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第39話 ホブゴブリンの巣食う洞窟
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洞窟の中は薄暗くそれでいて生臭いにおいが立ち込めていた。
「なんだこのにおいは、鼻が曲がりそうだぜっ……」
「ほんと、嫌なにおいね」
「おわっと……!」
「どうした? ザガリン」
突如妙な声を上げたザガリンに問いかける。
「いや、なんか変なもん踏んづけた気がする」
「変なもの?」
俺は持っていたたいまつでザガリンの足元を照らしてみた。
するとそこにあったのは、
「きゃぁっ!」
人間の死体だった。
ホブゴブリンに食い散らかされたかのような見るに堪えない状態で放置されている死体を見てエメリアがとっさに俺の腕を掴む。
「大丈夫か? エメリア」
「は、はい……すみません」
「見た感じ冒険者か……?」
ザガリンの言う通り着ている服などからその死体は冒険者のもののように見受けられた。
「ホブゴブリンにやられたってことは多分EランクかDランクってとこだろうな。一人でやってきて返り討ちに合ったのか……」
ザガリンが険しい顔でつぶやく。
「お兄ちゃん、この依頼大丈夫かな……」
「へっ、大丈夫さ。こっちはおれとエメリア二人もDランクがいるんだ、用心しながらいけばホブゴブリンくらいどうってことないさ」
まるで自分を奮い立たせるかのようにザガリンが答えた。
「念のため言っとくがクロクロは戦わなくていいからな、もし万が一危なそうになったらおれたちのことは気にせず逃げろよ」
「そ、そうですよクロクロさん。わたしたちならきっとなんとかなりますから」
「あ、ああ」
ホブゴブリンか……前に倒したキングゴブリンよりは弱いはずだから俺ならおそらく倒せると思うんだけどな。
◇ ◇ ◇
俺たちは慎重に洞窟内を進んでいった。
洞窟の中は一本道がずっと続いていた。
「待て、止まれ。ホブゴブリンだっ」
ザガリンが口を開く。
ザガリンの言葉を受け前方を注視するとたいまつを持った大きめのゴブリンが数体確認できた。
「ほんとだ、一、二、三、四、五……六体もいるわよお兄ちゃん」
「ああ、さすがにあいつらを一度に相手にするのは厳しいからまずはエメリアが遠くから弓矢で倒してくれ。こっちに来るまでに半分に減らしてくれればあとはおれがなんとかしてみせるから」
「わかったわ、やってみる」
まだこっちに気付いていない様子のホブゴブリンを狙ってエメリアが静かに弓を引く。
次の瞬間びゅんと矢がものすごい速さで飛んでいき一体のホブゴブリンの頭部を貫いた。
『ギギッ!?』
『ギッ!?』
『ギギッ』
『ギギギッ』
『ギギギッ!』
それにより他のホブゴブリンたちが騒ぎ出す。
そしてその中の一体がこちらに気付いた。
「エメリア、次だっ!」
エメリアはザガリンが言うより早く二発目を放っていた。
エメリアの矢はまたしてもホブゴブリンの頭部を見事射抜く。
四体になったホブゴブリンが走って向かってきた。
エメリアは三発目を射るがその矢はホブゴブリンの顔をかすめて洞窟の奥へと消えていく。
「くっ」
ザガリンが斧を構えた。
襲い来るホブゴブリンを横になぎ払い二体のホブゴブリンのお腹を斬り裂いた。
その二体が地面に倒れるが残りの二体がザガリンにしがみつく。
「このっ、放せっ!」
『ギギギ!』
『ギギギッ!』
ザガリンの首元に噛みつこうとしてくるホブゴブリンたち。
それを必死に払いのけようとするザガリン。
あれ? まずいかな……?
