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第71話 VS竜王
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『エルフのばばあ、家畜はどうした?』
「お、お主がすべて食い尽くしてしまったじゃろうがっ」
『用意出来なかったというわけだな。だったら貴様らを喰らうまでだ』
「な、なんじゃとっ」
里の出入り口に駆けつけると大勢のエルフたちが見守る中、バーバレラさんが大きな魔物と対峙していた。
その魔物は四本足で全身が金色のうろこに覆われた体長七メートルほどのドラゴンだった。
魔物のくせに本当に人語を喋っている。
と、
「バーバレラ様っ」
ローレライさんが声を上げた。
バーバレラさんが振り返る。
「おお、ローレライや」
「もう大丈夫ですよバーバレラ様っ。クロクロさんが竜王を追い払ってくれますからっ」
そう言ってローレライさんはバーバレラさんを安全な場所まで連れていく。
「クロクロさん、よろしくお願いいたしますっ」
「わかりました」
『ん? なんだ貴様は? エルフではないな』
目の前に歩み出た俺を鋭い眼差しで見下ろす竜王。
竜王が言葉を発するたびに大気がびりびりと震えるようだった。
「ああ、俺は人間の冒険者だ。エルフ族に雇われてお前を倒しに来た」
『倒すだと? ぬはははっ、笑わせてくれる。人間ごときがこの竜王に勝てるわけなかろう』
「そんなのやってみないとわからないだろ」
俺が返したその直後――
びゅん!
竜王の長い尻尾が鞭のようにしなり俺をなぎ払った。
俺はふっ飛ばされ近くにあった家の壁に頭から突っ込む。
『ぬはははっ、口ほどにもない奴め。もう死んでしまいおったわ』
「クロクロさんっ!」
ローレライさんの悲痛な声が聞こえた。
「や、やっぱり人間なんかじゃ駄目だったんだ……」
「くそっ、万事休すか……」
「わ、わたしたち食べられちゃうの……」
「おらの家が~……」
エルフたちの声も届いてくる。
誰も俺の心配をしている様子はない。別に構わないが。
「……んよいしょっと」
俺は家の壁から頭を引き抜くと頭についた木片を払う。
『なっ!? き、貴様、死んでいなかったのかっ?』
「クロクロさんっ!」
「大丈夫ですよローレライさん」
「で、でも血がっ……」
ローレライさんが不安そうに俺の顔をみつめるので俺は顔に触れてみた。
すると額から出血していた。
「あ、血だ……」
おそらくこれは壁に突っ込んだ時に出来た傷ではなく竜王の尻尾になぎ払われた時に出来たものだろう。
さすが竜王と名乗っているだけのことはある、これまで戦ってきたどの魔物よりもたしかに強いようだ。
俺は額からの流血を服の袖で拭うと竜王を見据える。
『貴様……ただの人間ではないな』
「さあな。記憶がないから俺にもわからないんだ」
『ふざけたことを。だったらこれならどうだっ』
言った瞬間竜王は大きく口を開いた。
そして口から青色の炎を吐き出した。
「熱っ!」
俺は炎のあまりの熱さにとっさに後ろに飛び退く。
『燃えろ燃えろっ!』
竜王は辺り構わず炎を吐き続けた。
家が次々と炎に飲み込まれ燃え広がっていく。
エルフたちはそれを見て川の水を汲み消火にあたる。
出し惜しみしている場合じゃないか。
俺は一撃で竜王を倒すべく、
「ブースト、レベル4っ!」
と唱えた。
全身の毛が逆立ち力がみなぎってくる。
『なに、ブーストだとっ!? しかもレベル4っ!? そんな高等魔法を貴様のような人間が――』
「くらえ、竜王っ!」
俺は跳び上がると一瞬のうちに竜王の顔の横に移動し、ありったけの力を込めて竜王の横っ面を殴りつけた。
『ぐがぁっ……!!』
俺の一撃により竜王の首が一回転すると、竜王は全身の力が抜けたかようにその巨体を地面に沈めた。
その衝撃で地面が大きく揺れる。
俺はブーストを解除するとローレライさんに向き直った。
「ふぅ~。終わりましたよ、ローレライさん」
「……す、すごい……」
ローレライさんは口を半開きにしている。
