上 下
100 / 233

第100話 スライムを仲間に

しおりを挟む
まだポチが寝ている中俺は早めの朝ご飯を済ますと庭に出た。朝日が目に入ってくる。
伸びをしながら石階段を下り写し鏡の門の前に立つと服を脱ぎ全裸になる。

「うーん、ふふっ……我ながらすごい体だなぁ」

ついこの間見た時とは別人のようなたくましい体つきに自然と笑みがこぼれる。
おそらく今の俺なら競技次第だがオリンピックを充分目指せるだろう。


今回のダンジョンに潜る目的はスライムを仲間にするだけだからすぐ戻ってこれる。
ポチのエサは帰ってきてからやればいいな、そう決めて俺は鏡に手をかざした。

『地下何階層からスタートしますか?』
「地下一階層」
『地下一階層ですね。それでは写し鏡の門を通ってください』
「よし、行くか」


◇ ◇ ◇


写し鏡の門を通り抜けると狭い空間に出る。

「ククリは……いないか」

俺は小さい通路をはいはいで進んで大きな通路に出た。

「おーい! ククリー!」
立ち上がり膝についた小石をはたき落としつつ通路中に響くように声を上げると、

「マツイさーん!」

まばゆい光を放つ光球がまっすぐ俺のもとへ飛んできた。

そして俺の目の前で止まった光の球。

「まぶしっ」
「あ、すいません。まぶしかったですか」
そう言うと光が消えククリの姿があらわになる。

「これで平気ですね」
「ああ。ククリ昨日はありがとうな、キマイラロードから逃がしてくれて。おかげで助かったよ」
「いえいえ、マツイさんが無事ならよかったです」
あの場面ではククリに帰還石を預けておいて正解だった。
俺はキマイラロードに眠らされてしまったからな。

「それにしてもマツイさん、今日いつもより早くないですか?」
「それなんだけど、快眠枕を使ったせいか目が冴えちゃって全然眠れなかったんだよ」
「あ~、快眠枕は普段の生活では使わないほうがいいですよ。生活リズムが狂っちゃいますから」
「うん、そうするつもりだ」
快眠枕も押し入れ行き決定だな。

「それでククリ、今回はお金とかが目的じゃなくてスライムを捕まえに来たんだけど」
「スライムですか? でも前にスライムは弱いから仲間にはしたくないって言ってませんでした?」
どうでもいいところで物覚えのいいククリ。

「ほら、姪っ子にお土産頼まれてるって言ったろ。あれ、訊いたらスライムがいいんだってさ」
「へ~、変わった子ですね~」
「そうなんだよ」
まったくその通りだ。最近の女子中学生は何を考えているのかわからない。

「じゃあスライムを捕まえたら帰るんですか?」
「そうだなぁ、ポチも待ってるしそうするかな」
「わかりました。じゃあ姪っ子さんのためにもポチさんのためにも早くスライムを仲間にしちゃいましょう」
「ああ、ありがとう」

もしかしたらスライムを外に持ち出すなんてと注意されるかもと思っていたがそんなことは全然なくククリはこころよく俺に協力してくれるようだった。

「ちょうどこの先の部屋でスライムが大量発生していたのでそこに行きましょうか」
「わかった」

ククリの案内で通路を先へ先へと進んでいくと何やら下敷きを手で持って鳴らした時のような音と鳥のさえずりに似た鳴き声が聞こえてきた。

ぽよんぽよんぽよん……。

『ピキー』
『ピキー』

突き当たりを右に曲がり――

「ほら、見てください。スライムが大量にいますよっ」
「おおっ! 本当だっ」

ククリの言う通り部屋の中にスライムがぎゅうぎゅう詰めになっている。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

