上 下
48 / 118

第48話 真相

しおりを挟む
しばらくすると笹倉さんから画像付きのメールが届いた。
その画像には柊麻衣という女子生徒の顔が写っていた。

小学校の卒業アルバムの写真だそうだがこれで一応顔と名前は手に入れたわけなので千里眼が使えるかどうか早速試してみる。

「ンガリンセ」

呪文を唱えると柊麻衣が学校で部活に励んでいる様子がまぶたの裏に映った。
おそらく陸上部なのだろう、トラックをかなり速いスピードで走っている。
活発そうな女子に見える。

この柊麻衣なら笹倉由紀子の周りで何が起きていたか、相談に乗っていた可能性もあるということで俺は調べることにしたわけだった。

女子高に乗り込んで話を聞くわけにはいかないので、とりあえず部活が終わるまでそのまま待つことに。


◇ ◇ ◇


日も陰ってきた頃、柊麻衣が下校するのと同時に俺はマスクを装着してアパートを出た。

柊麻衣は一人で自転車を走らせている。
俺はその様子を監視しながらあとを追った。

数分後、柊麻衣は自宅へとたどり着いた。
家の裏に自転車を置いてから玄関へと回る。
鍵を取り出してドアを開けているところを見るとどうやら家には柊麻衣以外は誰もいないようだ。


俺は柊麻衣の家の前まで来ると防犯カメラがあるかどうかを確認する。

「……ないか」

この辺りは田舎なのでさすがに個人宅で防犯カメラを設置している家はまだまだ少ない。
俺にとっては好都合だ。

ピンポーン。

俺は迷いなくチャイムを鳴らした。

「はーいっ」
家の中から明るい声がしてガチャッとドアが開かれる。
もちろんその声の主は柊麻衣本人だった。

「初めまして、こんにちは」
「あ、はい。こんにちは……」
俺を訝しそうに見ながらも柊麻衣はそう返した。

「僕は小杉という者です。探偵をやっています」
「た、探偵さんですか……? え、探偵さんがうちに何か用なんですか……?」
「ええ、実は笹倉由紀子さんの自殺の真相について調べているのですが、どんな些細なことでも結構です。知っていることがあったら教えていただけませんか?」
「えっ!?」
俺の言葉を受け柊麻衣は動揺した様子で声を上げる。

「そ、そうなんですか……で、でもなんでわたしに……? わたしはクラスも違うし、な、何も知りませんよ……」
そう答えるも既に読心の呪文を発動していた俺には柊麻衣の頭の中がはっきりと読めていた。

なので、
「桐原京子ですか。その女子生徒がいじめていた張本人なんですね」
「な、なんでそれをっ……」
「今あなたが頭に思い浮かべたじゃないですか」
俺は簡単にいじめていた加害者の名前を知ることが出来たのだった。

「あなたのことは誰にも言いませんからすべて話してもらえませんか? 笹倉由紀子さんとそのご両親とそれから飛島亜香里さんのために」
「……」
足元に視線を落とし黙りこくる柊麻衣。

「笹倉由紀子さんと仲がよかったんですよね?」

すると意を決したように柊麻衣が顔を上げる。
そして唇をひと噛みしてから語り出した。

「……飛島さんは由紀子をいじめてはいません。由紀子をいじめていたのは探偵さんが言ったように桐原京子です。由紀子は優等生タイプで目立っていたので桐原京子の癇に障ったんだと思います。だから桐原京子は学校裏サイトで由紀子を貶めるようなことばかり書いて周りを煽っていったんです。なんの関係もない飛島さんの名前を使って」
「それをどうしてあなたは知っているのですか? いじめられていた由紀子さん自身もいじめていたのは飛島亜香里さんだと思っていたのに」
「そ、それは、桐原京子本人がわたしにそう言ったんです。悪びれもせずに。わ、わたしと彼女は同じ陸上部なのでそれで……」

柊麻衣の頭の中を覗くとどうやら桐原京子はクラスの一軍のリーダー格のような存在らしい。
その上で柊麻衣は自分に火の粉が降りかかるのを恐れて今まで口を閉ざしていたようだ。

「よくわかった。ありがとう」
「あ、あの本当にわたしが喋ったっていうことは秘密に――」
「ヨキウヨシクオキ」
「え?」

俺は昨日ガラの悪い男二人組を殺した時にレベル15になっており、その際に新たな呪文を一つ覚えていたのだった。
その呪文は消費MP25の記憶消去というもの。
まだ誰にも試したことはないので俺は柊麻衣を前に今初めて口にしたのだが。

その呪文を受けた柊麻衣はというと、
「あ、あのう、すみませんがどちら様ですか?」
さっきまでのやり取りをすっかり忘れ俺にそう訊ねてくる。
ここ五分ほどの記憶が完全に消えているようだった。

「あ、すみません。こちら釘宮さんのお宅では?」
「い、いえ、違いますけど……」
「あ、そうですか、すみませんっ。家を間違えてしまいました。失礼します」
「は、はい……」

俺はこうして何事もなかったように柊麻衣の家をあとにすると直後笹倉さんに連絡を入れた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

【魔物島】~コミュ障な俺はモンスターが生息する島で一人淡々とレベルを上げ続ける~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
【俺たちが飛ばされた魔物島には恐ろしいモンスターたちが棲みついていた――!?】 ・コミュ障主人公のレベリング無双ファンタジー! 十九歳の男子学生、柴木善は大学の入学式の最中突如として起こった大地震により気を失ってしまう。 そして柴木が目覚めた場所は見たことのないモンスターたちが跋扈する絶海の孤島だった。 その島ではレベルシステムが発現しており、倒したモンスターに応じて経験値を獲得できた。 さらに有用なアイテムをドロップすることもあり、それらはスマホによって管理が可能となっていた。 柴木以外の入学式に参加していた学生や教師たちもまたその島に飛ばされていて、恐ろしいモンスターたちを相手にしたサバイバル生活を強いられてしまう。 しかしそんな明日をも知れぬサバイバル生活の中、柴木だけは割と快適な日常を送っていた。 人と関わることが苦手な柴木はほかの学生たちとは距離を取り、一人でただひたすらにモンスターを狩っていたのだが、モンスターが落とすアイテムを上手く使いながら孤島の生活に順応していたのだ。 そしてそんな生活を一人で三ヶ月も続けていた柴木は、ほかの学生たちとは文字通りレベルが桁違いに上がっていて、自分でも気付かないうちに人間の限界を超えていたのだった。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

【完結】投げる男〜異世界転移して石を投げ続けたら最強になってた話〜

心太
ファンタジー
【何故、石を投げてたら賢さと魅力も上がるんだ?!】 (大分前に書いたモノ。どこかのサイトの、何かのコンテストで最終選考まで残ったが、その後、日の目を見る事のなかった話) 雷に打たれた俺は異世界に転移した。 目の前に現れたステータスウインドウ。そこは古風なRPGの世界。その辺に転がっていた石を投げてモンスターを倒すと経験値とお金が貰えました。こんな楽しい世界はない。モンスターを倒しまくってレベル上げ&お金持ち目指します。 ──あれ? 自分のステータスが見えるのは俺だけ? ──ステータスの魅力が上がり過ぎて、神話級のイケメンになってます。 細かい事は気にしない、勇者や魔王にも興味なし。自分の育成ゲームを楽しみます。 俺は今日も伝説の武器、石を投げる!

僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた

楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。 この作品はハーメルン様でも掲載しています。

処理中です...