146 / 233
第146話 グリュプスの羽の効果
しおりを挟む
空腹のスラのため俺たちは仕方なく地下十三階層で今回のダンジョン探索を切り上げることにした。
ここまで下りてきた階段を上へ上へと上がっていく。
ここで意外にも役に立ったのがグリュプスの羽だった。
グリュプスの羽は持っていればグリュプスより弱いモンスターが襲ってこないというアイテムだったので俺は一切の戦闘を避け地下三階層まで来ていた。
恐怖を感じないはずのゾンビもこのアイテムのおかげか襲ってはこない。
俺は空腹でぐるぐると目が回っているスラを腕の中に抱いたまま小走りで地下二階層への階段を探す。
「マツイさんマツイさん、こんな時になんですけど私との約束憶えてます?」
「ん? ああ。賢者の石だろ、憶えてるよ」
「わ~い、やった~」
ククリが宙を飛びながら可愛らしく手を上げた。
約束というのは家に帰るまでにベアさんに会えなければ売値三百万円という賢者の石を俺がククリの目の前で使ってみせるというものだ。
賢者の石はランダムで割った者に奇跡が訪れるというアイテムで使ってみないとその効果はわからない。
ククリは賢者の石を俺が実際に使うところを生で見てみたいのだそうだ。
もちろん俺は三百万円を手に入れたいから売り払いたいが。
「喜ぶのはまだ早いぞ。もしかしたら戻る途中でベアさんに会えるかもしれないんだからな」
「わかってますよ~」
俺はまだ希望は捨てていない。
ここは地下三階層、あと三フロア残っている。
そんな会話をしていると、
「あ、階段ですよっ」
ククリが地下二階層への階段をみつけた。
「お、おう」
俺は心の中で軽く舌打ちをするがスラの手前表情には出さずにその階段を駆け上がっていった。
これで残り二フロアだ。
『ピキ~……』
「大丈夫か? もうすぐ地上だからな。そしたらパンでもご飯でもドッグフードでも好きなもの食べさせてやるからな」
弱っているスラに時折り声掛けしながら地下二階層をひた走る。
ゴブリンの姿は一切見えない。
「マツイさん、こっちですっ」
ククリの案内に沿ってあとをついて行くと地下一階層への階段がある部屋にたどり着いた。
俺はその階段を上ると地上との出入口である写し鏡の門のある場所へと向かった。
地下一階層。
正直もうベアさんに会うことは内心諦めていた。
三百万円は惜しいがそれもスラのため仕方のないことだと思い始めていた。
俺の頭から金銭欲が消えかけていたまさにそんな時――
『ようククリ、そんな急いでどうしたっ?』
ある部屋の前を通り過ぎようとした俺たちに声をかける者がいた。
その声の主は何を隠そうもちろんベアさんだった。
ここまで下りてきた階段を上へ上へと上がっていく。
ここで意外にも役に立ったのがグリュプスの羽だった。
グリュプスの羽は持っていればグリュプスより弱いモンスターが襲ってこないというアイテムだったので俺は一切の戦闘を避け地下三階層まで来ていた。
恐怖を感じないはずのゾンビもこのアイテムのおかげか襲ってはこない。
俺は空腹でぐるぐると目が回っているスラを腕の中に抱いたまま小走りで地下二階層への階段を探す。
「マツイさんマツイさん、こんな時になんですけど私との約束憶えてます?」
「ん? ああ。賢者の石だろ、憶えてるよ」
「わ~い、やった~」
ククリが宙を飛びながら可愛らしく手を上げた。
約束というのは家に帰るまでにベアさんに会えなければ売値三百万円という賢者の石を俺がククリの目の前で使ってみせるというものだ。
賢者の石はランダムで割った者に奇跡が訪れるというアイテムで使ってみないとその効果はわからない。
ククリは賢者の石を俺が実際に使うところを生で見てみたいのだそうだ。
もちろん俺は三百万円を手に入れたいから売り払いたいが。
「喜ぶのはまだ早いぞ。もしかしたら戻る途中でベアさんに会えるかもしれないんだからな」
「わかってますよ~」
俺はまだ希望は捨てていない。
ここは地下三階層、あと三フロア残っている。
そんな会話をしていると、
「あ、階段ですよっ」
ククリが地下二階層への階段をみつけた。
「お、おう」
俺は心の中で軽く舌打ちをするがスラの手前表情には出さずにその階段を駆け上がっていった。
これで残り二フロアだ。
『ピキ~……』
「大丈夫か? もうすぐ地上だからな。そしたらパンでもご飯でもドッグフードでも好きなもの食べさせてやるからな」