異世界の約束:追放者の再興〜外れギフト【光】を授り侯爵家を追い出されたけど本当はチート持ちなので幸せに生きて見返してやります!〜

KeyBow
ファンタジー
 主人公の井野口 孝志は交通事故により死亡し、異世界へ転生した。  そこは剣と魔法の王道的なファンタジー世界。  転生した先は侯爵家の子息。  妾の子として家督相続とは無縁のはずだったが、兄の全てが事故により死亡し嫡男に。  女神により魔王討伐を受ける者は記憶を持ったまま転生させる事が出来ると言われ、主人公はゲームで遊んだ世界に転生した。  ゲームと言ってもその世界を模したゲームで、手を打たなければこうなる【if】の世界だった。  理不尽な死を迎えるモブ以下のヒロインを救いたく、転生した先で14歳の時にギフトを得られる信託の儀の後に追放されるが、その時に備えストーリーを変えてしまう。  メイヤと言うゲームでは犯され、絶望から自殺した少女をそのルートから外す事を幼少期より決めていた。  しかしそう簡単な話ではない。  女神の意図とは違う生き様と、ゲームで救えなかった少女を救う。  2人で逃げて何処かで畑でも耕しながら生きようとしていたが、計画が狂い何故か闘技場でハッスルする未来が待ち受けているとは物語がスタートした時はまだ知らない・・・  多くの者と出会い、誤解されたり頼られたり、理不尽な目に遭ったりと、平穏な生活を求める主人公の思いとは裏腹に波乱万丈な未来が待ち受けている。  しかし、主人公補正からかメインストリートから逃げられない予感。  信託の儀の後に侯爵家から追放されるところから物語はスタートする。  いつしか追放した侯爵家にザマアをし、経済的にも見返し謝罪させる事を当面の目標とする事へと、物語の早々に変化していく。  孤児達と出会い自活と脱却を手伝ったりお人好しだ。  また、貴族ではあるが、多くの貴族が好んでするが自分は奴隷を性的に抱かないとのポリシーが行動に規制を掛ける。  果たして幸せを掴む事が出来るのか?魔王討伐から逃げられるのか?・・・

異世界 無限転生!

アッキー
ファンタジー
女神(無限転生女神ディーネ)から、転生させて貰った、オッサンが、ディーネの担当する異世界に、若返って、転生し、ディーネより、いくつものスキルをもらい、面白おかしく生きていく。 主人公は、生前から、ディーネのお気に入りだったようで、転生してからも、何かと、お節介を焼いてしまうようである。そんな女神様からの(加護?)を受けて、異世界を堪能しながら、生きていく話でもある。

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

序盤でボコられるクズ悪役貴族に転生した俺、死にたくなくて強くなったら主人公にキレられました。え? お前も転生者だったの? そんなの知らんし〜

水間ノボル🐳
ファンタジー
↑「お気に入りに追加」を押してくださいっ!↑ ★2024/2/25〜3/3 男性向けホットランキング1位! ★2024/2/25 ファンタジージャンル1位!(24hポイント) 「主人公が俺を殺そうとしてくるがもう遅い。なぜか最強キャラにされていた~」 『醜い豚』  『最低のゴミクズ』 『無能の恥晒し』  18禁ゲーム「ドミナント・タクティクス」のクズ悪役貴族、アルフォンス・フォン・ヴァリエに転生した俺。  優れた魔術師の血統でありながら、アルフォンスは豚のようにデブっており、性格は傲慢かつ怠惰。しかも女の子を痛ぶるのが性癖のゴミクズ。  魔術の鍛錬はまったくしてないから、戦闘でもクソ雑魚であった。    ゲーム序盤で主人公にボコられて、悪事を暴かれて断罪される、ざまぁ対象であった。  プレイヤーをスカッとさせるためだけの存在。  そんな破滅の運命を回避するため、俺はレベルを上げまくって強くなる。  ついでに痩せて、女の子にも優しくなったら……なぜか主人公がキレ始めて。 「主人公は俺なのに……」 「うん。キミが主人公だ」 「お前のせいで原作が壊れた。絶対に許さない。お前を殺す」 「理不尽すぎません?」  原作原理主義の主人公が、俺を殺そうとしてきたのだが。 ※ カクヨム様にて、異世界ファンタジージャンル表紙入り。5000スター、10000フォロワーを達成!

ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

にくなまず
ファンタジー
今年から冒険者生活を開始した主人公で【ソロ】と言う適正のノア(15才)。 その適正の為、戦闘・日々の行動を基本的に1人で行わなければなりません。 そこで元上級冒険者の両親と猛特訓を行い、チート級の戦闘力と数々のスキルを持つ事になります。 『悠々自適にぶらり旅』 を目指す″つもり″の彼でしたが、開始早々から波乱に満ちた冒険者生活が待っていました。

18禁NTR鬱ゲーの裏ボス最強悪役貴族に転生したのでスローライフを楽しんでいたら、ヒロイン達が奴隷としてやって来たので幸せにすることにした

田中又雄
ファンタジー
『異世界少女を歪ませたい』はエロゲー+MMORPGの要素も入った神ゲーであった。 しかし、NTR鬱ゲーであるためENDはいつも目を覆いたくなるものばかりであった。 そんなある日、裏ボスの悪役貴族として転生したわけだが...俺は悪役貴族として動く気はない。 そう思っていたのに、そこに奴隷として現れたのは今作のヒロイン達。 なので、酷い目にあってきた彼女達を精一杯愛し、幸せなトゥルーエンドに導くことに決めた。 あらすじを読んでいただきありがとうございます。 併せて、本作品についてはYouTubeで動画を投稿しております。 より、作品に没入できるようつくっているものですので、よければ見ていただければ幸いです!

処理中です...