上 下
9 / 84
第1章

9話:盗賊が現れた!

しおりを挟む
 早朝、俺たちが入ってきた場所とは真逆の門に向かうと、商人だろう馬車が集まった一団があった。
 依頼を受けた冒険者だと話すと代表だろう人に合わせてくれた。

「本日は依頼を受けてくださりありがとうございます」
「俺はテオ。こっちは連れのエイシアスだ。俺たちも王都に行こうとしていたところだ。だから気にしないでくれ。それで」
「はい。馬車は三台。あちらにあなた達とは別に受けた冒険者がおりますよ」
「わかったよ。ありがとう」
「はい。よろしくお願いします」

 俺たちは集まっている冒険者のところに向かい声をかける。

「あんたらが依頼を受けた冒険者か?」

 男性二人、女性二人のパーティのようだ。

「ん? もう一つのパーティはあんたらか--ってえらい別嬪さんを連れているな。噂の二人組ってもしかして……」

 男たちが俺とエイシアスを見てまさかといった表情だ。

「まあ、な。連れが迷惑をかけた」
「主よ、なぜ私なのだ? 弱いやつが悪い」
「少しは悪く思えよ……」

 俺は大きな溜息を吐く。

「それで俺たちは前二台の場所を守ろうと思うが、二人は後ろで大丈夫か?」
「それでいい」

 それから自己紹介と少しの雑談をして馬車が王都に向けて出発した。
 一緒に乗っている商人の話しでは王都までは三日とのこと。

「赤丸ならすぐ着くのだがな。馬車の何がいいんだか」
「こうやってのんびり旅をするのがいいんだ。その方が旅をしている感じがするだろう?」
「私には理解できなんな」
「さようで」

 一日目は何事もなく終わった。
 二日目の昼時。

「ん?」

 横になって昼寝していた俺はふと目が覚めた。
 一緒に横になっていたエイシアスも目が覚めたようだ。

「魔物ではないな」
「だね」

 俺の言葉にエイシアスが頷いた。
 商人に伝えると、すぐに戦闘の馬車に伝えられ警戒しながら進むことに。
 エイシアスは再び目を瞑ってしまった。
 しばらくすると馬車は二十人の盗賊に囲まれた。

「荷物すべてを置いてけ、抵抗しなければ命だけは助けてやるさ」

 なんとも胡散臭い。

「アニキ、あの女はどうします?」
「ん~?」

 エイシアスに顔が向けられ、笑みが深まった。
 盗賊が何を考えたかは理解できる。
 エイシアスもその視線を感じて不快さを顔に出す。

「そこの女。お前は抵抗しなければ――」
「喋るな」

 指を鳴らすと口を開いた盗賊の首が弾けた。
 うん。容赦ないけど、当然だよね。
 目の前の光景にすべての者が押し黙った。前方でも見えていたのか場が静かになる。

「俺は前のやつらをやってくる」
「わかった」

 俺は移動する。

「ま、魔法使いの女を先に殺せ!」

 盗賊の合図で戦闘が始まった。
 始まったのだが、エイシアスがいた場所からは悲鳴が聞こえた。

「盗賊は任せて馬車を護衛してくれ」
「だがあんたはFランクだろ! この数を相手に無茶だ!」
「そうよ。私たちも戦うわ!」
「いいって。すぐ終わるから」

 盗賊は先頭に立った俺に向けて剣を振るった。

「死ねぇ!」
「話の邪魔をするな」

 殴り飛ばすと盗賊の上半身が消し飛んだ。
 血は重力を操れるので俺にかからない。

「任してもらうぞ?」
「あ、ああ……」

 冒険者たちは目の前の光景に驚くのと同時に、俺の言葉に頷いた。

「さて、汚物は処分しないとなぁ?」

 俺が腕を振るうと一人の盗賊を残して消し飛んだ。
 残った盗賊は尻もちを着き、ゆっくりと近付く俺を見て完全に怯えていた。

「さて、根城はどこだ?」
「し、知らね! 俺たちで全員だ!」
「へぇ……アニキって呼んでいたからてっきり根城があると思ったんだが? 教えてほしいなぁ?」
「だ、だから知らない!」

 なおも否定する盗賊の顔に近づく。

「この俺が丁寧に頼んでいるんだ。話さないと殺すよ?」
「ひぃ⁉ は、話すから! 殺さないでくれ!」
「いいから話せ」

 威圧すると盗賊はべらべらと喋り出した。

「ぜ、全部話した! これで俺を助けてくれ――」

 瞬間、盗賊の身体が弾け飛んだ。
 その光景に冒険者が目を見開いていた。

「……助けるって話じゃないのか?」
「殺さないとは言っていない。それに、盗賊は死んで当然の害虫だ」
「そうか……」
「お前たちは少し待ってろ。話だと根城に囚われた人がいるらしい。少し行ってくるわ。エイシアスはどうする?」

 戻ってきたエイシアスは「寝る」と言って馬車に戻ってしまう。
 俺は一人で根城へと向かうのだった。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


下にある【♡】をポチッと押すのと、【ブクマ】をしていただけたら嬉しいです!
作者の励みになり、執筆の原動力になります!
少しでも応援したい、という方はよろしくお願いします!
しおりを挟む
感想 38

あなたにおすすめの小説

ザ・聖女~戦場を焼き尽くすは、神敵滅殺の聖女ビームッ!~

右薙光介
ファンタジー
 長き平和の後、魔王復活の兆しあるエルメリア王国。  そんな中、神託によって聖女の降臨が予言される。  「光の刻印を持つ小麦と空の娘は、暗き道を照らし、闇を裂き、我らを悠久の平穏へと導くであろう……」  予言から五年。  魔王の脅威にさらされるエルメリア王国はいまだ聖女を見いだせずにいた。  そんな時、スラムで一人の聖女候補が〝確保〟される。  スラム生まれスラム育ち。狂犬の様に凶暴な彼女は、果たして真の聖女なのか。  金に目がくらんだ聖女候補セイラが、戦場を焼く尽くす聖なるファンタジー、ここに開幕!  