そして幸いなことにエルフたちの消火の甲斐あって、里に放たれていた火の勢いはかなり弱まっていたのだった。
「お、お主がすべて食い尽くしてしまったじゃろうがっ」
『用意出来なかったというわけだな。だったら貴様らを喰らうまでだ』
「な、なんじゃとっ」
里の出入り口に駆けつけると大勢のエルフたちが見守る中、バーバレラさんが大きな魔物と対峙していた。
その魔物は四本足で全身が金色のうろこに覆われた体長七メートルほどのドラゴンだった。
魔物のくせに本当に人語を喋っている。
と、
「バーバレラ様っ」
ローレライさんが声を上げた。
バーバレラさんが振り返る。
「おお、ローレライや」
「もう大丈夫ですよバーバレラ様っ。クロクロさんが竜王を追い払ってくれますからっ」
そう言ってローレライさんはバーバレラさんを安全な場所まで連れていく。
「クロクロさん、よろしくお願いいたしますっ」
「わかりました」
『ん? なんだ貴様は? エルフではないな』
目の前に歩み出た俺を鋭い眼差しで見下ろす竜王。
竜王が言葉を発するたびに大気がびりびりと震えるようだった。
「ああ、俺は人間の冒険者だ。エルフ族に雇われてお前を倒しに来た」
『倒すだと? ぬはははっ、笑わせてくれる。人間ごときがこの竜王に勝てるわけなかろう』
「そんなのやってみないとわからないだろ」
俺が返したその直後――
びゅん!
竜王の長い尻尾が鞭のようにしなり俺をなぎ払った。
俺はふっ飛ばされ近くにあった家の壁に頭から突っ込む。
『ぬはははっ、口ほどにもない奴め。もう死んでしまいおったわ』
「クロクロさんっ!」
ローレライさんの悲痛な声が聞こえた。
「や、やっぱり人間なんかじゃ駄目だったんだ……」
「くそっ、万事休すか……」
「わ、わたしたち食べられちゃうの……」
「おらの家が~……」
エルフたちの声も届いてくる。
誰も俺の心配をしている様子はない。別に構わないが。
「……んよいしょっと」
俺は家の壁から頭を引き抜くと頭についた木片を払う。
『なっ!? き、貴様、死んでいなかったのかっ?』
「クロクロさんっ!」
「大丈夫ですよローレライさん」
「で、でも血がっ……」
ローレライさんが不安そうに俺の顔をみつめるので俺は顔に触れてみた。
すると額から出血していた。
「あ、血だ……」
おそらくこれは壁に突っ込んだ時に出来た傷ではなく竜王の尻尾になぎ払われた時に出来たものだろう。
さすが竜王と名乗っているだけのことはある、これまで戦ってきたどの魔物よりもたしかに強いようだ。
俺は額からの流血を服の袖で拭うと竜王を見据える。
『貴様……ただの人間ではないな』
「さあな。記憶がないから俺にもわからないんだ」
『ふざけたことを。だったらこれならどうだっ』
言った瞬間竜王は大きく口を開いた。
そして口から青色の炎を吐き出した。
「熱っ!」
俺は炎のあまりの熱さにとっさに後ろに飛び退く。
『燃えろ燃えろっ!』
竜王は辺り構わず炎を吐き続けた。
家が次々と炎に飲み込まれ燃え広がっていく。
エルフたちはそれを見て川の水を汲み消火にあたる。
出し惜しみしている場合じゃないか。
俺は一撃で竜王を倒すべく、
「ブースト、レベル4っ!」
と唱えた。
全身の毛が逆立ち力がみなぎってくる。
『なに、ブーストだとっ!? しかもレベル4っ!? そんな高等魔法を貴様のような人間が――』
「くらえ、竜王っ!」
俺は跳び上がると一瞬のうちに竜王の顔の横に移動し、ありったけの力を込めて竜王の横っ面を殴りつけた。
『ぐがぁっ……!!』
俺の一撃により竜王の首が一回転すると、竜王は全身の力が抜けたかようにその巨体を地面に沈めた。
その衝撃で地面が大きく揺れる。
俺はブーストを解除するとローレライさんに向き直った。
「ふぅ~。終わりましたよ、ローレライさん」
「……す、すごい……」
ローレライさんは口を半開きにしている。
そして幸いなことにエルフたちの消火の甲斐あって、里に放たれていた火の勢いはかなり弱まっていたのだった。
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