弱っているスラに時折り声掛けしながら地下二階層をひた走る。
ゴブリンの姿は一切見えない。
「マツイさん、こっちですっ」
ククリの案内に沿ってあとをついて行くと地下一階層への階段がある部屋にたどり着いた。
俺はその階段を上ると地上との出入口である写し鏡の門のある場所へと向かった。
地下一階層。
正直もうベアさんに会うことは内心諦めていた。
三百万円は惜しいがそれもスラのため仕方のないことだと思い始めていた。
俺の頭から金銭欲が消えかけていたまさにそんな時――
『ようククリ、そんな急いでどうしたっ?』
ある部屋の前を通り過ぎようとした俺たちに声をかける者がいた。
その声の主は何を隠そうもちろんベアさんだった。
0
お気に入りに追加
671
あなたにおすすめの小説
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
深刻な女神パワー不足によりチートスキルを貰えず転移した俺だが、そのおかげで敵からマークされなかった
ぐうのすけ
ファンタジー
日本の社会人として暮らす|大倉潤《おおくらじゅん》は女神に英雄【ジュン】として18才に若返り異世界に召喚される。
ジュンがチートスキルを持たず、他の転移者はチートスキルを保持している為、転移してすぐにジュンはパーティーを追放された。
ジュンは最弱ジョブの投資家でロクなスキルが無いと絶望するが【経験値投資】スキルは規格外の力を持っていた。
この力でレベルを上げつつ助けたみんなに感謝され、更に超絶美少女が俺の眷属になっていく。
一方俺を追放した勇者パーティーは横暴な態度で味方に嫌われ、素行の悪さから幸運値が下がり、敵にマークされる事で衰退していく。
女神から英雄の役目は世界を救う事で、どんな手を使っても構わないし人格は問わないと聞くが、ジュンは気づく。
あのゆるふわ女神の世界管理に問題があるんじゃね?
あの女神の完璧な美貌と笑顔に騙されていたが、あいつの性格はゆるふわJKだ!
あいつの管理を変えないと世界が滅びる!
ゲームのように普通の動きをしたら駄目だ!
ジュンは世界を救う為【深刻な女神力不足】の改善を進める。
念のためR15にしてます。
カクヨムにも先行投稿中
異世界の約束:追放者の再興〜外れギフト【光】を授り侯爵家を追い出されたけど本当はチート持ちなので幸せに生きて見返してやります!〜
KeyBow
ファンタジー
主人公の井野口 孝志は交通事故により死亡し、異世界へ転生した。
そこは剣と魔法の王道的なファンタジー世界。
転生した先は侯爵家の子息。
妾の子として家督相続とは無縁のはずだったが、兄の全てが事故により死亡し嫡男に。
女神により魔王討伐を受ける者は記憶を持ったまま転生させる事が出来ると言われ、主人公はゲームで遊んだ世界に転生した。
ゲームと言ってもその世界を模したゲームで、手を打たなければこうなる【if】の世界だった。
理不尽な死を迎えるモブ以下のヒロインを救いたく、転生した先で14歳の時にギフトを得られる信託の儀の後に追放されるが、その時に備えストーリーを変えてしまう。
メイヤと言うゲームでは犯され、絶望から自殺した少女をそのルートから外す事を幼少期より決めていた。
しかしそう簡単な話ではない。
女神の意図とは違う生き様と、ゲームで救えなかった少女を救う。
2人で逃げて何処かで畑でも耕しながら生きようとしていたが、計画が狂い何故か闘技場でハッスルする未来が待ち受けているとは物語がスタートした時はまだ知らない・・・
多くの者と出会い、誤解されたり頼られたり、理不尽な目に遭ったりと、平穏な生活を求める主人公の思いとは裏腹に波乱万丈な未来が待ち受けている。
しかし、主人公補正からかメインストリートから逃げられない予感。
信託の儀の後に侯爵家から追放されるところから物語はスタートする。
いつしか追放した侯爵家にザマアをし、経済的にも見返し謝罪させる事を当面の目標とする事へと、物語の早々に変化していく。
孤児達と出会い自活と脱却を手伝ったりお人好しだ。
また、貴族ではあるが、多くの貴族が好んでするが自分は奴隷を性的に抱かないとのポリシーが行動に規制を掛ける。
果たして幸せを掴む事が出来るのか?魔王討伐から逃げられるのか?・・・
異世界 無限転生!
