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弐拾 土豪たち
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《酒井直次》
境目城を陥落させると、直ぐに土豪達が俺への面会を求めてきた。内容は挨拶と今までと同じ権利を与える事を要求する事だった。近いうちに集めて今後の方針を伝えると言ってある。
俺は春兎に乗って飛燕と城下にある町、村、田畑を駆けた。
「飛燕、ここの豪族達はやりたい放題だな」
「その様です。恐らく、我らの言う事など聞かないでしょう」
「俺は豪族には豪族の責任をとらす」
「どいうことですか。豪族は年貢として巻き上げる事しかせぬ。そんな豪族はいらん」
「そうですね。でも、反発をくらいます」
すると、目の前に五人の武将が脇の山から駆け出してきて、太刀を抜いた。
「お前は酒井直次だな」
「お前達は?」
「死んで逝く者に教えてやらんでもええだろ」
俺は飛燕を見る。
「飛燕、頼む」
「承知しました」
敵が一気に斬りつけて来る。飛燕は馬にから飛び降りて太刀を抜いた。
煌めくような俊敏な動きで敵の間縫うように抜けていく。すると、敵は腹を抱えてうずくまり、その指の間から血が滴り落ちた。
俺も馬から降りて近づいて問う。
「助かりたい奴はいるか。お前達の主を言えば一人だけ助ける。早い者勝ちだ」
呻く武士達はお互いの顔を見合う。その中の一人がゆっくりとしゃべりだした。
「俺がしゃべる。そうしたら、俺以外の奴を助けてくれ」
「変わった奴だな。そして、主は?」
「藤堂貞光だ」
「お前の名は?」
「佐原重吉と申す」
「重吉よ、呼び出しに応じろよ」
「承知しました」
俺は佐原重吉を含めて五人を殺さずに、飛燕と共に境目城に戻った。翌日、藤堂貞吉、内藤三左衛門、松野三右衛門を境目城に呼んだ。俺の護衛として飛燕が左側にいる。そして、目の前に土豪の三人が座った。
中央に座るのが藤堂貞吉で一番歳をとっており、この三人の土豪達の先導役らしい。白髪で白髭を生やしており、知性を感じさせる。
その貞吉が口を開いた。
「酒井様、我らの要求はきいてもらえるのでしょうな」
「今年一年は年貢の徴収はしない。その事に変わりはない。それと必要以上の年貢徴収は罰する。土地、収穫に見合ったものとする。あと、人の売買も禁ずる」
「我らは納得できませぬな。皆もそうであろう」
他の二人も頷く。
「もう、納得してもらわなくても良い」
「我らの協力が無ければここは治められませんぞ」
「来い、佐原重吉」
奥から重吉が現れ、藤堂の横に座る。藤堂の顔が一瞬だけ引き吊ったのを見た。
「先日、刺客から命を狙われた。俺はそやつを捕まえ事情を聞いた。藤堂よ、どんな事情だと思う?」
「さあ、私にはさっぱりわかりませんな」
「佐原よ、申せ」
「酒井様を殺さなければ、私の妻と子供を殺すと脅されました」
「誰にだ?」
「ここにおる藤堂貞吉です」
すると、藤堂貞吉は大笑いをし始めた。
藤堂を睨みつける
「何がおかしい?」
「馬鹿げております。こんな見ず知らずの者を信じるとは」
「太郎丸よ、どちらが正しい」
太郎丸が一例をして顔をあげる。
「他の刺客からも同様な証言があり、実際に脅しを行った文も見つかっております」
「そうか。俺は重吉を信じる。自分を犠牲にして仲間を助けるような奴だしな」
「なんと愚かな主だ。我々と戦しても特はありませんよ」
「もう良い」
俺は立ち上がり、腰の太刀を抜いた。
「ま、待たれよ。本気ですか。私どもはもう一度、酒井殿の言う事を考えてみましょう」
藤堂は後退る。
「俺は殺さないと思うか。もし、そう思っているなら間違いだ。戦をするならしよう。但し、お前はここで死ぬ」
「な、な、何を」
刀を横に走らせて、首をはねた。残った二人の土豪の側に藤堂の頭が転がる。
奮え始めた二人。
「佐原重吉よ、お前が藤堂の後をまとめろ」
「は、はい。ありがたき幸せ」
震える二人の土豪に近づく。
「お前達も俺に従わないのだな」
太刀を振り上げる。
二人は床に伏せる様な土下座をした。
「大変、申し訳ありません。すべてご指示に従いますので、命はお救い下さい」
「今はそう言って、直ぐに裏切るだろ」
「滅相もございません。天地天命に誓い、尽くします」
「裏切り行為が発覚した時点で直ぐに殺す」
「承知しました」
「なら、俺達と来い。藤堂の財産を没収する」
俺は白狐軍の三十名と土豪の兵士二千を率いて藤堂の屋敷に入った。米、金の溜め込みは当たり前。豪華な金品も数知れず。そして、奴隷達を解放した。
「重吉、金で三千の兵を集めろ。残りの過剰な米や金は民へ還元せよ。そして、ここをお前の度量で治めてみせろ」
「は、はい。きっと良い村としてみせます」
俺は二人の土豪に向かって言った。
「内藤、松野よ。お前達も兵を三千集めろ。宇津山城を落としに行くぞ」
「は、は、はい、直ぐに準備します」
