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第1章

1話:転生したのに売られ、捨てられ

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 気付くとそこは白い空間だった。

「俺、多分死んだよな?」

 少し前のことを思い出す。
 大学の帰り道、暴走した車が信号無視をして歩道に突っ込んできた。
近くに小学生くらいの女の子がおり、その子を突き飛ばしたのは良いが、そこからの記憶がない。

「お主は死んでおるよ」

 目の前にジジイが現れた。

「ジジイとは失礼な。ワシは神様だ」
「あ、心が読めるんですね。というか神様?」
「妙に落ち着いているが……ああ、なるほど。ラノベとかいうやつか」

 日本文化に詳しいなこのジジイ。

「ジジイは余計じゃ!」

 ツッコミを入れるジジイはコホンと咳払いをして話を始める。

「まあ、お主を異世界に転生させる」
「理由なくね? もしかし女の子? もしかして未来で薬を作って多くの人を救うとか」
「なんか慣れておるのぉ……まあ、その通りなんじゃが」
「ふーん」

 特に何も感じない。
 転生させてくれるなら有難い。異世界とかワクワクするもん。

「で、転生する前に特典じゃ」
「理解した。何をくれるんだ?」

 もらえるものは貰っておこうの精神だ。

「この中から一つ選んでくれ」

 目の前に半透明の画面が現れ、そこにスキル一覧が載っていた。
 色々なチートスキルが存在している。
 魔導の極み、剣聖、武神とこれさえあれば異世界で無双できそうだ。
 一つ一つ見ていると面白そうなスキルを見つけた。

【重力】
 重力を操る

「この重力ってなんだ? 説明が意味不明だ」
「それはワシが趣味で作ったスキルじゃ。使い手が理解できれば最強になりうるスキルじゃぞ?」
「ふーん。じゃあこれでいいや」
「適当じゃのう……」
「優秀なんだろ?」

 ジジイは頷く。
 ならこれでいいじゃん。

「わかった。スキルに関しては詳しく見れるようにしておこう。では転生させる。転生先はランダムになっている。では自由に生きるとよい」

 こうして俺は異世界へと転生した。

 ◇ ◇ ◇

 ってわけで、転生したよ!
 あまり裕福ではない一般家庭のようだがまあいい。
 さっさと独り立ちして自由を謳歌するんだ!

 ――十年後

「おいテオ! さっさと酒を買ってこい!」
「わかった」

 アル中の父に言われて俺は酒を買いに行く。
 これ、転生先失敗だろ。
 アル中の元冒険者の父と言い、父さんと結婚しているくせに売春なんてしている母さんといい。
 クズ過ぎる……

「だが独り立ちするにはまだ成人してないんだよな」

 16歳が成人の世界だ。
 あと六年我慢すればいい。

「父さん、買ってきたよ――ってこの人たち誰?」

 家の前には俺たち平民と違い身なりが良い。
 貴族ほどではないことから、商人なんだろう。

「ああ、コイツです」
「ふむ」

 すると中年の男性が俺をジッと見つめる。

「ふむ。五万ゴールドですね」
「いくらなんでも安いだろ!」

 この世界では一ゴールド一円と考えてもらえれば結構だ。
 平民が一カ月生活するのに大体十万ゴールドあれば足りる。
 てかコイツ、俺を見て五万って言ったか?

「仕方ないですね。では八万ゴールド。それが限界です」
「ッチ。わかった。それでいい」
「交渉成立ですね」

 もう一人の男性が金貨を八枚父さんに投げ渡すと、それを急いで拾っていた。

「ま、待て! なんで勝手に俺が売られることになるんだよ⁉」
「お前はまだ未成年。だから親の俺が所有者だ。お前を奴隷商に売ろうが売らないは俺の勝手だ。さっさと出ていくんだな」
「おい! クソ野郎が! それでも親か!」

 父さんは俺の声を無視して再び酒をあおり始めた。
 そして俺は奴隷商の男に連れられて行くのだった。
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