2 / 67
第2話 追放
しおりを挟む
「な、なんだよ。あらたまって……」
レオナルドはこんな時に何の話をするつもりなのだろう。
鋭い眼差しを僕に向けているレオナルドを見返しつつ、
「何? 大事な話って……?」
と僕は訊ねた。
不穏な空気が辺りを包む。
ほかのメンバーたちがなぜかニヤニヤしていて居心地が悪い。
「クロノ」
次の瞬間レオナルドが驚くべきことを口にした。
「今、この時を持って……お前との主従契約を解除する」
「えっ……?」
レオナルドがそう言うと僕の右手首にあった紋章が光を放ち、消えていく。
「な、なんで……?」
さらにレオナルドは続けた。
「それだけじゃない。クロノ、今、この時を持って……お前をオレのパーティーから追放する」
「え……」
……ど、どういうこと……?
僕は何も言葉が返せず固まった。
そんな僕に追い打ちをかけるようにアズライルが僕を突き飛ばした。
その衝撃でよろけた拍子に僕は尻もちをついてしまう。
「わからないのか? お前は用済みだって言ってんだよ」
「な……ど、どうして……?」
「馬鹿なのあんたっ。だから奴隷ってのは学がなくて嫌ね」
マーガレットが侮蔑するような目で僕を見下ろしてきた。
イアンナも口を開く。
「あなたの帰還石はあたしたちが高値で売ってあげるから心配しないでねっ」
「っ……」
な、なんだよこれ……。
一体何が起きてるんだよ……。
僕はみんなの言葉を受け止めきれずにいた。
「……」
黙り込む僕にらちが明かないとでも思ったのか、レオナルドはさらに言葉を重ねる。
「お前はFランクの冒険者だ。こと戦闘においてはお荷物以外の何ものでもない。そんな奴をこれ以上オレのパーティーに入れとくわけにはいかねぇんだ」
「で、でもっ……隠しトラップにひっかからないように僕はいつも気を張っていたし、隠しアイテムだって探し当ててきたよ……き、帰還石だってそもそも僕がみつけたものじゃないかっ……」
「あー、うざっ。それくらいで役に立ったつもりなのっ? もうこんな奴ほっといて帰ろみんな」
路傍の石ころでも見るかのようにイアンナは言った。
「そうだな。またモンスターの群れがいつ襲ってくるかわからんしな」
「長居は無用ね」
アズライルとマーガレットが口をそろえる。
「レ、レオナルド……ほ、本気なの……?」
「ああ。お前の命を助けるために帰還石を使うなんてもったいねぇ」
ぼ、僕は仲間じゃなかったのか……?
「だ、だったら、なんで僕を買ったんだっ。奴隷商人から解放してくれたのはなんだったんだよっ……!」
「あー、あれか」
レオナルドは面倒くさそうに頭を掻きながら、
「オレたちはみんな王族だろ、だから必要以上に世間から注目されちまってな。オレたちのことをよく思わねぇ奴らもいたんだわ。別にそんな奴ら無視すりゃいいんだけどよ」
「王族としては一応体面も気にしないとだしねー」
イアンナが割って入った。
「まあ、慈善活動みたいな? 奴隷を仲間にすれば好感度爆上がりっしょ」
「正確には偽善活動だがな、がっはっは」
「何それ、ウケるー」
イアンナとアズライルが嘲り笑う。
「ってわけだからあんたの帰還石さっさと渡して」
マーガレットが手を伸ばしてきて、催促するようにちょいちょいと指を動かした。
「い、嫌だって言ったら……?」
「「「「殺す」」」」
四人全員の総意だった。
結局僕は仲間でもなんでもなかったのだ。
僕だけが一人で勝手に舞い上がっていたに過ぎなかった。
絶望感から僕は自分でも驚くほどあっさりと帰還石を差し出した。
それを受け取ったマーガレットがレオナルドに手渡す。
「よっしゃ、これで充分元は取れたな」
どういう意味だろうと考え、ああそうか、僕を奴隷として買った時の代金のことかと納得する。
「んじゃ、マーガレット。そいつもう殺していいぞ」
「了解」
レオナルドがマーガレットに向けてあごをしゃくった。
僕は一瞬、レオナルドが何を言ったのかわからなかった。
が次の瞬間、マーガレットが僕を指差したことで僕は理解した。
「降魔雷っ!」
「っ……!?」
防ぐことも逃げることも出来ず、マーガレットの指先から放たれた雷撃が僕の体を貫いていった。
仰向けに倒れる僕。
かすれた目には天井の岩肌がぼやけて見える。
薄れゆく意識の中、かろうじてレオナルドの声が聞こえてきた。
「クロノ、万が一もねぇと思うけどよ、もしお前が生きて地上に戻ってきたら面倒だからな。オレたちのためにやっぱここで死んでくれ」
「レオナルド、鬼畜ー」
「それでこそおれたちのリーダーだぜっ。がっはっは」
「奴隷らしくみじめに死んでいきなさい」
ひとしきりみんなで僕を笑ったあと帰還石を使用したのだろう、青い光が僕の足元の方でまばゆく輝いた。
そしてその直後、四人の気配は完全になくなった。
――こうして僕は一人SSSランクダンジョン、無限の大迷宮に取り残され、死を待つのみとなった。
レオナルドはこんな時に何の話をするつもりなのだろう。
