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第65話 決意新たに
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地下一階層。
ククリと一日ぶりの再会を果たした俺はスライムだけが出てくる地下一階層をゆったり歩いていた。
「マツイさん、どうでしたか? 地上は」
隣を飛びながらククリが口を開く。
「そうだなぁ、まあいろいろあったよ」
ひょんなことからポチを高木さんに預けたり、家に初子姉ちゃんと姪っ子がやってきたりと刺激のある一日だった。
「ポチを友達に預けてきたから今回は何日でも気の済むまで潜っていられるからな」
「わあ、そうですか。じゃあ一気に地下十階層くらいまで行っちゃいますか?」
「地下十階層か? まだ地下五階層にも行ってないから先は長そうだな」
前回は地下四階層のフロアボスであるキラービーを倒しただけで下の階には結局下りてはいない。
「あのうマツイさん、一応訊きますけど写し鏡の門の機能知ってますよね?」
「機能って?」
「足を踏み入れたことのあるフロアならそこからスタートできる機能のことです」
「あー、知ってるよ」
ダンジョンのすすめに書いてあったんだっけ? ……よく覚えてないけど。
「使う気はないんですか?」
「うーん、今のところはいいかなぁ。レベルがもっと上がって深い階層に行けるようになれば別だけど」
「今よりレベルが上がったらマツイさん、地上では敵なしですね」
「ははっ、そうかもな」
まあ、そんな強くなったところで地上ではその力を発揮する場面なんてないんだけど。
「ククリ、今さらなんだけど俺って深い階層に潜る意味あるのかな?」
「? どういうことですか?」
ククリは可愛らしく首をかしげる。
「いや、思ったんだけど地下一階層でアイテム探ししてれば安全に稼げるんじゃないかなって。スライムくらいなら武器なしでも余裕だし」
っていうかスライムの方から逃げてくれるから戦う必要もない。
「マツイさんがそうしたいなら別に私はそれでも構いませんけど」
「いいの?」
「はい、私は別に。でも地下一階層だけでマツイさんがこれまで働いてこなかった分を稼ぐには何年かかるかわかりませんよ」
とククリ。
「え、なんで?」
「いいですか。マツイさんがこれまでこのトウキョウダンジョンで稼いだ額はこの前の地下四階層でたまたま手に入れた金塊を除くと大体二十万円くらいですよね」
ククリは人差し指をかかげ話し始めた。
「ああ、そんなところだな」
「これまでマツイさんがダンジョンにいた日数はまあ一週間くらいとしましょうか。二十四時間かける七日で百六十八時間。これを一時間当たりで計算するとざっと千円ちょっとですよ」
……ってことはつまり時給千円?
「深い階層に行けば行くほどレアアイテムが出る確率は高くなりますし当然稼げる額も増えていきます。だからもしマツイさんが本気でこれまでの分を取り返すつもりがあるなら私は断然深い階層に潜ることをおすすめします」
「……ふーん、そっか」
「それにこのダンジョン内で手に入れたスキルも魔法も肉体も地上でそのまま使えるんですよ。私がもしマツイさんの立場だったらもっともっとレベルを上げたくなりますけど。マツイさんはならないんですか?」
「……そうだなぁ」
そう聞くとそんな気がしてくる。
「……やっぱり俺、もっとレベル上げて深い階層目指そうかな」
ククリの話にはそう思わせるだけの説得力があった。
「そうですよ。夢は大きくですよっ」
「そんでどうせなら超大金持ちになって超人になって面白おかしく生きてやるか」
「そうです、その意気ですよマツイさんっ」
ククリに上手く乗せられたような気もするが俺はあらためて深階層を目指す決意を固めたのだった。
ククリと一日ぶりの再会を果たした俺はスライムだけが出てくる地下一階層をゆったり歩いていた。
「マツイさん、どうでしたか? 地上は」
隣を飛びながらククリが口を開く。
「そうだなぁ、まあいろいろあったよ」
ひょんなことからポチを高木さんに預けたり、家に初子姉ちゃんと姪っ子がやってきたりと刺激のある一日だった。
「ポチを友達に預けてきたから今回は何日でも気の済むまで潜っていられるからな」
「わあ、そうですか。じゃあ一気に地下十階層くらいまで行っちゃいますか?」
「地下十階層か? まだ地下五階層にも行ってないから先は長そうだな」
前回は地下四階層のフロアボスであるキラービーを倒しただけで下の階には結局下りてはいない。
「あのうマツイさん、一応訊きますけど写し鏡の門の機能知ってますよね?」
「機能って?」
「足を踏み入れたことのあるフロアならそこからスタートできる機能のことです」
「あー、知ってるよ」
ダンジョンのすすめに書いてあったんだっけ? ……よく覚えてないけど。
「使う気はないんですか?」
「うーん、今のところはいいかなぁ。レベルがもっと上がって深い階層に行けるようになれば別だけど」
「今よりレベルが上がったらマツイさん、地上では敵なしですね」
「ははっ、そうかもな」
まあ、そんな強くなったところで地上ではその力を発揮する場面なんてないんだけど。
「ククリ、今さらなんだけど俺って深い階層に潜る意味あるのかな?」
「? どういうことですか?」
ククリは可愛らしく首をかしげる。
「いや、思ったんだけど地下一階層でアイテム探ししてれば安全に稼げるんじゃないかなって。スライムくらいなら武器なしでも余裕だし」
っていうかスライムの方から逃げてくれるから戦う必要もない。
「マツイさんがそうしたいなら別に私はそれでも構いませんけど」
「いいの?」
「はい、私は別に。でも地下一階層だけでマツイさんがこれまで働いてこなかった分を稼ぐには何年かかるかわかりませんよ」
とククリ。
「え、なんで?」
「いいですか。マツイさんがこれまでこのトウキョウダンジョンで稼いだ額はこの前の地下四階層でたまたま手に入れた金塊を除くと大体二十万円くらいですよね」
ククリは人差し指をかかげ話し始めた。
「ああ、そんなところだな」
「これまでマツイさんがダンジョンにいた日数はまあ一週間くらいとしましょうか。二十四時間かける七日で百六十八時間。これを一時間当たりで計算するとざっと千円ちょっとですよ」
……ってことはつまり時給千円?
「深い階層に行けば行くほどレアアイテムが出る確率は高くなりますし当然稼げる額も増えていきます。だからもしマツイさんが本気でこれまでの分を取り返すつもりがあるなら私は断然深い階層に潜ることをおすすめします」
「……ふーん、そっか」
「それにこのダンジョン内で手に入れたスキルも魔法も肉体も地上でそのまま使えるんですよ。私がもしマツイさんの立場だったらもっともっとレベルを上げたくなりますけど。マツイさんはならないんですか?」
「……そうだなぁ」
そう聞くとそんな気がしてくる。
「……やっぱり俺、もっとレベル上げて深い階層目指そうかな」
ククリの話にはそう思わせるだけの説得力があった。
「そうですよ。夢は大きくですよっ」
「そんでどうせなら超大金持ちになって超人になって面白おかしく生きてやるか」
「そうです、その意気ですよマツイさんっ」
ククリに上手く乗せられたような気もするが俺はあらためて深階層を目指す決意を固めたのだった。
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