上 下
24 / 233

第24話 ゴブリン

しおりを挟む
トウキョウダンジョン地下二階層。

魔眼の透視能力で確認したところ次の曲がり角の先に緑色の体をした子どものように小さなモンスターが座り込んでいるのをみつけた。
間違いない。ゴブリンだ。

俺は息をひそめ気付かれないように忍び足で背後から近付くと、
「おらぁっ!」
後頭部を思いきりグーで殴った。

『ギギッ!?』
ゴブリンが頭を押さえうずくまる。

俺はすかさずガラ空きになった脇腹に蹴りを入れた。
小さい体が吹っ飛び石壁にぶち当たる。

『ギギッ……』
それでもよろよろと立ち上がろうとしてくるゴブリン。
よだれを垂らしながら俺をにらみつけている。怖っ。

この状況、はたから見たらまるで大人が子どもを一方的に痛めつけているように見えるかもしれないが気を抜いたらこっちがやられかねないからやるしかない。
俺はゴブリンから目をそらすことなく両手を体の前で構える。

すると、最初の後頭部への不意打ちが効いていたのかゴブリンは結局立ち上がれないままその場に倒れ込んだ。

「はぁっ、やったか……?」

見ていると次の瞬間ゴブリンが泡状になって消滅した。

「ふぅ……倒した」
なまじ子どものような姿なので戦いにくいがこれなら武器を持っていない俺でもなんとか倒せそうだ。


とその時、
「マツイさん、マツイさん!」
ククリが俺の名を呼ぶ。

「なんだ? どうした? ククリ」
「今のでマツイさんのレベルが7から8に上がりましたよっ」
自分のことのように喜びながらククリが言う。

「え、なんでレベルが上がったってわかるんだ?」
ファンファーレ的な音が鳴ったわけでもないのに……。

「だってマツイさんの首の後ろにレベルが浮き出てますから」
と指を差しながら当然のように答えるククリ。

「マジで!? そんなとこにレベルが出てたのっ」
「はい。もしかして気付いていなかったんですか?」
「今初めて知ったよっ。ダンジョンのすすめに書いてなかっただろ」
「そうでしたっけ?」
可愛らしく首をかしげる。

ククリの奴意外と抜けているのか?
この分だとダンジョンのすすめには書かれていなかった知っておかなければならない重要なことがまだまだありそうな気がする。
……不安だ。

「マツイさん、早くステータスの確認をしてみてくださいよ」
「お、おう」
ククリに急かされステータスを確認することに。

「えっと確か、右目の下を押せばいいんだったな……」
俺は自分の右目の下を軽く押した。

パッと目の前にステータス画面が表示される。


*************************************

マツイ:レベル8

生命力:23/26
魔力:5/6
攻撃力:14
防御力:10
素早さ:10

スキル:魔眼
魔法:バトルマッチ、ヒール

*************************************


「おお! 確かにレベルが上がってる。能力値もちょっとだけだけど上がってるぞ」
防御力と素早さは一桁だったはずだがそれも二桁になっている。

「あれ? 魔法が一個増えてる」
「ヒールは回復魔法ですよ。生命力を少しだけ回復させることが出来ます」
「へー、なんかゲームっぽくていいな」
「試しに使ってみますか?」
ククリが提案する。

「でも今使うのはもったいなぁ」
「前にも言ったと思いますけど生命力も魔力も時間経過か寝ることで自然に回復しますから大丈夫ですよ。それにいきなり実戦で使ったことのない魔法を使うのはちょっとアレじゃないですか?」

アレねぇ……そう言われるとそうか。
「……うーん、じゃあ試してみるか。魔法の名前を唱えるだけでいいんだよな?」
「はい」

俺はダメージなど一切感じてはいないのだがククリに言われるまま「ヒール!」と唱えた。
その刹那、オレンジ色の光が俺の全身を包み込む。
「おおっ、なんだこれ……」
オレンジ色の光は暖かくて気持ちがいい。ともすると眠ってしまいそうなくらいだ。

数秒ほどすると俺を包んでいたオレンジ色の光は自然と消え、ステータス画面の生命力は23/26から26/26に魔力は5/6から0/6になっていた。

「どうですか? 実際に使ってみて」
ククリが俺の顔を覗き込むように訊いてくる。

「……ああ。なんだろう、なんかいい感じだった。それに気のせいか体が軽くなったような気がする」
「それはマツイさんの生命力が回復したからですよ」
「そうなのか」
だとしたら使った甲斐もあったというものだ。

「では生命力も満タンになったことですしゴブリン狩りを続けましょう!」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

ダンジョン発生から20年。いきなり玄関の前でゴブリンに遭遇してフリーズ中←今ココ

高遠まもる
ファンタジー
カクヨム、なろうにも掲載中。 タイトルまんまの状況から始まる現代ファンタジーです。 ダンジョンが有る状況に慣れてしまった現代社会にある日、異変が……。 本編完結済み。 外伝、後日譚はカクヨムに載せていく予定です。

