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第48話 あれから……
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レオナルドへの復讐を終えた僕は、エレナとルーブルのお墓があるセンダン村に戻っていた。
センダン村は山の奥深くにある村なのでここなら僕がお尋ね者だという噂も一切届かない。
村人たちはみんな優しくよそから来た僕に対しても好意的に接してくれるのでとても住み心地がいい。
自給自足の生活も僕には向いていたようで毎日が充実していた。
センダン村ではほとんどお金を使う機会はないので、ムーンバルト城の格闘大会で手に入れた百五十枚の金貨はいまだに手付かずで保管してある。
僕がこの村に本格的に住み始める際、引っ越しの挨拶がてら何も配る物がないので金貨を一枚ずつ村人たちに渡そうとしたところ、とんでもなく叱られた。
「同じ村に住むんならおらたちはもう家族みてぇなもんだろがっ。家族に金なんか渡すか? いいかクロノ、二度と馬鹿なこと考えんじゃねぇぞっ」
村長が僕に放った言葉だ。村長は僕のことを先生ではなくクロノと呼ぶ数少ない村人の一人だった。
僕は今までの人生の中で怒られたことは数え切れないほどあったが、叱られたことはこれが初めてだった。
村長の温かい気持ちに触れて僕は嬉しさのあまり、説教中なのに村長の前でにやけてしまったことを今でも覚えている。
村には僕を入れてちょうど百人が生活している。
お年寄りの割合がやや高いが中には産まれたばかりの赤ん坊もいる。
村長曰はく全員が僕の家族なのだそうだ。
☆ ☆ ☆
センダン村にやってきてから二週間がたった頃、僕はクララさんと村の奥地に自生しているココナツ草という栄養豊富な食用の草を採りに山の中に分け入っていた。
村の外にはゴブリンが出る危険性があるので僕がクララさんの護衛役を任されたのだ。
クララさんはジムさんという優しい旦那さんとレイラという可愛らしい赤ん坊とともに僕の隣の家で暮らしている女性で、いつも明るく笑顔を絶やさない太陽みたいな人だった。
今日も今日とて、昨日の晩家であったことを楽しげに僕に話しながら、獣道のような草木が生い茂った場所を先頭切って歩いていく。
「クララさん、あんまり僕から離れないでくださいね。っていうか僕が前を歩いた方がいいんじゃないですか? ゴブリンが出たら危ないですよ」
「大丈夫よ、わたしこう見えてジムなんかよりもずっと強いんだからっ。クロノくんが村に来る前はわたしが護衛役を買って出ていたくらいなのよっ」
クララさんが振り返り右腕の力こぶを見せてくる。
「それなのにジムったら心配性なのよ。そういえばこの前だってジムはわたしが一人で出来るって言ったのに……」
僕はクララさんの愚痴を聞きつつ、クララさんのあとをついていった。
☆ ☆ ☆
「ふぅ~……これくらい採れば充分かしらね」
クララさんが額の汗をタオルで拭うと僕に顔を向ける。
僕とクララさんが持ってきていたカゴの中にはココナツ草がこれでもかというくらい沢山入っていた。
「そうですね。どちらかと言うとちょっと採り過ぎたくらいですかね」
「そうね、話に夢中になってて採り過ぎちゃったわね。ふふっ、まあいいわ。じゃあそろそろ村に戻りましょうか」
「はい」
僕たちはココナツ草がいっぱいに詰まったカゴを背負いもと来た道を戻ろうとする。
とその時だった。
「あれ、何かしら?」
クララさんが空を見上げ口にした。
僕はそれを受けて顔を上げる。
「ん……?」
遠くの空にきらりと光る何かが見えた。
それが少しずつ大きくなっていくにつれてゴオオオオ……という音も聞こえてくる。
なんだ……?
