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第31話 サンドバッグ
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「ちょっと、話が違うじゃんっ! 助けてくれるって約束したでしょっ!」
ここはセンダン村からさらに山奥に入った人気のまったくない場所。
僕は気絶したイアンナの手足を縄できつく縛ってからここまで運んできていた。
「助けるとは言ってないよ。僕は殺さないって言っただけだ」
「な、何よそれっ!? ふざけてんのっ!」
地面から頭だけ出した状態のイアンナが大声を上げる。
イアンナの体は地中に埋まっていてその上縄で縛られているので身動き一つとれない。
……まあ、もちろんすべて僕がイアンナの気絶中にやったことなのだが。
「イアンナ。実はまだきみに言っていなかったことがあるんだ……僕はね、僕がされたことにも怒っているけど、それよりももっと怒っていることがあるんだよ」
「え、な、何言ってんのよっ……?」
「イアンナ、きみはルーブルって女性の奴隷を殺したそうだね。しかも自分より美人だからっていう理由だけで」
「だ、だったらなんなわけっ……別に奴隷が一人死んだくらいどうでもいいじゃないっ! そんなことより早くここから出しなさいよっ!」
「イアンナ、その奴隷は僕の親友だったんだよ」
「っ……!」
イアンナは顔から血の気が引いていき、一気に顔面蒼白になる。
「さっき村の人に聞いたんだけどこの辺りは夜になるとゴブリンがわんさか出るらしいね。普段のイアンナだったらゴブリンくらいなんともないんだろうけど、今の状態だとゴブリン相手でもヤバいんじゃない?」
「あ、あんたまさか、あたしをこのままにしていくつもりじゃないでしょうねっ……!」
「イアンナのスキルの超回復があれば死ぬことはないかもしれないけど、その分苦痛が永遠に続くことになるだろうね」
「ちょっ、あたしの話聞きなさいよクロノっ! 早くここから出しなさいよっ!」
「もう日が傾いてきたよ。ゴブリンが集まってくるのも時間の問題かな」
「ちょっと、やめてってば! 助けてクロノっ、クロノっ! お願いクロノっ!」
声を大にしてわめくイアンナ。
だがここはセンダン村から遠く離れていてどんなに大声を出しても誰にも届かない。
「じゃあ僕は行くから」
「やだっ、行かないでクロノっ! お願いだから助けてぇっ!」
「せいぜい頑張って」
「ま、待ってったら……! 行かないでよっ……!」
とそこにゴブリンの群れが現れた。
ゴブリンたちは初めこそ僕を狙ってきたが一撃で先頭にいたゴブリンの頭を粉砕してやると、残りのゴブリンたちは僕におそれをなして身動きの出来ないイアンナに向かっていった。
そこから先は悲惨だった。
ゴブリンたちは地面から頭だけ出たイアンナを取り囲むと殴る蹴るの暴行を一方的に加えた。
イアンナはすぐさま【超回復】で傷を治すが、そんなことお構いなくゴブリンたちは攻撃を与え続ける。
ゴブリンの攻撃力がなまじ低い分イアンナは致命傷を負うことなく、気を失うこともなく、これを回復していった。
殴られては回復。蹴られては回復。
イアンナからしてみれば終わりのない拷問が延々と続く。
イアンナが泣き叫ぼうがゴブリンたちは攻撃の手を緩めない。
「イアンナ、どこかで諦めるしかないよ。じゃないと一生サンドバッグのままだよ」
「だ、だずげでっ……!!」
僕はそんなイアンナを無視してエレナの待つセンダン村へときびすを返した。
僕の耳にはイアンナの悲痛な叫び声がいつまでも聞こえていた。
ここはセンダン村からさらに山奥に入った人気のまったくない場所。
僕は気絶したイアンナの手足を縄できつく縛ってからここまで運んできていた。
「助けるとは言ってないよ。僕は殺さないって言っただけだ」
「な、何よそれっ!? ふざけてんのっ!」
地面から頭だけ出した状態のイアンナが大声を上げる。
イアンナの体は地中に埋まっていてその上縄で縛られているので身動き一つとれない。
……まあ、もちろんすべて僕がイアンナの気絶中にやったことなのだが。
「イアンナ。実はまだきみに言っていなかったことがあるんだ……僕はね、僕がされたことにも怒っているけど、それよりももっと怒っていることがあるんだよ」
「え、な、何言ってんのよっ……?」
「イアンナ、きみはルーブルって女性の奴隷を殺したそうだね。しかも自分より美人だからっていう理由だけで」
「だ、だったらなんなわけっ……別に奴隷が一人死んだくらいどうでもいいじゃないっ! そんなことより早くここから出しなさいよっ!」
「イアンナ、その奴隷は僕の親友だったんだよ」
「っ……!」
イアンナは顔から血の気が引いていき、一気に顔面蒼白になる。
「さっき村の人に聞いたんだけどこの辺りは夜になるとゴブリンがわんさか出るらしいね。普段のイアンナだったらゴブリンくらいなんともないんだろうけど、今の状態だとゴブリン相手でもヤバいんじゃない?」
「あ、あんたまさか、あたしをこのままにしていくつもりじゃないでしょうねっ……!」
「イアンナのスキルの超回復があれば死ぬことはないかもしれないけど、その分苦痛が永遠に続くことになるだろうね」
「ちょっ、あたしの話聞きなさいよクロノっ! 早くここから出しなさいよっ!」
「もう日が傾いてきたよ。ゴブリンが集まってくるのも時間の問題かな」
「ちょっと、やめてってば! 助けてクロノっ、クロノっ! お願いクロノっ!」
声を大にしてわめくイアンナ。
だがここはセンダン村から遠く離れていてどんなに大声を出しても誰にも届かない。
「じゃあ僕は行くから」
「やだっ、行かないでクロノっ! お願いだから助けてぇっ!」
「せいぜい頑張って」
「ま、待ってったら……! 行かないでよっ……!」
とそこにゴブリンの群れが現れた。
ゴブリンたちは初めこそ僕を狙ってきたが一撃で先頭にいたゴブリンの頭を粉砕してやると、残りのゴブリンたちは僕におそれをなして身動きの出来ないイアンナに向かっていった。
そこから先は悲惨だった。
ゴブリンたちは地面から頭だけ出たイアンナを取り囲むと殴る蹴るの暴行を一方的に加えた。
イアンナはすぐさま【超回復】で傷を治すが、そんなことお構いなくゴブリンたちは攻撃を与え続ける。
ゴブリンの攻撃力がなまじ低い分イアンナは致命傷を負うことなく、気を失うこともなく、これを回復していった。
殴られては回復。蹴られては回復。
イアンナからしてみれば終わりのない拷問が延々と続く。
イアンナが泣き叫ぼうがゴブリンたちは攻撃の手を緩めない。
「イアンナ、どこかで諦めるしかないよ。じゃないと一生サンドバッグのままだよ」
「だ、だずげでっ……!!」
僕はそんなイアンナを無視してエレナの待つセンダン村へときびすを返した。
僕の耳にはイアンナの悲痛な叫び声がいつまでも聞こえていた。
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