90 / 104
第90話 ニノの村の宿屋
しおりを挟む
目を開けるとどこかの部屋の天井が見えた。
「あっ、クロクロさん。目が覚めたのですねっ」
ローレライさんの声が降ってくると同時にローレライさんの顔が視界に入ってくる。
「ローレライさん……ここはどこですか?」
「ニノの村の宿屋です」
「……ニノの村?」
「感謝しなさいよっ。あたしとローレライが気絶してるあんたをここまで運んできてやったんだからねっ」
顔を横に向けるとゲルニカの姿もあった。
ぶすっとした表情でこちらを見ている。
「心配したのですよ。クロクロさん、なかなか起きないので……」
「あ、すみません……」
お腹に大きな傷を受けていたのにレベル5のブーストを使ったせいかもしれない。
俺は気を失ってしまっていたようだった。
そこで俺はハッとなりお腹をさする。
するとお腹の傷は完全に塞がっていた。
「ゲルニカさんの回復魔法のおかげです」
「え?」
「私もクロクロさんもゲルニカさんのおかげで大事に至らなくて済みました」
「そうだったんですね……ゲルニカ、ありがとう。助かったよ」
「ふんっ」
俺が顔を向けるとゲルニカは急にそっぽを向いた。
さっきは感謝しろと言っていたくせによくわからない奴だ。
「ローレライさんもありがとうございました。俺がガロワって魔物にやられた時にすぐ駆けつけてくれて。それにここまで運んでくれたみたいで」
「いえ、私はたいしたことはしていませんから」
ローレライさんはそう言って謙遜する。
だがその顔はどこか嬉しそうだった。
「あ、でもここ宿屋なんですよね? お金大丈夫だったんですか?」
「問題ないわ。あんたの腰についてる袋の中から勝手に取ったから」
「す、すみません、勝手なことをしてしまって……」
「あー、いや、全然いいですよ」
ゲルニカならそれくらいやるだろうと思っていたから驚きはしない。
それより、
「俺だけがお金持っているのも不便なんで二人にもお金渡しておきますよ」
なんとなく思っていたことを俺は申し出た。
「え、そ、そんな悪いですよっ」
「俺今、金貨十九枚持っているんでローレライさんとゲルニカに六枚ずつあげます」
俺はローレライさんの言葉を無視して袋から金貨を取り出す。
「どういう風の吹き回しよ。あんたもしかして頭でも打った?」
というゲルニカの言葉も無視して俺は金貨を六枚ずつ、ローレライさんとゲルニカに差し出した。
「う、受け取れませんっ」
ローレライさんが言うのに対して、
「あとで返してくれって言っても返さないわよ」
ゲルニカは俺の手から奪うように金貨を掴み取る。
「別に返せなんて言わないよ。それで旅支度を整えるなり好きな物を買ってくれ。はい、ローレライさんも受け取ってください」
「い、いえ、そういうわけにはいきません。そのお金はクロクロさんが稼いだお金ですから」
「今回の件のお礼だとでも思ってください。二人がいなかったら俺はこうして生きていなかったかもしれないんですからね」
「で、ですが……」
意外と頑固なローレライさん。
なので俺は半ば強引にローレライさんの手を引っ張るとその手の上に六枚の金貨を置いて握らせた。
「気にせずに自由に使ってください。その方が俺も気が楽なんで」
「ほ、本当ですか?」
「はい。ということでこの件は終了です」
俺は無理矢理話を終わらせるとゲルニカに向き直る。
ゲルニカは俺から受け取った金貨を服のポケットにしまっていた。
「なあ、ゲルニカ。これから俺たちはどうすればいいと思う?」
「ん、そうね~。あいつ、ガロワだっけ? たしか大邪神直属の部下っていう魔物があと五体いる、みたいなこと言ってたわよね。あれ? 七体だったかしら?」
「五体です。ちなみに先ほどのガロワという魔物が口にしていた竜王という魔物と竜魔王という魔物はクロクロさんが既に倒してしまっています」
「あ、そうなの?」
「はい。エルフの里を救ってくださった時に」
「ふーん、そうなんだ」
あまり関心なさそうに言ってからゲルニカは人差し指を口元に当てる。
「じゃあ残りの五体の大邪神直属の部下って奴らを探して、そいつらから大邪神の居場所を訊き出すっていうのはどうっ?」
いいことを思いついたとでも言わんばかりに声を弾ませるゲルニカ。
「でもさっきのガロワみたいに絶対に話そうとしないかもしれないぞ」
「そんなの拷問でも自白剤でも使って喋らせればいいのよっ」
「鬼か、お前」
それではどっちが悪者かわからないじゃないか。
「で、でもゲルニカさんの言う通り大邪神直属の部下の魔物を探すのはアリだと思います」
ローレライさんがゲルニカの案に一部賛同する。
「でしょでしょ」