男装の皇族姫

shishamo346
ファンタジー
辺境の食糧庫と呼ばれる領地の領主の息子として誕生したアーサーは、実の父、平民の義母、腹違いの義兄と義妹に嫌われていた。 領地では、妖精憑きを嫌う文化があるため、妖精憑きに愛されるアーサーは、領地民からも嫌われていた。 しかし、領地の借金返済のために、アーサーの母は持参金をもって嫁ぎ、アーサーを次期領主とすることを母の生家である男爵家と契約で約束させられていた。 だが、誕生したアーサーは女の子であった。帝国では、跡継ぎは男のみ。そのため、アーサーは男として育てられた。 そして、十年に一度、王都で行われる舞踏会で、アーサーの復讐劇が始まることとなる。 なろうで妖精憑きシリーズの一つとして書いていたものをこちらで投稿しました。

魔力即時回復スキルでダンジョン攻略無双 〜規格外のスキルで爆速レベルアップ→超一流探索者も引くほど最強に〜

Josse.T
ファンタジー
悲運な貯金の溶かし方をした主人公・古谷浩二が100万円を溶かした代わりに手に入れたのは、ダンジョン内で魔力が無制限に即時回復するスキルだった。 せっかくなので、浩二はそれまで敬遠していたダンジョン探索で一攫千金を狙うことに。 その過程で浩二は、規格外のスキルで、世界トップレベルと言われていた探索者たちの度肝を抜くほど強くなっていく。

成長チートと全能神

ハーフ
ファンタジー
居眠り運転の車から20人の命を救った主人公,神代弘樹は実は全能神と魂が一緒だった。人々の命を救った彼は全能神の弟の全智神に成長チートをもらって伯爵の3男として転生する。成長チートと努力と知識と加護で最速で進化し無双する。 戦い、商業、政治、全てで彼は無双する!! ____________________________ 質問、誤字脱字など感想で教えてくださると嬉しいです。

スキルポイントが無限で全振りしても余るため、他に使ってみます

銀狐
ファンタジー
病気で17歳という若さで亡くなってしまった橘 勇輝。 死んだ際に3つの能力を手に入れ、別の世界に行けることになった。 そこで手に入れた能力でスキルポイントを無限にできる。 そのため、いろいろなスキルをカンストさせてみようと思いました。 ※10万文字が超えそうなので、長編にしました。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

女神から貰えるはずのチート能力をクラスメートに奪われ、原生林みたいなところに飛ばされたけどゲームキャラの能力が使えるので問題ありません

青山 有
ファンタジー
強引に言い寄る男から片思いの幼馴染を守ろうとした瞬間、教室に魔法陣が突如現れクラスごと異世界へ。 だが主人公と幼馴染、友人の三人は、女神から貰えるはずの希少スキルを他の生徒に奪われてしまう。さらに、一緒に召喚されたはずの生徒とは別の場所に弾かれてしまった。 女神から貰えるはずのチート能力は奪われ、弾かれた先は未開の原生林。 途方に暮れる主人公たち。 だが、たった一つの救いがあった。 三人は開発中のファンタジーRPGのキャラクターの能力を引き継いでいたのだ。 右も左も分からない異世界で途方に暮れる主人公たちが出会ったのは悩める大司教。 圧倒的な能力を持ちながら寄る辺なき主人公と、教会内部の勢力争いに勝利するためにも優秀な部下を必要としている大司教。 双方の利害が一致した。 ※他サイトで投稿した作品を加筆修正して投稿しております

公国の後継者として有望視されていたが無能者と烙印を押され、追放されたが、とんでもない隠れスキルで成り上がっていく。公国に戻る?いやだね!

秋田ノ介
ファンタジー
 主人公のロスティは公国家の次男として生まれ、品行方正、学問や剣術が優秀で、非の打ち所がなく、後継者となることを有望視されていた。  『スキル無し』……それによりロスティは無能者としての烙印を押され、後継者どころか公国から追放されることとなった。ロスティはなんとかなけなしの金でスキルを買うのだが、ゴミスキルと呼ばれるものだった。何の役にも立たないスキルだったが、ロスティのとんでもない隠れスキルでゴミスキルが成長し、レアスキル級に大化けしてしまう。  ロスティは次々とスキルを替えては成長させ、より凄いスキルを手にしていき、徐々に成り上がっていく。一方、ロスティを追放した公国は衰退を始めた。成り上がったロスティを呼び戻そうとするが……絶対にお断りだ!!!! 小説家になろうにも掲載しています。  

処理中です...