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駆の章

次なる戦場へ

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《宇垣悠里》
放送を終えてすぐに空山隆之介が搬送された病院へ急いだ。
だけど、報道陣が詰め掛けており、宇垣悠里も中へは入れない。
そこへ桐谷里帆が出てきた。
報道陣をスルーして迎えに来た車へ乗り込もうとしていた。
車へ近づき、ドアを軽くノックする。
窓が開く。
「桐谷さん、少し話を聞かせて」
「乗って下さい」
素早く乗り込み、発車した。
街の夜景が流れて行く中、桐谷里帆に尋ねた。
「空山さんの状態はどうでした?」
「足を痛めてる」
「大丈夫ですか?」
「無理しなければ大丈夫」
「そうですか」
「だから、心配しないで」
「私、空山さんの事が好きです。桐谷さんは?」
「な、なんで?突然、な、何?」
「はっきりさせておかないと気がすまないんです」
「そ、そう。私と隆之介は幼なじみ。ただ、それだけ」
「じゃあ、応援してくれますか?」
「そ、そうね」
「ふう、安心した」
「えっ」
「だって、二人は両思いと思っていたので。私、頑張ります」
「それより、隆之介の体を心配が先じゃない?」
「えっ、さっき大丈夫って」
「あ、そうだね。ホテルまで送るよ」
「ありがとうございます」
宇垣悠里は視線を窓の外へ移した。
隆ちゃんはあげない。

《俺》
翌朝、里帆が迎えに来た。
日本代表は決勝トーナメントの会場へ移動したが、病院へ入院した俺は一日遅れで里帆と移動する事となった。
「これ、見て」
「新聞?」
新聞には昨日のアルゼンチン戦の事が書いてあった。

‘’空山 自陣ゴール前からごぼう抜きのゴール‘’

何の事だかわからない。
「里帆、この記事は何?全然、記憶がない」
「たぶん、脳震盪を起こしていたんだよ」
「駆が見えたり、今回の様に記憶が無くなるとか、腫瘍のせいかな」
「違うよ。大丈夫」
「まだ、大丈夫だよな。そうだ、まだ俺にはやらないといけない事がある」
「さあ、行こう」
里帆が笑顔で俺を見詰める。
胸が張り裂けそうだ。
駆、お前の婚約者は最高の笑顔の持ち主だよ。

俺と里帆は次の戦場であるアトレティコスタジアムへ向かった。
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