
「あなたほんとに死ぬわよっ」
「多分大丈夫」
言うと僕は足に力を込めて持ち上げてみる。
すると僕の足を覆っていた氷が簡単に砕け散った。

「「「っ!?」」」

「ほら、問題ない」
度肝を抜かれている冒険者三人に声をかける。

「もしかしてこれがあんたたちの本気?」

「お、おいお前手加減したのかっ?」
「そ、そんなわけないでしょっ」
「だったらなんであんな簡単に――」
「今度は僕から行くよ」
僕はそう言ってからヘンリーという名の男の冒険者に向かって駆け出した。

「消えたっ!?」

僕はあくまでも高速で移動しただけだが冒険者たちからしたら消えたように見えたらしい。

「う、上かっ?」
「残念、後ろだよ」
空を見上げるヘンリーの背後に回った僕は彼の顔と後頭部を掴むと勢いよく左右に回した。
ゴギィッという音がして首が三百六十回転する。

「ヘンリーっ!?」
「ヘンリーっ!」
倒れた仲間を見て声を上げる冒険者たち。

「このっ……スキル、火炎砲っ!」
もう一人の男の冒険者であるクーガーが両手を前に出し両手で作った輪から炎の玉を発射した。
炎の玉は大気に触れ大きくなりながら僕めがけて飛んでくる。

「死にさらせっ!」

僕は瞬時にレベッカの背後に移動すると彼女を炎の玉に向かって突き飛ばした。
人間大にまで大きくなっていた炎の玉にレベッカが飲み込まれる。

「きゃああぁっ……!!」
「レベッカっ!」

炎に焼かれて黒焦げになったレベッカの死体と首の骨が折れたヘンリーの死体が地面に横たわる中、
「あとはあんた一人だけだけどまだやるの?」
僕は一応訊いてみた。

「く、くそっ! 仲間がやられたってのにおめおめ逃げるわけねぇだろうがっ!」
クーガーが僕をにらみつけ大声でほえる。
そして腰に差していた大剣を抜くと僕に飛びかかってきた。

「くらえぇっ!!」
両手で持ったその大剣を力任せに振り下ろすクーガー。
だが僕はそれを片手で受け止めるともう片方の手でクーガーの胸を殴りつけた。
その強い衝撃が心臓に伝わったのか「がふっ……!?」と声をもらすとクーガーは膝から地面に崩れ落ちるようにして倒れる。

「死んだかな?」
僕は手を伸ばし彼の胸に触れて確認する。

「うん。死んでるね」

――クーガーの心臓の鼓動は完全に停止していた。
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