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第75話 一段落して
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竜魔王を見事倒した俺だったが拍手喝采は起こらなかった。
それもそのはず若い男性のエルフたちはみな傷つき倒れ、他のエルフたちは彼らの回復と竜魔王によって里に放たれていた炎の消火に追われていたからだ。
そんな中唯一バーバレラさんだけは俺を呆けたようにじっとみつめていたのだが、しばらくして我に返ると魔法で里全体に大雨を降らせ里の火を消し止めたのだった。
◇ ◇ ◇
里が落ち着きを取り戻した頃、
「わしが悪かったクロクロさん。この通りじゃ」
バーバレラさんはエルフたちの見ている前で俺に土下座をしてみせた。
「バーバレラ様っ!?」
「何をしているのですかっ」
「おやめください、バーバレラ様っ」
その姿に周りにいたエルフたちが動揺し声を上げる。
だがバーバレラさんは構わずそのまま続けた。
「わしは人間を嫌うあまりクロクロさん、あなたにひどい扱いをしてしまった。それなのにクロクロさんはわしらを助けてくれた。クロクロさんがいなければわしらは全滅しておったじゃろう。すまんかった、クロクロさんっ……」
「顔を上げてください、バーバレラさん。バーバレラさんが人間を嫌う理由はローレライさんから聞いていましたから理解できます。それに俺は気にしていませんから」
「クロクロさんや……ありがとう。ありがとうよ、クロクロさん」
バーバレラさんは若いエルフたちに体を起こされてからも何度も俺に向かって頭を下げるのだった。
◇ ◇ ◇
「さてと」
依頼も完了したことだしそろそろ俺は報酬を受け取って帰りたいところなのだが……。
「ねえ、こっち手伝ってーっ」
「それよりこっちーっ」
「こっちもいっぱいいっぱいなのよっ」
「男たちがまだ全回復してないんだからわたしたちが頑張らないとっ」
エルフたちは焼け落ちてしまった家々を直すのに忙しくて俺のことなど目に入っていないようだった。
ローレライさんも里を忙しそうに走り回っていて俺に渡すはずの報酬を忘れているのだろう。
「どうするかなぁ……」
すると、
「ちょっとクロクロさんっ、暇ならこっち来て手貸してくださいよっ」
若い女性のエルフが今にも崩壊しそうな家の前から俺を呼んだ。
「え、俺?」
「男たちは自分に回復魔法をかけるのに必死で働き手はわたしたちしかいないんですからっ。お願いしますっ」
「あ、ああ。わかった」
元来ノーとは言えない性格の俺はそのエルフのもとに駆け寄っていく。
「この家はもう直せないので一旦取り壊しますからクロクロさん、手伝ってください」
「壊せばいいんだな」
「はいっ」
そういうことなら話は早い。
俺は崩壊しかけた家を殴りつけバラバラの木片に変えそこを更地にしていった。
「わぁー。やっぱりクロクロさんすごいですねっ」
女性のエルフが声を大にして言う。
とそれを聞きつけた他のエルフたちも「クロクロさん、今度こっちお願いしますっ」とか「クロクロさん、こっちもーっ」と俺を呼びつけ出した。
俺がエルフ族の命の恩人だということをわかっているのかいないのか俺をこき使うエルフたち。
だがまあ、俺を好意的に受け止めてくれているらしいことはわかったのでそれほど悪い気はしなかった。
それもそのはず若い男性のエルフたちはみな傷つき倒れ、他のエルフたちは彼らの回復と竜魔王によって里に放たれていた炎の消火に追われていたからだ。
そんな中唯一バーバレラさんだけは俺を呆けたようにじっとみつめていたのだが、しばらくして我に返ると魔法で里全体に大雨を降らせ里の火を消し止めたのだった。
◇ ◇ ◇
里が落ち着きを取り戻した頃、
「わしが悪かったクロクロさん。この通りじゃ」
バーバレラさんはエルフたちの見ている前で俺に土下座をしてみせた。
「バーバレラ様っ!?」
「何をしているのですかっ」
「おやめください、バーバレラ様っ」
その姿に周りにいたエルフたちが動揺し声を上げる。
だがバーバレラさんは構わずそのまま続けた。
「わしは人間を嫌うあまりクロクロさん、あなたにひどい扱いをしてしまった。それなのにクロクロさんはわしらを助けてくれた。クロクロさんがいなければわしらは全滅しておったじゃろう。すまんかった、クロクロさんっ……」
「顔を上げてください、バーバレラさん。バーバレラさんが人間を嫌う理由はローレライさんから聞いていましたから理解できます。それに俺は気にしていませんから」
「クロクロさんや……ありがとう。ありがとうよ、クロクロさん」
バーバレラさんは若いエルフたちに体を起こされてからも何度も俺に向かって頭を下げるのだった。
◇ ◇ ◇
「さてと」
依頼も完了したことだしそろそろ俺は報酬を受け取って帰りたいところなのだが……。
「ねえ、こっち手伝ってーっ」
「それよりこっちーっ」
「こっちもいっぱいいっぱいなのよっ」
「男たちがまだ全回復してないんだからわたしたちが頑張らないとっ」
エルフたちは焼け落ちてしまった家々を直すのに忙しくて俺のことなど目に入っていないようだった。
ローレライさんも里を忙しそうに走り回っていて俺に渡すはずの報酬を忘れているのだろう。
「どうするかなぁ……」
すると、
「ちょっとクロクロさんっ、暇ならこっち来て手貸してくださいよっ」
若い女性のエルフが今にも崩壊しそうな家の前から俺を呼んだ。
「え、俺?」
「男たちは自分に回復魔法をかけるのに必死で働き手はわたしたちしかいないんですからっ。お願いしますっ」
「あ、ああ。わかった」
元来ノーとは言えない性格の俺はそのエルフのもとに駆け寄っていく。
「この家はもう直せないので一旦取り壊しますからクロクロさん、手伝ってください」
「壊せばいいんだな」
「はいっ」
そういうことなら話は早い。
俺は崩壊しかけた家を殴りつけバラバラの木片に変えそこを更地にしていった。
「わぁー。やっぱりクロクロさんすごいですねっ」
女性のエルフが声を大にして言う。
とそれを聞きつけた他のエルフたちも「クロクロさん、今度こっちお願いしますっ」とか「クロクロさん、こっちもーっ」と俺を呼びつけ出した。
俺がエルフ族の命の恩人だということをわかっているのかいないのか俺をこき使うエルフたち。
だがまあ、俺を好意的に受け止めてくれているらしいことはわかったのでそれほど悪い気はしなかった。
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