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駆の章

日本という国

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《中澤裕太》
日本は全勝でグループ突破をした。
それは世界に衝撃を与えたのは間違いないだろう。
世界一候補であるスペインを撃破、世界最強のフォワードの一人であるオニエを封じ込め、世界最高の攻撃陣をもつアルゼンチンとの点取り合戦で勝つ。
日本国内はお騒ぎだ。
中澤裕太は駄目もとで、レオン.メッシーのインタビューを申し込んだところ、移動前の三十分だけという条件で承諾してもらえた。
これは、これで凄い事だ。
中澤裕太はスペインチームが宿泊しているホテルの最上階の部屋に通されていた。
黒スーツの男が数人おり、全てレオン.メッシーの護衛だ。
扉が開き、中へ入る。
レオン.メッシーはニコニコしている。
「ようこそ、ミスター中澤」
「あ、本日は時間を取って頂き、ありがとうこざいます」
「いや、いいんだ。私も聞きたい事があってね」
「なんですか?」
「まずは君のインタビューからどうぞ」
「では、遠慮なく。日本戦のアルゼンチンはキレきキレでした。良い試合だったのに、あんな反則をするとはとても残念でした。あれは故意ですか?」
「ストレートに聞いてくるな」
「商売なんで」
「そうだな。我々以上に日本が良すぎた。いや、大空隆之介かな。彼が、いなければアルゼンチンが圧勝していたな」
「そうです。彼を中心に日本は強くなっている。だから、彼を潰して欲しくない」
「潰すつもりは無かったと思うが、そうしなければ勝てないとアイツは思ったんだろう。だが、奴の考えもわかる。隆之介はそらほど迄に成長した。私も見誤った」
「何をですか?」
「隆之介には試合展開を変える程の打開力は無いと言ったのが行けなかった」
「打開力ですか?」
「そうだ。個人技で試合を切り開く力だ。南米のチームには二人、三人いる。日本にはいない。いや、いなかったというのが正しい」
「打開力。大空隆之介にはロングシュートがありますね」
「そうだ。だが、それだけじゃなかった。私からも良いか?」
「どうぞ」
「彼は何で無名だったんだ?」
「彼は友人と山奥でサッカーをしていたんだ」
「山奥?日本は凄いな。実績の無い選手も含めてリサーチしてるのか。凄すぎるな」
中澤は金の力を使った事を知っていたが、とても言えない。言った瞬間に世界で問題になってしまう。
メッシーはニコニコしている。事実を知っているんじゃないかと思うぐらい、ニヤニヤしている。
追及されてしまうと、話してしまいそうだ
「アイツは数少ないチャンスを生かして凄いですね。あ、そろそろ時間なんで。どうも、ありがとうございました」
「こちらこそ、ありがとう。楽しかったよ。あと、イギリスのルークには注意する事だね」
中澤はお礼をしてインタビューを終えた。

    
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