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第222話 断罪の剣

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「トウキョウダンジョンを創ったのが、ククリ……?」
「はいっ」
自慢でもしたいのかククリは顔をほころばせた。

「こらククリ、だったら今すぐスラを生き返せ」
「いひゃいれす~。むりれすよ~」
「なんでだ? ククリが創ったんならどうとでもなるだろ」
「はなひてくらひゃい~」
俺はククリのほっぺたから手を離す。

「もう~……正確に言うと神様の力を借りて私が創ったんです。なので言わば神様と私の合作みたいなものなんですよ。神様の力がないとどうにもなりません」
ククリはほっぺたをさすりながら説明した。

「じゃあその神様とやらを呼んでくれ、話をつけてやる」
「それも無理ですよ、神様は百年の眠りについちゃいましたから。こうなると世界が滅んでも起きませんよ」
とククリ。

「なんだそりゃ。神様ってのは何考えてるんだよ」
「神様は気分屋なので何を考えているか私たちにもわからないんです。すいません」
「わかったよ、もういいっ。時間がないからダンジョン行くぞ」

俺はまだ訊きたいことは山ほどあったがスラの命を優先させるため手を鏡の前に差し出した。

『地下何階層からスタートしますか?』
写し鏡の門から機械音が聞こえてくる。

「地下二十階層で頼む」
『地下二十階層ですね。それでは写し鏡の門を通ってください』
機械音が返ってきた。

「はいよ」
「マツイさん階層スキップするんですね」
「当たり前だろ、時間が惜しいんだから」

俺はククリを連れて全裸のまま鏡の中に入っていく。

すると――


「――な、なんだここはっ!?」

めちゃくちゃ広い空間に出た。
どこまでも真っ白で終わりが見えない。
そして目の前には五十階建てのビルくらいにとても大きなガチャの機械があった。
この機械がなかったら右も左も上も下もわからなくなってしまいそうだ。

「どうなってんだ、一体……?」

俺はぐるっとガチャの機械の周りを回ってみる。

「あ、マツイさん、あまりうろうろしないでくださいねっ。もしここで迷ったりしたら永遠に閉じ込められちゃいますからっ」
「お、おう」

ククリが怖いことを言うので俺はそそくさとククリのもとへ戻った。


「それで、これってガチャだよな?」
俺は大きなそれを指差して訊ねる。

「はい、そうです。この機械の中にはトウキョウダンジョン内に出てくる全アイテムが入っています。階層をスキップした分だけこのガチャを回せます」
ククリはガチャの機械を見上げながら説明してくれた。

「ちなみにマツイさんは階層を十九階層分スキップしたので十九回ガチャを回すことが出来ますよ」
「よし、わかった」

俺は大きなガチャの機械の前に立つと大型船の舵くらいある取っ手部分を右に回転させた。

ガ、ガ、ガ、ガ……。

ゴロン。

半透明の大きな球体が機械横の取り出し口に転がり出てきた。

「お、なんか出たっ」

俺は早速半透明の大きな球体に近寄りそれを開けてみる。

ぱかっ。

半分にすると、
「ククリ、剣だぞっ、剣が入ってる」
中にはまがまがしい輝きを放つどくろの紋章が特徴的な銀色の大きな剣が入っていた。

「わあ~っ! これ攻撃力+250の断罪の剣ですよっ!」
「攻撃力+250っ!? なんだそれ、めちゃくちゃすごいじゃないかよ」
「はいっ。でも呪われてますけどね」
「駄目じゃねぇかっ」

攻撃力+250なんてすごすぎると思ったらやっぱりそんなことか。

「ちなみに呪いってどんな呪いだ?」
もしかしたら影響が少ない呪いかもしれない。
もしそうならなんとか使えるかも……。

「これまでに罪を犯したことのある人が手にするとその人は死にます」
「罪か……犯罪者ってことか? だったら大丈夫じゃないか」
俺は今までなるべく他人に迷惑をかけないように生きてきたつもりだ。
警察の厄介になったこともない。

俺は断罪の剣に手を伸ばそうとした。

「待ってくださいっ」
だがククリがこれを止める。

「なんだよククリ」
「ほんとにマツイさんは今までに罪を犯したことはないんですね?」
ククリは俺の瞳の奥を覗き込むようにして訊いてきた。

「あ、ああ、ないよ」
「横断歩道のない道路を横切ったこともないんですね?」
「え……」
「法定速度を超えて車を走らせたこともないんですね?」
「いやいや、ちょっと待って……」
「アリさんを踏みつぶしてしまったこともないんですね?」
「いや、だから――」
「ゴキブリさんを殺したこともないんですね?」
「そんなのも罪になるのかっ?」
「当然です」
ククリは腕を組みうんうんうなずく。

「じゃあ無理だよっ。そんな人間いないしっ」
「そうですか。では残念ですけど断罪の剣は使えませんね」
「うーん……そうだな」
攻撃力+250は惜しいが持ったら死ぬんじゃどうしようもない。

俺は断罪の剣が入った半球体を横目に再度ガチャに近付くと取っ手部分に手をかけた。
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