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第130話 宝箱二つ

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グリュプスとの戦闘で魔力が底をつきてしまった俺。

「薬草もないし魔力ゼロだとさすがに不安だなぁ」
「だったら賢者の石を使ってみたらどうですか? 魔力が回復するかもしれませんよ」
「やだよ、もったいない」

キマイラロードを倒した際に手に入れた賢者の石は割ると割った者に奇跡が訪れるらしい。
その奇跡というのは完全にランダムでレベルが極限まで上がったり珍しいスキルを覚えたり最深層階にワープしたりと予想もつかないことが起こるようだがベアさんならば三百万円という目が飛び出るほどの値段で買い取ってくれるそうなので俺は使うつもりはさらさらない。

だがククリは単に賢者の石の効果を自分の目で見てみたいという思いから俺に使ってほしいとせがんでくる。
俺はしょうがなく、ベアさんに会えなかったら賢者の石を使ってやるとその場の雰囲気にのまれ約束をしてしまった。
だから俺は今回のダンジョン探索で必ずベアさんをみつけなければならないのだ。

「魔力草でも薬草でもいいから何か手に入れたいところなんだけど……」
『ピキー』
「魔力草ならあたしが食べるって言ってます」

足元をぴょんぴょんついてくるスラが魔力草を欲しがるのには理由がある。
それは魔力草で魔力を回復させて物質変換能力を使うためだ。

スラの特技、飲み込むと吐き出すは一旦飲み込んだアイテムを別のアイテムに変え吐き出すことが出来るというレベルが上がったスライム特有の便利な特技だ。

「ああ、魔力草を手に入れたらその時は頼むな」
『ピキー』
スラは嬉しそうに鳴いた。

魔眼の透視能力を活かしてグリュプスと鉢合わせしないようにフロアを進みながらまずはアイテムを探して回る。

小さい部屋、中くらいの部屋、大きい部屋と順繰りに見ていくと、
「あっ、マツイさん。宝箱です!」
ククリが声を上げた。

ククリの視線の先には確かに宝箱があった。
大きな部屋の中央に、それも二つも宝箱が置かれている。

だがその宝箱の周りにはどす黒い液体でどろどろになった湿地のような水たまりのようなものが取り囲んでいた。
あれは毒の沼地だ。


「マツイさんどうします? 空を飛ぶアイテムもないですし、毒消し草もないですし」
とククリは言う。

そうなのだ。毒の沼地にそのまま足を突っ込むと毒に侵されてしまうのだ。
これまでは何かしら対策をとれてきたのだが今は天使の靴もなければヒーローマントもない、毒消し草もない。
その上魔力ゼロでは解毒魔法のキュアも使えない。

「諦めますか?」
「うーん……でももったいないなぁ」
目の前に宝箱が二つもあるのに。

俺は念のためギリギリ五メートルくらいの距離まで近付くと透視をして宝箱の中身を確認した。
これで中身が罠や大したことないものなら諦めもつくが……。

目を見開き凝視する――
「あっ!」
中身を見て俺は思わず声を上げてしまった。

「どうしました?」
「ククリ、一つはよくわからない透明な液体が入った容器だけどもう一つの方は間違いないっ。魔石だ!」
「えっ、魔石ですかっ」
売値十万、投げ当てたモンスターを確実に消滅させるレアアイテム魔石。

「ああ、あの青く光る石は魔石に違いないっ」

なんとしてでも手に入れたいアイテムだ。
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