上 下
216 / 270
 第26章 ガーベラの夢編

2604.ガーベラへの依頼

しおりを挟む
 ガーベラに他国からの相談が入った。それは、イーキ王国からだった。イーキ王国はフラン連合国の中にある西端の国になるが、農業中心の国だ。

 イーキ王国で、謎の病気が発生した。リンパが腫れあがり、激しい痛みを訴えたり、突然に高熱になったり、頭痛や悪寒などを訴えている。
 
 イーキ王国では、セダン魔法学院の学院長であるコ―メンを中心に、治療に当たっているが、症状を緩和するだけにとどまり、病気を治療するには至っていない。そこで、交流のある我が国の魔法学院の学院長シルバに相談が入り、その結果、ガーベラが知ることになった。

 ガーベラからの思念伝達で、連絡が入ったので、私は、急いで、転移魔法で、ガーベラのいる城に移動した。

 「ガーベラ、ある程度は、聞いたけど、どうするの?」

 「どうも、イーキ王国では、手の打ちようがないみたい。だから、支援に行かせようと思っているの」

 「それは、いいが、シルバにも、対応は難しいと思うよ」

 「それなら、誰を派遣したらいいの?」

 「医者が必要だよ。魔法での治療は、限界があると思う。症状を緩和するのは、魔法でもいいが、イメージできないので、完治させることができないよ」

 「私の国でも、優秀な医者は、いないわ」

 「そうだね。まだまだ、育成出来ていないね」

 「私が、率先していかないとだめかも」

 「それは、だめだ。ガーベラ、今の自分の身体の事はわかっている?」

 「そうね。本当は、行きたくないわ」

 「それなら、僕が行くよ」

 「でも、ムーンは、忙しいでしょ」

 「まあ、行ってから、考えるよ」

 「気を付けてね」

 「わかった」

 私は、ガーベラと別れて、直ぐに、シルバの所に転移魔法で、移動した。

 「シルバ、連絡を受けたよ。僕が、イーキ王国で、治療に当たるよ」

 「ありがとう。私の方も、できるだけ、支援するわ」

 「何か、必要な事があれば、また、連絡するよ」

 私は、シルバと別れて、イーキ王国の魔法学院の近くにあるテラ・ワールドの支店に、転移魔法で、移動した。そこから、魔法学院に向かった。

 魔法学院に到着すると、慌ただしく、教師や生徒が働いていた。白魔法が使える者が先頭に立って、治療魔法を患者に放っていた。

 「傷よ治れ。治癒魔法ヒール

 治癒魔法の詠唱が、至る所から、聞こえてくる。もう、教師も生徒も、限界の様だ。患者は、一時的に症状が緩和されるが、治っていないので、直ぐに、痛みを訴えている。

 「すみません。ヤガータ国から来た、ムーンと言います。学院長に会いたいのですが」

 私の声が聞こえたようで、少し手が空いた教師がやって来た。

 「ムーンさんですか? 学院長から、聞いています。こちらにどうぞ」

 私は、やって来た教師に学院長室まで、案内して貰った。

 「コン、コン。ムーンさんをお連れしました」

 「入って貰ってくれ」

 「どうぞ」

 私は、学院長室に入って行った。学院長は、憔悴していた。今にも、倒れてしまいそうだった。

 「ヤガータ国から、来ましたムーンと言います。よろしく」

 「やあ、すまないね。私共では、もう、手の施しようがない」

 「わかりました。まず、患者の様子を見せてください」

 「分かった。案内させよう」

 私は、先ほどの教師に案内されて、患者がいる部屋に遣って来た。多数の患者が、部屋の中の至る所にいた。そして、症状も、違っていた。

 嘔吐や筋肉痛に悩まされている者、身体が紫色の斑点が出来ている者、激しい咳をしている者、そして、既に死んでしまった者が、一つの部屋にいた。

 「まず、部屋を複数用意してください。そして、症状に合わせて、移動してください」

 「分かりました。でも、どのような症状でしょうか?」

 「死体は、どこかに運んで、火葬にしてください」

 「激しい咳をしている者は、もっとも、重症なので、1つの部屋にまとめてください。次に、身体が紫色の斑点が出来ている者を別の部屋に、そして、最後に身体に痛みがあるだけの者を一つの部屋に移動してください」

 「はい、直ぐにやります」

 「それが、終わったら、一度、すべての教師と、生徒を食堂に集めてください」

 「はい」

 私は、食堂に行き、これからの準備を始めた。私は、案内されている間に、スキル鑑定で、病気を調べていた。それによると、腺ペスト、敗血症型ペスト、肺ペストの病態の患者が混在していた。

 まずは、防護服の用意をした。土魔法で、防護服を作り、頭からすっぽり被る事事が出来る様にした。それから、闇魔法で、バリアで覆い、ペスト菌が侵入しないようにした。

 教師の数や、生徒の数が分からないので、取り敢えず、50個作ることにした。これを着た者だけが、患者に接するようにして貰う。そして、他の者と接触する前に、火魔法で、防護服ごと焼却してもらう。防護服は、大丈夫なので、防護服に着いたペスト菌を殺すためだ。

 次に、ショーバェに思念伝達で、連絡を取った。

 「ショーバェ、ムーンだけど、至急、ストレプトマイシンが大量に必要だ。今、イーキ王国の魔法学院にいるので、送ってくれ。それから、ストレプトマイシン用の神具も一緒に送ってくれ」

 「伝染病ですか?」

 「そうだ。ペスト菌だ」

 「分かりました。至急、送ります」

 ショーバェとの思念伝達を切って、次に、リンダと思念伝達で、連絡を取った。

 「リンダ、ムーンだけど、お願いがあるんだ。そちらに居る梅毒の治療が出来る者を10人必要なんだ」

 「分かったわ。どこに派遣したらいいの?」

 「イーキ王国のセダン魔法学院の近くの支店に派遣して欲しい。私は、セダン魔法学院にいるので、そこまで、行くように指示してくれ。それから、神具は、必要だから、持参させてくれ」

 「直ぐに、手配するわ」

 私は、リンダとの思念伝達を切って、食堂に入って来た教師や、生徒を眺めていた。これから、戦争だな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

美しい姉と痩せこけた妹

サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

冷宮の人形姫

りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。 幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。 ※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。 ※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので) そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。

桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。 「不細工なお前とは婚約破棄したい」 この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。 ※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。 ※1回の投稿文字数は少な目です。 ※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。 表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年10月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 1ページの文字数は少な目です。 約4500文字程度の番外編です。 バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`) ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑) ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた

杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。 なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。 婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。 勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。 「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」 その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺! ◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。 婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。 ◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。 ◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます! 10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!

処理中です...