手を出すなと言われていたがピンチっぽいので助太刀しようかと思ったその時、
「お兄ちゃんから離れなさいっ!」
エメリアが叫びながら至近距離からホブゴブリンの頭を撃ち抜いた。
すると、
「ナイス、エメリアっ! くらえっ!」
残り一体になったホブゴブリンをザガリンが斧を振り上げ真っ二つにした。
足元に転がったホブゴブリンたちの死体を見下ろし、
「ふぅっ……危なかったぜ」
「まったく、わたしがいなかったらやられてたわよ」
「サンキュー、エメリア」
二人で笑い合う。
なんだ……やっぱり俺の出番はないみたいだ。
「なんだこのにおいは、鼻が曲がりそうだぜっ……」
「ほんと、嫌なにおいね」
「おわっと……!」
「どうした? ザガリン」
突如妙な声を上げたザガリンに問いかける。
「いや、なんか変なもん踏んづけた気がする」
「変なもの?」
俺は持っていたたいまつでザガリンの足元を照らしてみた。
するとそこにあったのは、
「きゃぁっ!」
人間の死体だった。
ホブゴブリンに食い散らかされたかのような見るに堪えない状態で放置されている死体を見てエメリアがとっさに俺の腕を掴む。
「大丈夫か? エメリア」
「は、はい……すみません」
「見た感じ冒険者か……?」
ザガリンの言う通り着ている服などからその死体は冒険者のもののように見受けられた。
「ホブゴブリンにやられたってことは多分EランクかDランクってとこだろうな。一人でやってきて返り討ちに合ったのか……」
ザガリンが険しい顔でつぶやく。
「お兄ちゃん、この依頼大丈夫かな……」
「へっ、大丈夫さ。こっちはおれとエメリア二人もDランクがいるんだ、用心しながらいけばホブゴブリンくらいどうってことないさ」
まるで自分を奮い立たせるかのようにザガリンが答えた。
「念のため言っとくがクロクロは戦わなくていいからな、もし万が一危なそうになったらおれたちのことは気にせず逃げろよ」
「そ、そうですよクロクロさん。わたしたちならきっとなんとかなりますから」
「あ、ああ」
ホブゴブリンか……前に倒したキングゴブリンよりは弱いはずだから俺ならおそらく倒せると思うんだけどな。
◇ ◇ ◇
俺たちは慎重に洞窟内を進んでいった。
洞窟の中は一本道がずっと続いていた。
「待て、止まれ。ホブゴブリンだっ」
ザガリンが口を開く。
ザガリンの言葉を受け前方を注視するとたいまつを持った大きめのゴブリンが数体確認できた。
「ほんとだ、一、二、三、四、五……六体もいるわよお兄ちゃん」
「ああ、さすがにあいつらを一度に相手にするのは厳しいからまずはエメリアが遠くから弓矢で倒してくれ。こっちに来るまでに半分に減らしてくれればあとはおれがなんとかしてみせるから」
「わかったわ、やってみる」
まだこっちに気付いていない様子のホブゴブリンを狙ってエメリアが静かに弓を引く。
次の瞬間びゅんと矢がものすごい速さで飛んでいき一体のホブゴブリンの頭部を貫いた。
『ギギッ!?』
『ギッ!?』
『ギギッ』
『ギギギッ』
『ギギギッ!』
それにより他のホブゴブリンたちが騒ぎ出す。
そしてその中の一体がこちらに気付いた。
「エメリア、次だっ!」
エメリアはザガリンが言うより早く二発目を放っていた。
エメリアの矢はまたしてもホブゴブリンの頭部を見事射抜く。
四体になったホブゴブリンが走って向かってきた。
エメリアは三発目を射るがその矢はホブゴブリンの顔をかすめて洞窟の奥へと消えていく。
「くっ」
ザガリンが斧を構えた。
襲い来るホブゴブリンを横になぎ払い二体のホブゴブリンのお腹を斬り裂いた。
その二体が地面に倒れるが残りの二体がザガリンにしがみつく。
「このっ、放せっ!」
『ギギギ!』
『ギギギッ!』
ザガリンの首元に噛みつこうとしてくるホブゴブリンたち。
それを必死に払いのけようとするザガリン。
あれ? まずいかな……?
手を出すなと言われていたがピンチっぽいので助太刀しようかと思ったその時、
「お兄ちゃんから離れなさいっ!」
エメリアが叫びながら至近距離からホブゴブリンの頭を撃ち抜いた。
すると、
「ナイス、エメリアっ! くらえっ!」
残り一体になったホブゴブリンをザガリンが斧を振り上げ真っ二つにした。
足元に転がったホブゴブリンたちの死体を見下ろし、
「ふぅっ……危なかったぜ」
「まったく、わたしがいなかったらやられてたわよ」
「サンキュー、エメリア」
二人で笑い合う。
なんだ……やっぱり俺の出番はないみたいだ。
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