「出発は四日後だ」
二人はあんぐりと口を開けて呆然としていた。
境目城を陥落させると、直ぐに土豪達が俺への面会を求めてきた。内容は挨拶と今までと同じ権利を与える事を要求する事だった。近いうちに集めて今後の方針を伝えると言ってある。
俺は春兎に乗って飛燕と城下にある町、村、田畑を駆けた。
「飛燕、ここの豪族達はやりたい放題だな」
「その様です。恐らく、我らの言う事など聞かないでしょう」
「俺は豪族には豪族の責任をとらす」
「どいうことですか。豪族は年貢として巻き上げる事しかせぬ。そんな豪族はいらん」
「そうですね。でも、反発をくらいます」
すると、目の前に五人の武将が脇の山から駆け出してきて、太刀を抜いた。
「お前は酒井直次だな」
「お前達は?」
「死んで逝く者に教えてやらんでもええだろ」
俺は飛燕を見る。
「飛燕、頼む」
「承知しました」
敵が一気に斬りつけて来る。飛燕は馬にから飛び降りて太刀を抜いた。
煌めくような俊敏な動きで敵の間縫うように抜けていく。すると、敵は腹を抱えてうずくまり、その指の間から血が滴り落ちた。
俺も馬から降りて近づいて問う。
「助かりたい奴はいるか。お前達の主を言えば一人だけ助ける。早い者勝ちだ」
呻く武士達はお互いの顔を見合う。その中の一人がゆっくりとしゃべりだした。
「俺がしゃべる。そうしたら、俺以外の奴を助けてくれ」
「変わった奴だな。そして、主は?」
「藤堂貞光だ」
「お前の名は?」
「佐原重吉と申す」
「重吉よ、呼び出しに応じろよ」
「承知しました」
俺は佐原重吉を含めて五人を殺さずに、飛燕と共に境目城に戻った。翌日、藤堂貞吉、内藤三左衛門、松野三右衛門を境目城に呼んだ。俺の護衛として飛燕が左側にいる。そして、目の前に土豪の三人が座った。
中央に座るのが藤堂貞吉で一番歳をとっており、この三人の土豪達の先導役らしい。白髪で白髭を生やしており、知性を感じさせる。
その貞吉が口を開いた。
「酒井様、我らの要求はきいてもらえるのでしょうな」
「今年一年は年貢の徴収はしない。その事に変わりはない。それと必要以上の年貢徴収は罰する。土地、収穫に見合ったものとする。あと、人の売買も禁ずる」
「我らは納得できませぬな。皆もそうであろう」
他の二人も頷く。
「もう、納得してもらわなくても良い」
「我らの協力が無ければここは治められませんぞ」
「来い、佐原重吉」
奥から重吉が現れ、藤堂の横に座る。藤堂の顔が一瞬だけ引き吊ったのを見た。
「先日、刺客から命を狙われた。俺はそやつを捕まえ事情を聞いた。藤堂よ、どんな事情だと思う?」
「さあ、私にはさっぱりわかりませんな」
「佐原よ、申せ」
「酒井様を殺さなければ、私の妻と子供を殺すと脅されました」
「誰にだ?」
「ここにおる藤堂貞吉です」
すると、藤堂貞吉は大笑いをし始めた。
藤堂を睨みつける
「何がおかしい?」
「馬鹿げております。こんな見ず知らずの者を信じるとは」
「太郎丸よ、どちらが正しい」
太郎丸が一例をして顔をあげる。
「他の刺客からも同様な証言があり、実際に脅しを行った文も見つかっております」
「そうか。俺は重吉を信じる。自分を犠牲にして仲間を助けるような奴だしな」
「なんと愚かな主だ。我々と戦しても特はありませんよ」
「もう良い」
俺は立ち上がり、腰の太刀を抜いた。
「ま、待たれよ。本気ですか。私どもはもう一度、酒井殿の言う事を考えてみましょう」
藤堂は後退る。
「俺は殺さないと思うか。もし、そう思っているなら間違いだ。戦をするならしよう。但し、お前はここで死ぬ」
「な、な、何を」
刀を横に走らせて、首をはねた。残った二人の土豪の側に藤堂の頭が転がる。
奮え始めた二人。
「佐原重吉よ、お前が藤堂の後をまとめろ」
「は、はい。ありがたき幸せ」
震える二人の土豪に近づく。
「お前達も俺に従わないのだな」
太刀を振り上げる。
二人は床に伏せる様な土下座をした。
「大変、申し訳ありません。すべてご指示に従いますので、命はお救い下さい」
「今はそう言って、直ぐに裏切るだろ」
「滅相もございません。天地天命に誓い、尽くします」
「裏切り行為が発覚した時点で直ぐに殺す」
「承知しました」
「なら、俺達と来い。藤堂の財産を没収する」
俺は白狐軍の三十名と土豪の兵士二千を率いて藤堂の屋敷に入った。米、金の溜め込みは当たり前。豪華な金品も数知れず。そして、奴隷達を解放した。
「重吉、金で三千の兵を集めろ。残りの過剰な米や金は民へ還元せよ。そして、ここをお前の度量で治めてみせろ」
「は、はい。きっと良い村としてみせます」
俺は二人の土豪に向かって言った。
「内藤、松野よ。お前達も兵を三千集めろ。宇津山城を落としに行くぞ」
「は、は、はい、直ぐに準備します」
「出発は四日後だ」
二人はあんぐりと口を開けて呆然としていた。
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