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第92話 白夜の剣
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「……は、ははっ……じゃあ、倒したってことか」
「そうですよ、マツイさんは勝ったんですっ」
ククリが飛びついてくる。
「いてててっ……」
「あっすいませんっ」
その時ゴゴゴゴゴ……と石の壁がなくなり階段が姿を現した。
そして宝箱も出現した。
「マツイさん、早くハイヒールで回復してください」
「ああ、それなんだけどヒールで充分そうだ」
ヒールと口にした途端俺はオレンジ色の暖かい光に包まれる。
「えっでもでも、お腹を刺されてましたよね」
ククリは俺の腹を覗き込むが、
「神秘のスカートのおかげだろうな、傷口はほとんどふさがっていたよ」
自動回復効果のある神秘のスカートを履いていたからか俺は回復魔法を唱えるまでもなくほとんどダメージは回復していた。
「そうだったんですね。よかったです~」
「でもここにきて肝心の武器がなくなっちゃったな」
妖刀ふたつなぎはオークキングとの戦いでおっ欠けてしまった。
「それなら錆びた剣があるじゃないですか」
「いや、それはそうだけど……」
確かに皮の袋の中には一応保険として錆びた剣を捨てずに入れてあるが。
「次は地下十階層だろ。錆びた剣でいけるかどうか……」
「でしたらその宝箱に賭けてみましょう」
出現した宝箱を指差すククリ。
「……そうだな。この中身は武器かもしれないもんな」
「そうですよ。さあ早く開けてください」
俺は期待を込めて宝箱に手をかけた。
がばっと開ける。
「ん? ……これはなんだ?」
中には歯磨き粉のチューブのようなものが入っていた。
明らかに武器ではなさそうだがククリの反応は俺とは違った。
「わあっ。このタイミングでのこのアイテム、マツイさんラッキーですよっ」
ククリは飛び上がって喜ぶ。
「ククリ、これ何? 武器じゃないよな」
「武器ではないですけど武器が手に入ったも同然ですよっ。これは錆びた剣を磨く研磨剤ですっ」
「研磨剤?」
「はい。この研磨剤で錆びた剣を磨くと錆びた剣の錆びがとれて新しい武器に生まれ変わるんですよっ」
「ふーん……そうなのか」
「もっと喜んでくださいよっ。もしかしたらすごい武器になるかもしれないんですからっ」
ククリは俺の腕を掴んで上下に揺らす。
俺は皮の袋の中から錆びた剣を取り出すと床に置いた。
「これにこいつを塗ればいいのか?」
「はい。それでいらない布できちんと磨いてください」
「いらない布って言ってもな……」
「鉢巻きがありましたよね。それでいいですから」
俺は使っていなかった鉢巻きを手に取ると研磨剤を塗りたくった錆びた剣をそれで丁寧に磨いた。
地味な作業だったが意外と心休まる時間だった。
「よしっ、こんなもんかな」
「マツイさん剣磨きの才能ありますね~。最高ですっ」
「ほめても何も出ないぞ」
俺が丹精込めて磨き上げたことで錆びた剣は攻撃力+20の刀身がきらりと輝く白夜の剣に生まれ変わったのだった。
「白夜の剣はこれまでで一番の武器ですよっ」
「そうだな」
試しに振ってみる。
「うん、軽くて扱いやすそうだ」
それでいて丈夫な感じもする。
「よかったですね、これで地下十階層に挑めますね」
「ああ。あっそうだ、ちなみに次の階層のモンスターはどんなのが出てくるんだ?」
「キマイラというライオンに羽の生えたようなモンスターです」
「ライオンか……怖そうだなぁ」
しかも羽が生えてるってことは飛べるんだろどうせ。
「そいつって強いのか?」
「そうですね、地下十階層からはモンスターが一気に強くなりますね」
とククリは言う。
「やっぱりか……俺しばらくこの階でレベル上げでもしようかな」
「でも今のマツイさんは強い武器も手に入れましたし、それになんといっても帰還石を持っていますのでいざとなればすぐ逃げられますからそこまで気にしなくても大丈夫ですよ」
「うーん」
「同じレベル上げをするならより経験値の高いモンスターと戦った方が効率的ですよ。コレクターも取得できますし」
「そりゃまあそうだけど……」
ククリの言うことはもっともだった。
俺はお金を稼ぐためにこのダンジョンに来ているが何も理由はそれだけではない。自分自身を変えたいと思ったからでもある。
これまでの俺なら冒険はせずに安全策をとっていただろう。
でもそんなことでいいのか俺?
変われるのか? 自分。
嫌なことから逃げ続けてきたから俺は今ニートなんかやっているんじゃないのか?
高木さんに堂々と胸を張れる生き方をしたくないのか?