僕とクララさんは目を凝らしてそれをみつめる。
すると次の瞬間飛行している物体が確認できた。
「っ!? ミ、ミサイルだっ!!」
僕は思わず叫ぶ。
「えっ、ミサイルってどういうことっ!?」
「そんなことより早く逃げないとっ」
「でもあれ村の方に落ちていくわっ!」
クララさんが僕の手を振り払うと村へと向かおうとする。
とその直後――ミサイルが村のある方角に落下した。
信じられないほどの爆音とともに地面が大きく揺れる。
「きゃあっ!」
「クララさんっ」
僕は倒れそうになるクララさんの肩を抱きかかえ支えた。
時間にして五秒ほどそうしていてから地響きが止むと今度は紫色の煙が村の方から立ち上っていく。
それを見てクララさんが、
「レイラっ! ジムっ!」
必死の形相で駆け出していく。
僕もすかさずそのあとを追った。
センダン村は山の奥深くにある村なのでここなら僕がお尋ね者だという噂も一切届かない。
村人たちはみんな優しくよそから来た僕に対しても好意的に接してくれるのでとても住み心地がいい。
自給自足の生活も僕には向いていたようで毎日が充実していた。
センダン村ではほとんどお金を使う機会はないので、ムーンバルト城の格闘大会で手に入れた百五十枚の金貨はいまだに手付かずで保管してある。
僕がこの村に本格的に住み始める際、引っ越しの挨拶がてら何も配る物がないので金貨を一枚ずつ村人たちに渡そうとしたところ、とんでもなく叱られた。
「同じ村に住むんならおらたちはもう家族みてぇなもんだろがっ。家族に金なんか渡すか? いいかクロノ、二度と馬鹿なこと考えんじゃねぇぞっ」
村長が僕に放った言葉だ。村長は僕のことを先生ではなくクロノと呼ぶ数少ない村人の一人だった。
僕は今までの人生の中で怒られたことは数え切れないほどあったが、叱られたことはこれが初めてだった。
村長の温かい気持ちに触れて僕は嬉しさのあまり、説教中なのに村長の前でにやけてしまったことを今でも覚えている。
村には僕を入れてちょうど百人が生活している。
お年寄りの割合がやや高いが中には産まれたばかりの赤ん坊もいる。
村長曰はく全員が僕の家族なのだそうだ。
☆ ☆ ☆
センダン村にやってきてから二週間がたった頃、僕はクララさんと村の奥地に自生しているココナツ草という栄養豊富な食用の草を採りに山の中に分け入っていた。
村の外にはゴブリンが出る危険性があるので僕がクララさんの護衛役を任されたのだ。
クララさんはジムさんという優しい旦那さんとレイラという可愛らしい赤ん坊とともに僕の隣の家で暮らしている女性で、いつも明るく笑顔を絶やさない太陽みたいな人だった。
今日も今日とて、昨日の晩家であったことを楽しげに僕に話しながら、獣道のような草木が生い茂った場所を先頭切って歩いていく。
「クララさん、あんまり僕から離れないでくださいね。っていうか僕が前を歩いた方がいいんじゃないですか? ゴブリンが出たら危ないですよ」
「大丈夫よ、わたしこう見えてジムなんかよりもずっと強いんだからっ。クロノくんが村に来る前はわたしが護衛役を買って出ていたくらいなのよっ」
クララさんが振り返り右腕の力こぶを見せてくる。
「それなのにジムったら心配性なのよ。そういえばこの前だってジムはわたしが一人で出来るって言ったのに……」
僕はクララさんの愚痴を聞きつつ、クララさんのあとをついていった。
☆ ☆ ☆
「ふぅ~……これくらい採れば充分かしらね」
クララさんが額の汗をタオルで拭うと僕に顔を向ける。
僕とクララさんが持ってきていたカゴの中にはココナツ草がこれでもかというくらい沢山入っていた。
「そうですね。どちらかと言うとちょっと採り過ぎたくらいですかね」
「そうね、話に夢中になってて採り過ぎちゃったわね。ふふっ、まあいいわ。じゃあそろそろ村に戻りましょうか」
「はい」
僕たちはココナツ草がいっぱいに詰まったカゴを背負いもと来た道を戻ろうとする。
とその時だった。
「あれ、何かしら?」
クララさんが空を見上げ口にした。
僕はそれを受けて顔を上げる。
「ん……?」
遠くの空にきらりと光る何かが見えた。
それが少しずつ大きくなっていくにつれてゴオオオオ……という音も聞こえてくる。
なんだ……?
僕とクララさんは目を凝らしてそれをみつめる。
すると次の瞬間飛行している物体が確認できた。
「っ!? ミ、ミサイルだっ!!」
僕は思わず叫ぶ。
「えっ、ミサイルってどういうことっ!?」
「そんなことより早く逃げないとっ」
「でもあれ村の方に落ちていくわっ!」
クララさんが僕の手を振り払うと村へと向かおうとする。
とその直後――ミサイルが村のある方角に落下した。
信じられないほどの爆音とともに地面が大きく揺れる。
「きゃあっ!」
「クララさんっ」
僕は倒れそうになるクララさんの肩を抱きかかえ支えた。
時間にして五秒ほどそうしていてから地響きが止むと今度は紫色の煙が村の方から立ち上っていく。
それを見てクララさんが、
「レイラっ! ジムっ!」
必死の形相で駆け出していく。
僕もすかさずそのあとを追った。
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