鋭い眼差しを僕に向けているレオナルドを見返しつつ、
「何? 大事な話って……?」
と僕は訊ねた。
不穏な空気が辺りを包む。
ほかのメンバーたちがなぜかニヤニヤしていて居心地が悪い。
「クロノ」
次の瞬間レオナルドが驚くべきことを口にした。
「今、この時を持って……お前との主従契約を解除する」
「えっ……?」
レオナルドがそう言うと僕の右手首にあった紋章が光を放ち、消えていく。
「な、なんで……?」
さらにレオナルドは続けた。
「それだけじゃない。クロノ、今、この時を持って……お前をオレのパーティーから追放する」
「え……」
……ど、どういうこと……?
僕は何も言葉が返せず固まった。
そんな僕に追い打ちをかけるようにアズライルが僕を突き飛ばした。
その衝撃でよろけた拍子に僕は尻もちをついてしまう。
「わからないのか? お前は用済みだって言ってんだよ」
「な……ど、どうして……?」
「馬鹿なのあんたっ。だから奴隷ってのは学がなくて嫌ね」
マーガレットが侮蔑するような目で僕を見下ろしてきた。
イアンナも口を開く。
「あなたの帰還石はあたしたちが高値で売ってあげるから心配しないでねっ」
「っ……」
な、なんだよこれ……。
一体何が起きてるんだよ……。
僕はみんなの言葉を受け止めきれずにいた。
「……」
黙り込む僕にらちが明かないとでも思ったのか、レオナルドはさらに言葉を重ねる。
「お前はFランクの冒険者だ。こと戦闘においてはお荷物以外の何ものでもない。そんな奴をこれ以上オレのパーティーに入れとくわけにはいかねぇんだ」
「で、でもっ……隠しトラップにひっかからないように僕はいつも気を張っていたし、隠しアイテムだって探し当ててきたよ……き、帰還石だってそもそも僕がみつけたものじゃないかっ……」
「あー、うざっ。それくらいで役に立ったつもりなのっ? もうこんな奴ほっといて帰ろみんな」
路傍の石ころでも見るかのようにイアンナは言った。
「そうだな。またモンスターの群れがいつ襲ってくるかわからんしな」
「長居は無用ね」
アズライルとマーガレットが口をそろえる。
「レ、レオナルド……ほ、本気なの……?」
「ああ。お前の命を助けるために帰還石を使うなんてもったいねぇ」
ぼ、僕は仲間じゃなかったのか……?
「だ、だったら、なんで僕を買ったんだっ。奴隷商人から解放してくれたのはなんだったんだよっ……!」
「あー、あれか」
レオナルドは面倒くさそうに頭を掻きながら、
「オレたちはみんな王族だろ、だから必要以上に世間から注目されちまってな。オレたちのことをよく思わねぇ奴らもいたんだわ。別にそんな奴ら無視すりゃいいんだけどよ」
「王族としては一応体面も気にしないとだしねー」
イアンナが割って入った。
「まあ、慈善活動みたいな? 奴隷を仲間にすれば好感度爆上がりっしょ」
「正確には偽善活動だがな、がっはっは」
「何それ、ウケるー」
イアンナとアズライルが嘲り笑う。
「ってわけだからあんたの帰還石さっさと渡して」
マーガレットが手を伸ばしてきて、催促するようにちょいちょいと指を動かした。
「い、嫌だって言ったら……?」
「「「「殺す」」」」
四人全員の総意だった。
結局僕は仲間でもなんでもなかったのだ。
僕だけが一人で勝手に舞い上がっていたに過ぎなかった。
絶望感から僕は自分でも驚くほどあっさりと帰還石を差し出した。
それを受け取ったマーガレットがレオナルドに手渡す。
「よっしゃ、これで充分元は取れたな」
どういう意味だろうと考え、ああそうか、僕を奴隷として買った時の代金のことかと納得する。
「んじゃ、マーガレット。そいつもう殺していいぞ」
「了解」
レオナルドがマーガレットに向けてあごをしゃくった。
僕は一瞬、レオナルドが何を言ったのかわからなかった。
が次の瞬間、マーガレットが僕を指差したことで僕は理解した。
「降魔雷っ!」
「っ……!?」
防ぐことも逃げることも出来ず、マーガレットの指先から放たれた雷撃が僕の体を貫いていった。
仰向けに倒れる僕。
かすれた目には天井の岩肌がぼやけて見える。
薄れゆく意識の中、かろうじてレオナルドの声が聞こえてきた。
「クロノ、万が一もねぇと思うけどよ、もしお前が生きて地上に戻ってきたら面倒だからな。オレたちのためにやっぱここで死んでくれ」
「レオナルド、鬼畜ー」
「それでこそおれたちのリーダーだぜっ。がっはっは」
「奴隷らしくみじめに死んでいきなさい」
ひとしきりみんなで僕を笑ったあと帰還石を使用したのだろう、青い光が僕の足元の方でまばゆく輝いた。
そしてその直後、四人の気配は完全になくなった。
――こうして僕は一人SSSランクダンジョン、無限の大迷宮に取り残され、死を待つのみとなった。
53
お気に入りに追加
2,095
あなたにおすすめの小説
S級パーティを追放された無能扱いの魔法戦士は気ままにギルド職員としてスローライフを送る
神谷ミコト
ファンタジー