心の中で自問自答した結果、
「よしっ、キマイラがなんだ。そんなの倒してやるさ」
「そうです、その意気ですよマツイさんっ」
「行くぞ、ククリっ」
「はいっ」
俺は一歩足を踏み出した。
「そうですよ、マツイさんは勝ったんですっ」
ククリが飛びついてくる。
「いてててっ……」
「あっすいませんっ」
その時ゴゴゴゴゴ……と石の壁がなくなり階段が姿を現した。
そして宝箱も出現した。
「マツイさん、早くハイヒールで回復してください」
「ああ、それなんだけどヒールで充分そうだ」
ヒールと口にした途端俺はオレンジ色の暖かい光に包まれる。
「えっでもでも、お腹を刺されてましたよね」
ククリは俺の腹を覗き込むが、
「神秘のスカートのおかげだろうな、傷口はほとんどふさがっていたよ」
自動回復効果のある神秘のスカートを履いていたからか俺は回復魔法を唱えるまでもなくほとんどダメージは回復していた。
「そうだったんですね。よかったです~」
「でもここにきて肝心の武器がなくなっちゃったな」
妖刀ふたつなぎはオークキングとの戦いでおっ欠けてしまった。
「それなら錆びた剣があるじゃないですか」
「いや、それはそうだけど……」
確かに皮の袋の中には一応保険として錆びた剣を捨てずに入れてあるが。
「次は地下十階層だろ。錆びた剣でいけるかどうか……」
「でしたらその宝箱に賭けてみましょう」
出現した宝箱を指差すククリ。
「……そうだな。この中身は武器かもしれないもんな」
「そうですよ。さあ早く開けてください」
俺は期待を込めて宝箱に手をかけた。
がばっと開ける。
「ん? ……これはなんだ?」
中には歯磨き粉のチューブのようなものが入っていた。
明らかに武器ではなさそうだがククリの反応は俺とは違った。
「わあっ。このタイミングでのこのアイテム、マツイさんラッキーですよっ」
ククリは飛び上がって喜ぶ。
「ククリ、これ何? 武器じゃないよな」
「武器ではないですけど武器が手に入ったも同然ですよっ。これは錆びた剣を磨く研磨剤ですっ」
「研磨剤?」
「はい。この研磨剤で錆びた剣を磨くと錆びた剣の錆びがとれて新しい武器に生まれ変わるんですよっ」
「ふーん……そうなのか」
「もっと喜んでくださいよっ。もしかしたらすごい武器になるかもしれないんですからっ」
ククリは俺の腕を掴んで上下に揺らす。
俺は皮の袋の中から錆びた剣を取り出すと床に置いた。
「これにこいつを塗ればいいのか?」
「はい。それでいらない布できちんと磨いてください」
「いらない布って言ってもな……」
「鉢巻きがありましたよね。それでいいですから」
俺は使っていなかった鉢巻きを手に取ると研磨剤を塗りたくった錆びた剣をそれで丁寧に磨いた。
地味な作業だったが意外と心休まる時間だった。
「よしっ、こんなもんかな」
「マツイさん剣磨きの才能ありますね~。最高ですっ」
「ほめても何も出ないぞ」
俺が丹精込めて磨き上げたことで錆びた剣は攻撃力+20の刀身がきらりと輝く白夜の剣に生まれ変わったのだった。
「白夜の剣はこれまでで一番の武器ですよっ」
「そうだな」
試しに振ってみる。
「うん、軽くて扱いやすそうだ」
それでいて丈夫な感じもする。
「よかったですね、これで地下十階層に挑めますね」
「ああ。あっそうだ、ちなみに次の階層のモンスターはどんなのが出てくるんだ?」
「キマイラというライオンに羽の生えたようなモンスターです」
「ライオンか……怖そうだなぁ」
しかも羽が生えてるってことは飛べるんだろどうせ。
「そいつって強いのか?」
「そうですね、地下十階層からはモンスターが一気に強くなりますね」
とククリは言う。
「やっぱりか……俺しばらくこの階でレベル上げでもしようかな」
「でも今のマツイさんは強い武器も手に入れましたし、それになんといっても帰還石を持っていますのでいざとなればすぐ逃げられますからそこまで気にしなくても大丈夫ですよ」
「うーん」
「同じレベル上げをするならより経験値の高いモンスターと戦った方が効率的ですよ。コレクターも取得できますし」
「そりゃまあそうだけど……」
ククリの言うことはもっともだった。
俺はお金を稼ぐためにこのダンジョンに来ているが何も理由はそれだけではない。自分自身を変えたいと思ったからでもある。
これまでの俺なら冒険はせずに安全策をとっていただろう。
でもそんなことでいいのか俺?
変われるのか? 自分。
嫌なことから逃げ続けてきたから俺は今ニートなんかやっているんじゃないのか?
高木さんに堂々と胸を張れる生き方をしたくないのか?
心の中で自問自答した結果、
「よしっ、キマイラがなんだ。そんなの倒してやるさ」
「そうです、その意気ですよマツイさんっ」
「行くぞ、ククリっ」
「はいっ」
俺は一歩足を踏み出した。
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