百花繚乱 〜国の姫から極秘任務を受けた俺のスキルの行くところ〜

幻月日
ファンタジー
ーー時は魔物時代。 魔王を頂点とする闇の群勢が世界中に蔓延る中、勇者という職業は人々にとって希望の光だった。 そんな勇者の一人であるシンは、逃れ行き着いた村で村人たちに魔物を差し向けた勇者だと勘違いされてしまい、滞在中の兵団によってシーラ王国へ送られてしまった。 「勇者、シン。あなたには魔王の城に眠る秘宝、それを盗み出して来て欲しいのです」 唐突にアリス王女に突きつけられたのは、自分のようなランクの勇者に与えられる任務ではなかった。レベル50台の魔物をようやく倒せる勇者にとって、レベル100台がいる魔王の城は未知の領域。 「ーー王女が頼む、その任務。俺が引き受ける」 シンの持つスキルが頼りだと言うアリス王女。快く引き受けたわけではなかったが、シンはアリス王女の頼みを引き受けることになり、魔王の城へ旅立つ。 これは魔物が世界に溢れる時代、シーラ王国の姫に頼まれたのをきっかけに魔王の城を目指す勇者の物語。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

俺だけ展開できる聖域《ワークショップ》~ガチャで手に入れたスキルで美少女達を救う配信がバズってしまい、追放した奴らへざまあして人生大逆転~

椿紅颯
ファンタジー
鍛誠 一心(たんせい いっしん)は、生ける伝説に憧憬の念を抱く駆け出しの鍛冶師である。 探索者となり、同時期に新米探索者になったメンバーとパーティを組んで2カ月が経過したそんなある日、追放宣言を言い放たれてしまった。 このことからショックを受けてしまうも、生活するために受付嬢の幼馴染に相談すると「自らの価値を高めるためにはスキルガチャを回してみるのはどうか」、という提案を受け、更にはそのスキルが希少性のあるものであれば"配信者"として活動するのもいいのではと助言をされた。 自身の戦闘力が低いことからパーティを追放されてしまったことから、一か八かで全て実行に移す。 ガチャを回した結果、【聖域】という性能はそこそこであったが見た目は派手な方のスキルを手に入れる。 しかし、スキルの使い方は自分で模索するしかなかった。 その後、試行錯誤している時にダンジョンで少女達を助けることになるのだが……その少女達は、まさかの配信者であり芸能人であることを後々から知ることに。 まだまだ驚愕的な事実があり、なんとその少女達は自身の配信チャンネルで配信をしていた! そして、その美少女達とパーティを組むことにも! パーティを追放され、戦闘力もほとんどない鍛冶師がひょんなことから有名になり、間接的に元パーティメンバーをざまあしつつ躍進を繰り広げていく! 泥臭く努力もしつつ、実はチート級なスキルを是非ご覧ください!

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位

ダンジョン配信 【人と関わるより1人でダンジョン探索してる方が好きなんです】ダンジョン生活10年目にして配信者になることになった男の話

天野 星屑
ファンタジー
突如地上に出現したダンジョン。中では現代兵器が使用できず、ダンジョンに踏み込んだ人々は、ダンジョンに初めて入ることで発現する魔法などのスキルと、剣や弓といった原始的な武器で、ダンジョンの環境とモンスターに立ち向かい、その奥底を目指すことになった。 その出現からはや10年。ダンジョン探索者という職業が出現し、ダンジョンは身近な異世界となり。ダンジョン内の様子を外に配信する配信者達によってダンジョンへの過度なおそれも減った現在。 ダンジョン内で生活し、10年間一度も地上に帰っていなかった男が、とある事件から配信者達と関わり、己もダンジョン内の様子を配信することを決意する。 10年間のダンジョン生活。世界の誰よりも豊富な知識と。世界の誰よりも長けた戦闘技術によってダンジョンの様子を明らかにする男は、配信を通して、やがて、世界に大きな動きを生み出していくのだった。 *本作は、ダンジョン籠もりによって強くなった男が、配信を通して地上の人たちや他の配信者達と関わっていくことと、ダンジョン内での世界の描写を主としています *配信とは言いますが、序盤はいわゆるキャンプ配信とかブッシュクラフト、旅動画みたいな感じが多いです。のちのち他の配信者と本格的に関わっていくときに、一般的なコラボ配信などをします *主人公と他の探索者(配信者含む)の差は、後者が1~4まで到達しているのに対して、前者は100を越えていることから推察ください。 *主人公はダンジョン引きこもりガチ勢なので、あまり地上に出たがっていません

絶対零度女学園

ミカ塚原
ファンタジー
 私立ガドリエル女学園で起こった、謎の女生徒凍結事件。原因不明の事件を発端として、学園を絶対零度の闇が覆い尽くす。時間さえも凍結したかのような極寒の世界を、正体不明の魔がうごめき始めた。ただ一人闇に立ち向かうのは、病に冒され夢を挫かれた少女。この世に火を投じるため、百合香は剣を取って巨大な氷の城に乗り込む。 ◆先に投稿した「メイズラントヤード魔法捜査課」という作品とは異なる方向性の、現代が舞台のローファンタジーです。キービジュアルは作者本人によるものです。小説を書き始めたのは今年(2022年)が初めてなので、稚拙な文章は暖かい目で読んでくださると幸いです。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

処理中です...