「それらの魔物が別の魔物を創り出しているようですから、それらの魔物を退治するだけでもやる意義はあると思います」
「いいこと言うじゃんローレライっ。それにそいつらを全部倒しちゃえば大邪神の方から案外ひょこっと姿を現すかもしれないしね」
「まあ、そう言われればそうかもしれないが……う~ん」
拷問だとかには反対だがゲルニカの言うことにも一理あるような気がする。
「わかった。じゃあ俺たちの当面の目的は残る五体の大邪神直属の部下の魔物とやらを探すってことでいいな?」
「もっちろん」
「はい、そうしましょう」
そうと決まればこうしてはいられない。
俺はベッドから飛び起きると背伸びを一つしてから、
「よし、行こうかっ」
二人に元気よく声をかけた。
「あっ、クロクロさん。目が覚めたのですねっ」
ローレライさんの声が降ってくると同時にローレライさんの顔が視界に入ってくる。
「ローレライさん……ここはどこですか?」
「ニノの村の宿屋です」
「……ニノの村?」
「感謝しなさいよっ。あたしとローレライが気絶してるあんたをここまで運んできてやったんだからねっ」
顔を横に向けるとゲルニカの姿もあった。
ぶすっとした表情でこちらを見ている。
「心配したのですよ。クロクロさん、なかなか起きないので……」
「あ、すみません……」
お腹に大きな傷を受けていたのにレベル5のブーストを使ったせいかもしれない。
俺は気を失ってしまっていたようだった。
そこで俺はハッとなりお腹をさする。
するとお腹の傷は完全に塞がっていた。
「ゲルニカさんの回復魔法のおかげです」
「え?」
「私もクロクロさんもゲルニカさんのおかげで大事に至らなくて済みました」
「そうだったんですね……ゲルニカ、ありがとう。助かったよ」
「ふんっ」
俺が顔を向けるとゲルニカは急にそっぽを向いた。
さっきは感謝しろと言っていたくせによくわからない奴だ。
「ローレライさんもありがとうございました。俺がガロワって魔物にやられた時にすぐ駆けつけてくれて。それにここまで運んでくれたみたいで」
「いえ、私はたいしたことはしていませんから」
ローレライさんはそう言って謙遜する。
だがその顔はどこか嬉しそうだった。
「あ、でもここ宿屋なんですよね? お金大丈夫だったんですか?」
「問題ないわ。あんたの腰についてる袋の中から勝手に取ったから」
「す、すみません、勝手なことをしてしまって……」
「あー、いや、全然いいですよ」
ゲルニカならそれくらいやるだろうと思っていたから驚きはしない。
それより、
「俺だけがお金持っているのも不便なんで二人にもお金渡しておきますよ」
なんとなく思っていたことを俺は申し出た。
「え、そ、そんな悪いですよっ」
「俺今、金貨十九枚持っているんでローレライさんとゲルニカに六枚ずつあげます」
俺はローレライさんの言葉を無視して袋から金貨を取り出す。
「どういう風の吹き回しよ。あんたもしかして頭でも打った?」
というゲルニカの言葉も無視して俺は金貨を六枚ずつ、ローレライさんとゲルニカに差し出した。
「う、受け取れませんっ」
ローレライさんが言うのに対して、
「あとで返してくれって言っても返さないわよ」
ゲルニカは俺の手から奪うように金貨を掴み取る。
「別に返せなんて言わないよ。それで旅支度を整えるなり好きな物を買ってくれ。はい、ローレライさんも受け取ってください」
「い、いえ、そういうわけにはいきません。そのお金はクロクロさんが稼いだお金ですから」
「今回の件のお礼だとでも思ってください。二人がいなかったら俺はこうして生きていなかったかもしれないんですからね」
「で、ですが……」
意外と頑固なローレライさん。
なので俺は半ば強引にローレライさんの手を引っ張るとその手の上に六枚の金貨を置いて握らせた。
「気にせずに自由に使ってください。その方が俺も気が楽なんで」
「ほ、本当ですか?」
「はい。ということでこの件は終了です」
俺は無理矢理話を終わらせるとゲルニカに向き直る。
ゲルニカは俺から受け取った金貨を服のポケットにしまっていた。
「なあ、ゲルニカ。これから俺たちはどうすればいいと思う?」
「ん、そうね~。あいつ、ガロワだっけ? たしか大邪神直属の部下っていう魔物があと五体いる、みたいなこと言ってたわよね。あれ? 七体だったかしら?」
「五体です。ちなみに先ほどのガロワという魔物が口にしていた竜王という魔物と竜魔王という魔物はクロクロさんが既に倒してしまっています」
「あ、そうなの?」
「はい。エルフの里を救ってくださった時に」
「ふーん、そうなんだ」
あまり関心なさそうに言ってからゲルニカは人差し指を口元に当てる。