アッキー
ファンタジー
女神(無限転生女神ディーネ)から、転生させて貰った、オッサンが、ディーネの担当する異世界に、若返って、転生し、ディーネより、いくつものスキルをもらい、面白おかしく生きていく。
主人公は、生前から、ディーネのお気に入りだったようで、転生してからも、何かと、お節介を焼いてしまうようである。そんな女神様からの(加護?)を受けて、異世界を堪能しながら、生きていく話でもある。
役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !
本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。
主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。
その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。
そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。
主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。
ハーレム要素はしばらくありません。
序盤でボコられるクズ悪役貴族に転生した俺、死にたくなくて強くなったら主人公にキレられました。え? お前も転生者だったの? そんなの知らんし〜
水間ノボル🐳
ファンタジー
↑「お気に入りに追加」を押してくださいっ!↑
★2024/2/25〜3/3 男性向けホットランキング1位!
★2024/2/25 ファンタジージャンル1位!(24hポイント)
「主人公が俺を殺そうとしてくるがもう遅い。なぜか最強キャラにされていた~」
『醜い豚』
『最低のゴミクズ』
『無能の恥晒し』
18禁ゲーム「ドミナント・タクティクス」のクズ悪役貴族、アルフォンス・フォン・ヴァリエに転生した俺。
優れた魔術師の血統でありながら、アルフォンスは豚のようにデブっており、性格は傲慢かつ怠惰。しかも女の子を痛ぶるのが性癖のゴミクズ。
魔術の鍛錬はまったくしてないから、戦闘でもクソ雑魚であった。
ゲーム序盤で主人公にボコられて、悪事を暴かれて断罪される、ざまぁ対象であった。
プレイヤーをスカッとさせるためだけの存在。
そんな破滅の運命を回避するため、俺はレベルを上げまくって強くなる。
ついでに痩せて、女の子にも優しくなったら……なぜか主人公がキレ始めて。
「主人公は俺なのに……」
「うん。キミが主人公だ」
「お前のせいで原作が壊れた。絶対に許さない。お前を殺す」
「理不尽すぎません?」
原作原理主義の主人公が、俺を殺そうとしてきたのだが。
※ カクヨム様にて、異世界ファンタジージャンル表紙入り。5000スター、10000フォロワーを達成!
人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~
犬型大
ファンタジー
突如として変わった世界。
塔やゲートが現れて強いものが偉くてお金も稼げる世の中になった。
弱いことは才能がないことであるとみなされて、弱いことは役立たずであるとののしられる。
けれども違ったのだ。
この世の中、強い奴ほど才能がなかった。
これからの時代は本当に才能があるやつが強くなる。
見抜いて、育てる。
育てて、恩を売って、いい暮らしをする。
誰もが知らない才能を見抜け。
そしてこの世界を生き残れ。
なろう、カクヨムその他サイトでも掲載。
更新不定期
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる