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 第12章 魔法学院(見学)編

1207.レイカの夢

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 今日は、昼からの授業がないので、レイカと一緒に街に出かけることにした。

 「レイカ、何処へ行きたい?」

 「私は、何処でもいいよ」

 レイカは、貴族エリアで生活してきたようなので、今日は、貴族エリアで、デートをすることにした。

 「いつもは、どの店にはいるの?」

 「わたし、一人では、出かけないの。だから、店も入ったことないよ」

 「どういうこと? どの店も入ったことないの?」

 「そうよ。だめなの?」

 「いいや、大丈夫だよ。レイカは、服はどうやって決めるの?」

 「誰かが、買って来ているの。それの中から、着るだけよ。私は、選ばないよ」

 「そうなんだ。では、今回の魔法学院の入学も親が決めたのかな?」

 「そうじゃないの。魔法学院の入学は、自分自身で決めたの」

 「そうなんだ。何か理由があるの?」

 私達は、近くの店で、何か飲むことにした。二人で、店に入っていった。

 「特に、理由はないよ。魔法に関しては、いつも褒めて貰えていたから、それで決めたの」

 「そうか。あっ、此処に座る?」

 「いいわ」

 「すみません。ケーキセットを2つ下さい」

 「はい、只今」

 店員が来て、メニューを見せてくれた。それぞれ、ケーキと飲み物を注文した。

 「いつもは、一人で、魔法の練習をしているの?」

 「ううん。魔法の練習はしないよ。この学院に来て、初めてよ」

 「そうか、練習無しで、そんなにできるのか。凄いね。僕なんか、練習、練習で、やっと、此処まで出来る様になったんだ」

 「ふーん。そうは見えなかったけど、意外に苦労しているのね」

 「そうだよ。基本、私は一人だから、すべて、一人でやっていかないといけないんだ」

 「えっ、テラは、家族いないの?」

 「そうだよ。家族はいないよ。スピアが唯一の家族みたいなものだね」

 「そうなだ。寂しくない?」

 「今までは、感じた事がなかったけど。最近、少し、寂しい時があるね」

 「寂しい時は、いつでも言ってよ。私でよかったら、慰めてあげるよ」

 「ありがとう。レイカは、親切だね」

 「そんなことないよ。テラ、だからね」

 「レイカは、魔法学院を卒業したら、どうするの? この国で、3年間働くことになるけど」

 「まだ、何も考えていないわ。光魔法が使えるから、白魔導士で、治療関係の仕事に就こうかと思っていたの」

 「良いと思うよ。レイカは、優しいから、白魔導士が似合うと思うよ」

 「嬉しい。でも、別の仕事にしようかと思っているの」

 「どうして?」

 「ミュー先生の授業についていけないの。だから、光魔法が使えるけど、素質がないのかなぁって」

 「レイカは、この魔法学院の中では、一番だよ。もっと、自信を持っていいよ」
 
 「でも、今日は、散々だったわ。あっ、そう言えば、今日の授業さぼったの?」

 「うん、ちょっとね」

 「今日は、どんなことしたの。教えて?」

 「怪我をした兵士が3人運ばれて来て、私達が治癒魔法で治す練習をしたの」

 「そうか、実戦練習だね。難しいよね。実戦って」

 「えっ、そうなの? 難しいの?」

 「予め、決められた魔法を起動するだけでも大変なのに、どの魔法を使えばいいか、考えなければならないって、初級じゃやらないよ」

 「そうだったの。私、初級光魔法の講座だから、簡単な実習だのに失敗したと思って、落ち込んでいたの」

 「そうか、レイカは、実践が初めてだったんだね」

 「うん。初めてだったの。だから、治癒魔法って、一つしか知らなくて。でも、その魔法では、兵士さんを治せなかったの」

 「それは、無理だよ。1つの治癒魔法では、一つの病気が治せるだけだよ。もっと、上位の治癒魔法なら、別だけど。初級の治癒魔法では、無理だよ」

 「そうなんだ。それじゃ、落ち込まなくてもいいの?」

 「まあ、今はいいけど。もっと、スキルアップは、した方がいいよ。白魔導士は、夢なんでしょ」

 「できれば、なりたいの」

 「そうだ。ちょっと、実験してみようか」

 「どんなこと?」

 「ちょっと、待ってね。すみません」

 私は、店員を呼び、蓋つきのポットを2つ用意してもらった。そして、その中に、1つには塩を、もう一つには、砂糖を入れて貰った。

 「さあ、レイカ。ここに同じポットが2つあるね。これをしっかり見てくれる」

 「見るだけでいいの?」

 「見ながら、何が入っているのかなぁ、って、考えてくれる」

 「うん。いいよ。やってみる」

 レイカは、素直に2つのポットを見つめている。私は、レイカの真剣な顔を見つめていた。結構、可愛いじゃないか。

 「うん。しっかり、見たよ」

 「それじゃ、中身を教えて?」

 「こっちのポットが、塩ね。それで、こっちのポットが、砂糖ね」

 「正解。やったね」

 「この遊びが何の役に立つの?」

 「まあ、騙されてと思って、これから、中身の分からない物を見つけたら、何が入っているのかって、思いながら、見つめてごらん。そしたら、大抵の物は、中身がわかると思うよ」

 「うん。やってみる」

 レイカは、真剣な目で、私を見つめている。見つめながら、何か呟いている。よく聞いてみると。

 「何が入っているのかなぁ?」

 この言葉を繰り返しながら、私を見つめていた。これは、ヤバいかも。いつまで、隠し通せるか、自信がない。
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