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第5話 ボーナススキル

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会社勤めをしたことのない俺でもボーナスという言葉にぴくっと反応する。
「……ボ、ボーナススキルって?」
「モンスターを倒すとまれにスキルという特殊な力を取得できるのですがボーナススキルというのはある一定の条件をクリアした時のみ手に入るスキルのことです」
「ごめん、よくわからない」
ゲームはあくまでたしなむ程度で俺は暇な時間はゲームより断然アニメ派のニートなのだ。

「例えばですね、このダンジョンにはスライムというモンスターが出るのですが……」
「あっ、スライムなら知ってる」
「そのスライムを倒すとまれにスライムクラッシャーというスキルが手に入ります。このスキルを持っているとスライムに与えるダメージが二倍になります」
「おお」
それはすごい。

「さらにスライムを累計千匹倒すとスライムコレクターというスキルが確実に手に入ります。このスキルはスライムに与えるダメージが三倍になるという効果を持っているのですがこのように一定の条件を満たした時にもらえるスキルがボーナススキルです」
「なるほど」
なんとなくだがわかった気がする。

「要はボーナススキルの方が時間をかければ必ず手に入る分レア度は低いんだな」
「う~ん、取得条件がとてつもなく難しいボーナススキルもあるので一概には言えませんが今はそういう理解でいいです」
指を口元に当てながら説明するククリ。

「そっか。それでどんなボーナススキルをプレゼントしてくれるって?」
「あのう……大事なものを失くして悲しんでいたんじゃないんですか?」
「悲しいさ。でもいつまでもめそめそしていられないだろ。ポチも助けないといけないし」
自分で言って思い出す。
そうだ。そもそも俺はポチを連れ戻しに来たんだった。

「ポチさんて誰ですか?」
「ポチは犬だよ。俺の飼っている犬、ゴールデンレトリバー。そうだククリ、お前ここで犬見なかったか?」
「それって黄土色の毛がふさふさしてて私よりずっと大きい生き物のことですか?」
「そうだよ、そいつ。やっぱり見たのかっ。今どこにいるんだ?」
「一番目の探索者さんのことですね。あの方ポチさんていうんですか~。ポチさんなら私の言うことも聞かずにダンジョンの奥に走っていっちゃいましたよ」
ククリは腕を組んでうんうんうなずいている。

「なんだってっ……」
モンスターが出てくるダンジョンの奥に行ってしまっただと。

こうしちゃいられない。
「ポチを捜しに行ってくる!」
俺はなりふり構わず通路を駆け出した。

「あっ、マツイさんボーナススキルはどうするんですかっ。まだ決めてませんよっ」
「ククリに任せるっ」


そう言い残してかっこよくあの場を立ち去った。そこまではよかったのだが……。


◇ ◇ ◇


「ここ、どこ……?」

俺はダンジョン内で迷子になっていた。
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