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第4章

9話:武神祭4

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 その日は終わり、大会も一日休息となった。
 決勝では、互いに最高のコンディションを発揮できるようにと、運営側の配慮なのだろう。
 空いた一日は、リリアも一緒に街を見て回っていた。
 路上でパフォーマンスをする者、吟遊詩人が歌っていたりと、賑わいを見せている。
 中でも多かったのは、決勝でどちらが勝つかの話しだったが、俺には興味がない。熱い戦いを見せてほしいものだ。

 翌日の夕方、日が沈みかけた頃、決勝戦が始まろうとしていた。
 場内の熱気は最高潮に達し、誰もがこの一戦の行方を見守っている。

『皆様、お待たせしました! ついに、武神祭決勝戦の幕が上がります! ここに立つのは、全ての試合を勝ち抜いた最強の二人! 己の全てをかけ、最強の座を賭けた一戦。頂へと至は一体どちらなのか⁉ ――それでは、決勝戦開始です!』

 決勝に進んだのは、先ほど勝利した剣士と、二試合目で見事に相手を破った魔法使いだった。観客席からも「頑張れ!」という声援が飛び交い、全員が固唾を飲んで見守っている。

「剣と魔法の激突か……これは本当に、最高の見ものになりそうだな」
「そうだな。どちらも戦い方の癖を熟知し、それをどう生かすかが鍵だろう」

 エイシアスも興奮を隠せないようだ。
 ゴングの音が響き、決勝戦が始まった。剣士が素早く魔法使いに距離を詰め、強烈な一撃を繰り出すが、魔法使いもすかさず防御魔法を展開し、それを防ぐ。
 さらに魔法使いは間を取りながら詠唱を続け、強力な攻撃魔法を繰り出そうとしている。

 剣士は間合いを詰め、魔法使いの詠唱を止めようとするが、魔法使いも俊敏に動きながら魔法を放つ。その度に閃光が走り、雷鳴が響き、まるで天地が揺れ動くような壮絶な戦いが繰り広げられる。
 やがて、観客席からも感嘆の声が上がり、エイシアスも目を輝かせていた。

「これほどの熱い戦いを見られるとは……この場にいる全員が、この一瞬のために集まったのだな」
「本当に。これが武神祭の醍醐味だな」

 試合は長引き、最後の力を振り絞った剣士が渾身の一撃を繰り出し、魔法使いの盾を突き破る。
 剣士が勝利の瞬間を掴むと、場内は大歓声に包まれ、観客は皆、彼を称える拍手を惜しまなかった。

『つ、ついに決まったぁぁあ! 数多の強者たちを打ち倒し、頂点に立ったのは――剣士だぁぁあ!』

 アナウンスが鳴り響くと、剣士が誇らしげに拳を掲げ、勝利の証をその手に握りしめると、観客席は興奮と喜びで溢れ返った。
 武神祭の最高潮にふさわしい幕引きで、全ての戦いが終わりを告げた。

「それでは最後に、皇帝陛下よりお言葉を頂きたいと思います!」

 会場が静まり返る中、皇帝カリオスがゆっくりと立ち上がり、優勝者の剣士に向けて力強い声で語りかけた。

「見事だ、剣士よ。貴公は幾多の戦士たちを前にしても怯まず、己の信念を貫き通し、勝利を掴んだ。その剛勇と技量、そして揺るぎない精神――すべてにおいて、貴公は誇るべき戦士である」

 剣士は膝をつき、頭を垂れながら、静かに皇帝の言葉を受け止めていた。

「戦いを極め、栄冠を手にした貴公の名は、このアルグラシアに永遠に刻まれることだろう。そして、貴公が今後もさらに高みを目指し、名誉と誇りを持って戦い続けることを願っている」

 カリオスは優しげな微笑みを浮かべ、剣士に歩み寄り、肩に手を置いた。そして、柔らかな声で続ける。

「貴公の勇気と力が、我が国、そしてこの世界に更なる光をもたらすことを期待している。この勝利は、貴公だけのものではない。我々全ての誇りだ」

 剣士は感謝の言葉を口にしようとしたが、感動に胸を打たれ、ただ深く頭を下げるばかりだった。
 会場からは惜しみない拍手が送られ、皇帝の称賛の言葉と剣士の勝利の余韻が、観客の心に深く刻まれた。

 閉会式が始まった。
 武神祭の全日程が無事に終わり、壮大な閉会式が幕を開ける。
 会場には観客が最後の熱狂と共に集まり、戦いの興奮と感動がまだ消えない空気が漂っていた。
 カリオスが立ち上がり、会場全体を見渡しながら高らかに宣言した。

「皆の者、本年もこの武神祭を無事に終えられたこと、心より感謝する。戦士たちよ、貴公らの勇敢な戦いがこの地に新たな栄光と熱意をもたらした。そして観客の皆々も、熱い応援を惜しみなく送り、武神祭をともに盛り上げてくれたこと、誠に感謝する」

 静かだった会場から、やがて拍手が沸き起こり、徐々にそれは大きな歓声となって会場を包み込んだ。

「本年の武神祭は、例年にも増して白熱し、数々の勇者がその名を刻んだ。剣士、魔法使い、騎士、全ての参加者が全力で己を賭して戦い、その魂を我々に示してくれた。彼らの闘志は、これからもこのアルグラシアの誇りであり続けるだろう」

 カリオスは一拍おいてから、続ける。

「そして、また来年、この地で新たな強者たちが集うことを願っている。戦いは終わったが、武神祭の精神は我らの心の中で生き続ける。名誉を目指し、限界を超えようとする者たちの魂が、この国と共に在る限り、武神祭もまた続いていく」

 その言葉に会場全体が静まり返り、やがてゆっくりと、そして力強く拍手が巻き起こった。
 各々がその余韻に浸りながら、今回の武神祭の激闘と熱気を思い返しているようだった。

「では――今年の武神祭はこれにて閉幕とする。皆の無事な帰還を祈りつつ、また来年、この地で再び会おう!」

 カリオスの締めくくりの言葉と共に、空には花火が打ち上がり、夜空を鮮やかに彩った。
 観客や戦士たちは最後の瞬間を惜しむように、笑顔と感動の声を上げ、名残を惜しんでいた。
 こうして、アルグラシアの街で開催された第十回武神祭は、盛大な拍手と祝福の中、幕を閉じた。
 俺は隣のエイシアスを見て微笑みかけた。

「来年もまた、こうして共に戦士たちの熱い戦いを見届けよう」
「そうだな。だが、来年こそは……私たちも――」

 意味深な笑みを浮かべるエイシアスの言葉に、俺も笑みを返しながら肩をすくめた。
 観戦としての楽しみはこの日で終わり、来年の武神祭に新たな期待と興奮が芽生えたのだった。
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