「じゃあ残りの五体の大邪神直属の部下って奴らを探して、そいつらから大邪神の居場所を訊き出すっていうのはどうっ?」
いいことを思いついたとでも言わんばかりに声を弾ませるゲルニカ。
「でもさっきのガロワみたいに絶対に話そうとしないかもしれないぞ」
「そんなの拷問でも自白剤でも使って喋らせればいいのよっ」
「鬼か、お前」
それではどっちが悪者かわからないじゃないか。
「で、でもゲルニカさんの言う通り大邪神直属の部下の魔物を探すのはアリだと思います」
ローレライさんがゲルニカの案に一部賛同する。
「でしょでしょ」
「それらの魔物が別の魔物を創り出しているようですから、それらの魔物を退治するだけでもやる意義はあると思います」
「いいこと言うじゃんローレライっ。それにそいつらを全部倒しちゃえば大邪神の方から案外ひょこっと姿を現すかもしれないしね」
「まあ、そう言われればそうかもしれないが……う~ん」
拷問だとかには反対だがゲルニカの言うことにも一理あるような気がする。
「わかった。じゃあ俺たちの当面の目的は残る五体の大邪神直属の部下の魔物とやらを探すってことでいいな?」
「もっちろん」
「はい、そうしましょう」
そうと決まればこうしてはいられない。
俺はベッドから飛び起きると背伸びを一つしてから、
「よし、行こうかっ」
二人に元気よく声をかけた。
0
お気に入りに追加
695
あなたにおすすめの小説
今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので
sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。
早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。
なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。
※魔法と剣の世界です。
※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。
鑑定能力で恩を返す
KBT
ファンタジー
どこにでもいる普通のサラリーマンの蔵田悟。
彼ははある日、上司の悪態を吐きながら深酒をし、目が覚めると見知らぬ世界にいた。
そこは剣と魔法、人間、獣人、亜人、魔物が跋扈する異世界フォートルードだった。
この世界には稀に異世界から《迷い人》が転移しており、悟もその1人だった。
帰る方法もなく、途方に暮れていた悟だったが、通りすがりの商人ロンメルに命を救われる。
そして稀少な能力である鑑定能力が自身にある事がわかり、ブロディア王国の公都ハメルンの裏通りにあるロンメルの店で働かせてもらう事になった。
そして、ロンメルから店の番頭を任された悟は《サト》と名前を変え、命の恩人であるロンメルへの恩返しのため、商店を大きくしようと鑑定能力を駆使して、海千山千の商人達や荒くれ者の冒険者達を相手に日夜奮闘するのだった。
婚約破棄騒動に巻き込まれたモブですが……
こうじ
ファンタジー
『あ、終わった……』王太子の取り巻きの1人であるシューラは人生が詰んだのを感じた。王太子と公爵令嬢の婚約破棄騒動に巻き込まれた結果、全てを失う事になってしまったシューラ、これは元貴族令息のやり直しの物語である。
愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
玲子さんは自重しない~これもある種の異世界転生~
やみのよからす
ファンタジー
病院で病死したはずの月島玲子二十五歳大学研究職。目を覚ますと、そこに広がるは広大な森林原野、後ろに控えるは赤いドラゴン(ニヤニヤ)、そんな自分は十歳の体に(材料が足りませんでした?!)。
時は、自分が死んでからなんと三千万年。舞台は太陽系から離れて二百二十五光年の一惑星。新しく作られた超科学なミラクルボディーに生前の記憶を再生され、地球で言うところの中世後半くらいの王国で生きていくことになりました。
べつに、言ってはいけないこと、やってはいけないことは決まっていません。ドラゴンからは、好きに生きて良いよとお墨付き。実現するのは、はたは理想の社会かデストピアか?。
月島玲子、自重はしません!。…とは思いつつ、小市民な私では、そんな世界でも暮らしていく内に周囲にいろいろ絆されていくわけで。スーパー玲子の明日はどっちだ?
カクヨムにて一週間ほど先行投稿しています。
書き溜めは100話越えてます…
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる