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第34話 Aランク冒険者相手についカッとなる
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掲示板の前には冒険者たちがたくさん集まっていた。
俺は人の波を縫うようにして掲示板の前まで移動するとそこに貼り出されていた依頼書を見る。
そんな俺の目に一番に飛び込んできたのはドラゴン討伐の依頼書だった。
[ギエルナ山に生息しているドラゴンの討伐 一体につき金貨三十枚 必須ランク:A 推奨ランク:S]
「おお、すごいっ。一体倒しただけで金貨三十枚か……」
でも必須ランクがAってことはAランクかそれより上のSランクの冒険者でないと受けられないってことだよな。
俺は冒険者になったばかりなのでまだ最底辺のEランク。とてもじゃないが手が届かない。
そこで俺はEランクの冒険者が受けられる依頼を探すことにした。
とその時、
「おら、どけっ!」
人の波を無理矢理かき分けて掲示板の前に大男がやってきた。
「ヤベっ、ゴードンだっ」
「ゴードンってAランクの奴だろ、たしか」
「マジかよ、本物だぜっ」
口々にゴードンと噂されていたその大男は俺を見下ろし「邪魔だチビがっ!」と押しのける。
……チビ?
俺は日本人の成人男性の平均身長はあるぞ。
太い腕で強引に押しのけられたこととチビとののしられたことに一瞬ムカっときた俺はそのゴードンとやらをついにらみ返してしまった。
すると、
「なんだお前、文句あんのかっ!」
ゴードンは俺の胸ぐらを掴み片手で軽々と俺を持ち上げる。
「ゴードンさま、おやめくださいっ。ギルド内での暴力行為は厳禁ですよっ」
「うるせぇ、知ったことかっ!」
止めに来たミレルさんをゴードンはもう一方の手ではじき飛ばした。
「きゃあっ」とミレルさんが床に尻もちをつく。
それにより俺はまた頭に血が上る。
「おい、ゴードンっていったか。俺とミレルさんに謝れ」
俺は持ち上げられた恰好のままゴードンの右手首を掴んだ。
「ああ? お前自分の立場がわかってねぇのかこらっ」
「いいから謝れ」
顔を寄せてくるゴードンの言うことを無視して俺はゴードンの手首を握る手に力を込めていく。
直後、
「なんだこの――痛、痛ててっ、痛ぇっ!? お、折れる折れるっ!!」
ゴードンは顔をゆがませながら俺の服から手を放した。
俺はゴードンの手首を掴んだまま床に着地する。
「謝れ」
「ぐああぁ……お前、放せぇっ!!」
ゴードンはたまらず左手で俺に殴りかかってきた。
だが俺はそれを微動だにせず額で受け止める。
「謝れ」
「わ、わかったっ! あ、謝るっ! 悪かった悪かったっ、お、あんたにもそこの嬢ちゃんにも悪かったって……! だから放してくれぇっ!」
体をよじらせ必死に懇願するゴードンを見て俺はゴードンの手首を放してやった。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」
すると手首を押さえつつゴードンは俺をにらみつけてくる。
しかし俺がにらみを利かすと途端に目を泳がせそそくさと立ち去っていった。
その様子を見ていた周りの冒険者たちが、
「ゴードンを追い返しちまったぞっ」
「なにもんだ、あいつ……?」
「ゴードンはAランクの冒険者じゃぞ、それをまるで赤子の手をひねるようにっ……」
ざわざわと騒ぎ出す。
……やってしまった。
俺は注目を浴びることに慣れていなかったのでそばに倒れていたミレルさんをすぐさま立たせると何事もなかったような顔をしてギルドをあとにするのだった。
俺は人の波を縫うようにして掲示板の前まで移動するとそこに貼り出されていた依頼書を見る。
そんな俺の目に一番に飛び込んできたのはドラゴン討伐の依頼書だった。
[ギエルナ山に生息しているドラゴンの討伐 一体につき金貨三十枚 必須ランク:A 推奨ランク:S]
「おお、すごいっ。一体倒しただけで金貨三十枚か……」
でも必須ランクがAってことはAランクかそれより上のSランクの冒険者でないと受けられないってことだよな。
俺は冒険者になったばかりなのでまだ最底辺のEランク。とてもじゃないが手が届かない。
そこで俺はEランクの冒険者が受けられる依頼を探すことにした。
とその時、
「おら、どけっ!」
人の波を無理矢理かき分けて掲示板の前に大男がやってきた。
「ヤベっ、ゴードンだっ」
「ゴードンってAランクの奴だろ、たしか」
「マジかよ、本物だぜっ」
口々にゴードンと噂されていたその大男は俺を見下ろし「邪魔だチビがっ!」と押しのける。
……チビ?
俺は日本人の成人男性の平均身長はあるぞ。
太い腕で強引に押しのけられたこととチビとののしられたことに一瞬ムカっときた俺はそのゴードンとやらをついにらみ返してしまった。
すると、
「なんだお前、文句あんのかっ!」
ゴードンは俺の胸ぐらを掴み片手で軽々と俺を持ち上げる。
「ゴードンさま、おやめくださいっ。ギルド内での暴力行為は厳禁ですよっ」
「うるせぇ、知ったことかっ!」
止めに来たミレルさんをゴードンはもう一方の手ではじき飛ばした。
「きゃあっ」とミレルさんが床に尻もちをつく。
それにより俺はまた頭に血が上る。
「おい、ゴードンっていったか。俺とミレルさんに謝れ」
俺は持ち上げられた恰好のままゴードンの右手首を掴んだ。
「ああ? お前自分の立場がわかってねぇのかこらっ」
「いいから謝れ」
顔を寄せてくるゴードンの言うことを無視して俺はゴードンの手首を握る手に力を込めていく。
直後、
「なんだこの――痛、痛ててっ、痛ぇっ!? お、折れる折れるっ!!」
ゴードンは顔をゆがませながら俺の服から手を放した。
俺はゴードンの手首を掴んだまま床に着地する。
「謝れ」
「ぐああぁ……お前、放せぇっ!!」
ゴードンはたまらず左手で俺に殴りかかってきた。
だが俺はそれを微動だにせず額で受け止める。
「謝れ」
「わ、わかったっ! あ、謝るっ! 悪かった悪かったっ、お、あんたにもそこの嬢ちゃんにも悪かったって……! だから放してくれぇっ!」
体をよじらせ必死に懇願するゴードンを見て俺はゴードンの手首を放してやった。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」
すると手首を押さえつつゴードンは俺をにらみつけてくる。
しかし俺がにらみを利かすと途端に目を泳がせそそくさと立ち去っていった。
その様子を見ていた周りの冒険者たちが、
「ゴードンを追い返しちまったぞっ」
「なにもんだ、あいつ……?」
「ゴードンはAランクの冒険者じゃぞ、それをまるで赤子の手をひねるようにっ……」
ざわざわと騒ぎ出す。
……やってしまった。
俺は注目を浴びることに慣れていなかったのでそばに倒れていたミレルさんをすぐさま立たせると何事もなかったような顔をしてギルドをあとにするのだった。
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