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第102話 一軒の民家

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服を着た俺は昼ご飯を済ますと海に向かっていく。
そしてそこで「アイスエイジっ!」と叫んだ。
すると高波が一瞬で凍りつきぴたっと止まる。
だが数秒後、新たな波が押し寄せてきて凍っていた波が音を立てて崩れていった。

それを見て、
「ふん、まだ完全に使いこなしてはいないけどとりあえずは及第点ってとこかしらね」
ゲルニカが口にする。

「クロクロさん、よかったですね。ゲルニカさんが褒めてくれましたよ」
ローレライさんも続いて言った。

「別に褒めてはいないわよ、まあ、思ってたよりずっと早く覚えてくれたから助かったけど。じゃあそろそろ行きましょ」
「はい。この近くに町や村があるといいですね」
ゲルニカとローレライさんが歩き始める。
俺も二人についていく。


◇ ◇ ◇


二時間ほど歩いていると民家が見えてきた。
だが町や村ではなく平原にぽつんとそれは一軒だけあった。

「ねえ、クロクロ。ちょっとあそこでこの辺に町がないか訊いてきてくれる?」
とゲルニカ。

「俺が行くのか?」
「あたし歩きくたびれちゃったのよ」
それは俺も同じなのだが。

「あ、私行きましょうかっ」
「偉いわね、ローレライは。それに引き換えクロクロは、魔法を教えてやったあたしに感謝の欠片もないんだからっ」
「わかったよ、行きゃあいんだろ」
「早くしてね~」
ゲルニカは大きな岩にどかっと腰を下ろした。
魔法を教えてもらった恩があるから仕方ない、ここは下手に出てやる。

俺はローレライさんとともに民家に足を運んだ。
そしてドアの外から声をかける。

「すみませーん、どなたかいらっしゃいますかーっ?」

すると、
「はい、なぁに~?」
可愛らしい声が返ってきた。
その後にドアが内側から開かれ中からカレンと同い年くらいの小太りな少年が顔を出す。

「お兄さんとお姉さん、だれ~?」
俺とローレライさんを見上げて少年が訊いてきた。

「俺はクロクロだよ、こんにちは」
「初めまして。私はローレライといいます」
子ども相手にも丁寧に答えるローレライさん。

「ぼくはガンムっていうんだっ。お兄さんたちは何しに来たの?」
「えっと、家にお父さんかお母さんいるかな?」
「ううん、ぼく一人~」
ふるふると首を横に振る少年。
さらさらとした髪の毛と同時に顔の肉も揺れる。

「お父さんとお母さんお仕事行ってる」
「そうなのか。じゃあこの辺りに町とか村とかってあるかな?」
「う~ん……」
少年は首をひねって頭を悩ませている。

難しい質問だったかなぁと諦めかけた次の瞬間、
「……あっそうだ、港ならあるよっ」
と少年は声を大にした。

「港ですか?」
「うんっ。そこから船が出てるんだっ」
少年はローレライさんの問いに元気よく返す。

「船が出てるのか……だったら町もあるかもな」
「その港というのはどこにあるのですか?」
腰をかがめて少年と同じ目線になるローレライさん。

「うんとね~、ここをまーっすぐ行って……行ったとこっ」
「そうですか。ありがとうございます、ガンムさん」
「いひひっ」
ガンムさんと呼ばれたことにむずがゆくなったのか少年は変な声で笑った。

俺たちは少年にお礼を言い別れを告げるとゲルニカのもとへと戻る。

「おーい、ゲルニカ。この先に港町があるかもしれないぞ」
「ほんとっ? わかったわ、じゃあさっさと行きましょ」
大きな岩からぴょんと跳び下りるとゲルニカは一人で勝手に歩き出した。
疲れてたんじゃなかったのか?

こうして俺たちは船が出てるという港町へと歩を進めるのだった。
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