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 第27章 ソーロン帝国の秘密編

2712.竜人族の望み

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 私、ムーンは、赤の竜人ルーブロマ・ドラコとの取引を果たすために、リンダにソーロン帝国の人里離れた森林を購入させた。
 そして、そこに竜人族の住む屋敷を土魔法で、創った。普段は、人間の姿をしている竜神だが、休む時には、元の姿に戻る必要があるらしい。そのため、翼を広げることができる広大な土地が必要であった。
 赤の竜人ルーブロマ・ドラコへの引き渡しの準備が整ったときに、私は、もう一度、マリー達を連れて、遺跡から赤の竜人ルーブロマ・ドラコに会いに転移魔法用の魔法陣を起動した。

 「赤の竜人ルーブロマ・ドラコ、待たせたね」

 「いや、時間は、気にならない。1週間など、ほんの一瞬の出来事だ」

 「先日の約束通り、ソーロン帝国の敷地内に住居を用意した。いつでも、住めるよ」

 「ありがたい。対価は?」

 「今回は、顔つなぎだと思って貰えればいい。次回から、対価を頂く」

 「ほお、太っ腹だな」

 「それでは、今後ともよろしく頼む」

 「何なりと、申し付けて貰いたい」

 私は、思念伝達が使えることを確認しておくことにした。

 「赤の竜人ルーブロマ・ドラコは、思念伝達ができますか?」

 「もちろん、ここで、試してみるか?」

 「はい、お願いします」

 私は、思念伝達で、赤の竜人ルーブロマ・ドラコに連絡を取った。

 「ムーンです。わかりますか?」

 「ふむ、よく聞こえるぞ」

 「今後は、この方法で、連絡をお願いします。よろしいでしょうか?」

 「我も、この方が都合が良い」

 「それから、私の代理として、マリーからも、連絡を取ることを許して貰いたい」

 「構わぬ。そちの横に居るのが、マリーか?」

 「はい、私の右隣にいるのが、マリーです。よろしくお願いします」

 マリーは、赤の竜人ルーブロマ・ドラコに向かって、頭を下げた。

 その後、赤の竜人ルーブロマ・ドラコから、竜人族について、詳しく話を聞くことが出来た。魔大陸の北に領土を持ちソーロン帝国と隣接しているのが、赤の竜人ルーブロマ・ドラコが率いる竜人族で、それ以外に、青の竜人カエロレウマ・ドラコ緑の竜人ビーリディス・ドラコ銀の竜人アルチェンティ・ドラコ金の竜人ペコーニア・ドラコ達が率いる竜人族がいるということだ。
 ただ、彼らがどこに領土を持っているのかは、教えて貰えなかった。

 私は、マリーに指示をして、2日に1度は、赤の竜人ルーブロマ・ドラコに思念伝達で、連絡を入れさせることにした。そして、どんな些細なことでも、洩らさず、報告させることにした。というのも、赤の竜人ルーブロマ・ドラコの本当の狙いがまだ、掴めないからだ。
 
 以前、赤の竜人ルーブロマ・ドラコは、私に、魔王の首を所望した。そして、その時に雰囲気は、単なる冗談とは、思えないような感じがした。本気で、魔王軍と一戦を構えようとしていると思われた。
 そして、今回は、ソーロン帝国の領土内に自分たちの領土を確保させた。おそらく、ソーロン帝国への進軍のための足掛かりにするつもりだろう。
 私は、戦争の加担をしたことになるが、それでも、構わないと思っている。以前、賢者サビオがされた裏切りを思えば、ソーロン帝国への攻撃は、私自身が行っても良いと思えるぐらいだ。だから、竜人族に加担して、ソーロン帝国を滅ぼしても構わないと思っている。ただ、私の知り合いも多くいるので、殲滅するのは、避けて貰いたい。

 ヘノイ王国の光魔法治療学院の学院長のサルビアから連絡があった。生徒募集も順調に行っており、今学期から、本格的に授業が開始されるということだ。魔法学院の卒業生のサーキや神殿から引き抜いた神官達が教師として、指導をしているということだ。

 これで、ヘノイ王国の光魔法治療学院は、軌道に乗ったと考えてもよさそうだ。サルビアの後継者の件は、まだ、解決できていないが、もう暫くは、我慢してもらうことにする。
 
 いよいよ、イーデン王国のカーブム国王に依頼された病気自体を勉強する機関を作ることにした。私は、ホータルに思念伝達で連絡を取って、カーブム国王への面会を取り次いでもらうことにした。そして、ムーンから、ルナに姿を変えた。

 「カーブム国王、以前依頼された病気を研究する機関の設立の準備が出来ました」

 「ルナ、誠か?」

 「はい、準備が整いました。光魔法治療学院という名前では、どうでしょうか?」

 「光魔法治療学院か、ちと長いな。イーデン治療学院とせよ」

 「はい、分りました。それでは、早速、始めさせて頂きます」

 「他国では、ペストが流行り出したと聞くが、間に合うのか?」

 「はい、大丈夫です。イーデン王国には、立派な下水道施設があります。そして、神殿の神官達による予防も行っているので、大規模な感染症の流行は避けれると思っています」

 「そうか、頼むぞ」

 「はい、お任せください」

 私は、イーデン王国のカーブム国王の許可を得て、イーデン治療学院の設立に乗り出した。すでに、ヘノイ王国での実績があるので、それほど、手間はかからなかった。

 1ケ月後には、カーブム国王みずからのお披露目会を開く事が出来た。これで、カーブム国王のルナへの信頼は、更に高まった。いよいよ、イーデン王国の王族の中に潜り込む足場が完成した。これからが、本当の腕の見せ所だ。
  
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