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第198話 ハイオーガ

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期せずして金塊を手に入れた俺たち。

『感謝してよねマツイさん』
「すっごく感謝してるさ、ほら」
俺はオーガから手に入れていた満腹草をスラに食べさせてやった。
これで三日は何も食べなくても持つ。

むしゃむしゃ。

「ポーションも飲むか? 俺もう半分飲んじゃったけど……」
『うん、飲む飲む。ちょうだいっ』

俺はスラの口の中にポーションをとぽとぽと流し込む。

ごっくん。

『ふー、お腹いっぱい。もう食べらんないわー』

うっぷと満足げなスラを尻目に俺はククリに訊ねた。
「このフロアのボスはハイオーガだったよな」
「そうです。オーガよりも大柄で力も強いモンスターです」
『なになに? ボスならまたあたしの灼熱の炎で倒してあげよっか?』
「スラ、お前はもう魔力を使いきっちゃっただろ」
『あーそっか』

スラの特技の飲み込む、吐き出すの繰り返しによってスラの魔力はちょうど0になったところだ。
まあ、そのおかげで金塊が手に入ったのだが。

魔力草は一つ残ってはいるが万が一の時のため一応取っておくことにする。

「俺がやるよ。スラにばっかりいいところを持ってかれちゃ俺の立場がないからな」
宣言すると俺はフロアボスのハイオーガの待つ部屋に出向く。


しばらく歩くと、
「あれがハイオーガだな」
通路からハイオーガらしき姿が目に入った。

青い体はオーガと同じだが確かにオーガより一回り大きい。

「じゃあいくぞ。ふたりは下がってろよ」

部屋に入ると例の如く通路が閉じられた。

ハイオーガは俺に気付くと俺めがけて駆け出してきた。
『ウオォォー!』
「おりゃあー」
気合いを入れて俺も向かっていく。

がしっ。

「なにっ!」

俺の太刀筋を読みきったのかハイオーガは妖刀みつごろしを白羽どりで受け止めた。

「ぐぐっ……」
『ウオォォー!』

力が強い。
押しきれない。

「このっ!」

俺は左手でハイオーガの顔面に殴りかかった。
一瞬ハイオーガの手の力が緩む。

その隙を逃さず俺はハイオーガの腹に蹴りを入れて後方に蹴り飛ばした。

ずざざっ。

だがハイオーガは倒れずになおも向かってくる。
どうやら接近戦がしたいらしい。

俺は魔法で片をつけることにした。
後ろに飛びのくと俺は手をハイオーガに向けた。

「バトルウインド!」

薄緑色の弧を描いた風の刃がハイオーガめがけて飛んでいく。

ハイオーガは避けようとしない。
当たる。やったぞ。

バチンッ!

「なっ!?」

ハイオーガは風の刃を素手ではじき飛ばした。

「そんなのありかよっ」
「マツイさんっ、バトルフレアを使ってくださいっ!」
ククリから声が飛ぶ。

バトルフレア。
さっき覚えたばかりでどんな魔法かもわからないがとにかくククリを信じるか。

俺はハイオーガに手をのばし、
「バトルフレア!」
叫んだ。

その瞬間巨大な火の玉が俺の手のひらから発射された。

がしっ。
『ウオォォー!』
またしてもそれを受け止めるハイオーガ。

「マジか、こいつっ……」

『ウオォォー!』

ハイオーガはバトルフレアに力負けしていない。
むしろ押し返そうとしている。

「ククリっ、どうすればいいっ?」
「大丈夫です、見てくださいっ」
ククリの声を受け俺はハイオーガをしかと見た。

『ウオォォー!』
するとハイオーガの全身にはバトルフレアの炎が燃え広がっていた。

『ウオォォォーー!!』
直後ハイオーガが巨大な火の玉を天井にはじき飛ばした。
天井がボロボロと崩れる。

「ククリっ、あいつはじき飛ばしたぞ……」
俺はククリに目を向けるも、

どさっ。

炎にくるまれたハイオーガは大の字になって倒れてしまった。


「あれ? 倒れた……?」
「マツイさんの勝ちですよっ」
言いながらククリが俺のもとへ飛んできた。

ハイオーガが燃えて消滅していく。

「なんか実感ないな……勝手に自滅したような」
「ハイオーガは好戦的な性格ですからあらゆる攻撃を正面で受け止めるんです。その性格に救われましたね」
とククリ。

『マツイさんやったねー』
スラもぴょんぴょん跳んできた。

「あ、ああ」

よくわからんけど勝てたからいいか。
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