【祝!4/6HOTランキング2位獲得】
元貴族の魔法剣士カイン=ポーンは、「誰よりも強くなる。」その決意から最上階と言われる100Fを目指していた。
ついにパーティ「イグニスの槍」は全人未達の90階に迫ろうとしていたが、
理不尽なパーティ追放を機に、思いがけずギルドの職員としての生活を送ることに。
今までのS級パーティとして牽引していた経験を活かし、ギルド業務。ダンジョン攻略。新人育成。そして、学園の臨時講師までそつなくこなす。
様々な経験を糧にカインはどう成長するのか。彼にとっての最強とはなんなのか。
カインが無自覚にモテながら冒険者ギルド職員としてスローライフを送るである。
ハーレム要素多め。
※隔日更新予定です。10話前後での完結予定で構成していましたが、多くの方に見られているため10話以降も製作中です。
よければ、良いね。評価、コメントお願いします。励みになりますorz
他メディアでも掲載中。他サイトにて開始一週間でジャンル別ランキング15位。HOTランキング4位達成。応援ありがとうございます。
たくさんの誤字脱字報告ありがとうございます。すべて適応させていただきます。
物語を楽しむ邪魔をしてしまい申し訳ないですorz
今後とも応援よろしくお願い致します。
究極妹属性のぼっち少女が神さまから授かった胸キュンアニマルズが最強だった
盛平
ファンタジー
パティは教会に捨てられた少女。パティは村では珍しい黒い髪と黒い瞳だったため、村人からは忌子といわれ、孤独な生活をおくっていた。この世界では十歳になると、神さまから一つだけ魔法を授かる事ができる。パティは神さまに願った。ずっと側にいてくれる友達をくださいと。
神さまが与えてくれた友達は、犬、猫、インコ、カメだった。友達は魔法でパティのお願いを何でも叶えてくれた。
パティは友達と一緒に冒険の旅に出た。パティの生活環境は激変した。パティは究極の妹属性だったのだ。冒険者協会の美人受付嬢と美女の女剣士が、どっちがパティの姉にふさわしいかケンカするし、永遠の美少女にも気に入られてしまう。
ぼっち少女の愛されまくりな旅が始まる。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います
長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。
しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。
途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。
しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。
「ミストルティン。アブソープション!」
『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』
「やった! これでまた便利になるな」
これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。
~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~
正しい聖女さまのつくりかた
みるくてぃー
ファンタジー
王家で育てられた(自称)平民少女が、学園で起こすハチャメチャ学園(ラブ?)コメディ。
同じ年の第二王女をはじめ、優しい兄姉(第一王女と王子)に見守られながら成長していく。
一般常識が一切通用しない少女に友人達は振り回されてばかり、「アリスちゃんメイドを目指すのになぜダンスや淑女教育が必要なの!?」
そこには人知れず王妃と王女達によるとある計画が進められていた!
果たしてアリスは無事に立派なメイドになれるのか!? たぶん無理かなぁ……。
聖女シリーズ第一弾「正しい聖女さまのつくりかた」
完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-
ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。
自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。
いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して!
この世界は無い物ばかり。
現代知識を使い生産チートを目指します。
※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。
大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。
はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる