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駆の章

ナイジェリア戦 後半開始

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《空山隆之介》
後半戦が始まった。
オニエに向かって森島がドリブルで仕掛けていく。
デカクテ速い。
森島は堪らず、左前にいる城戸へパスを出したが、オニエがカットしてボールを奪った。
「遅いやんけ」
大海が叫んでいた。

後半、十五分が経過した時、西島監督が動いた。
「大海、アップしろ」
「はいな」
大海はすくっと立ち上がり、俺に向く。
「ほな、行ってくるわ」
「世界を驚かせろ」
「当たり前やんけ」
大海は走り出し、すぐにフィールドに投入され、代わりに疲れきった南が戻ってきた。
「南さん、お疲れ」
「何にも出来なかった」
「オニエ.チェクツグはどうでした?」
「見たままだ。怪物だった」
オニエはムリして攻める事は無いが、完全に中盤を支配していた。
大海は裏へ抜ける為に常に探っている。
柴咲も城戸も大海へパスを送りたいが、オニエを初めとする中盤が厚くて貫けない。
メッシーが言っていた事を思い出していた。

“日本には打開出来る選手がいない”

この事かよ。
今、日本は攻めあぐねている。
何で、柴咲さんも城戸さんも自分で勝負をしないんだ。
個人で対抗できるのはアンタらしかいないだろ!
俺は立ち上がり、アップを初めた。
西島監督から呼ばれるかはわからないが、このフラストレーションが貯まっていく。

オニエが牙を向く。左サイドバックへ走り出すと同時にナイジェリアサイドからボールが蹴り出された。
永友も追うがオニエが圧倒的に速く、ボールが繋がる。
必死にマークに付く永友。
オニエの力に押されて、倒れかけるが、無理な体制からボールをゴールラインへ蹴りだした。
ナイジェリアのコーナーキックだ。
ん?
永友が倒れたまま、立ち上がれない。
残り、十五分だった。
西島監督が俺と乾さんを呼んだ。
俺は倒れた永友さんと交代して、乾さんは森島さんと交代した。
救護班のタンカに担がれた永友さんと擦れ違う。
「頼む。空山!」
「わかました」

俺は勢いを上げて、ピッチへ駆け出した。

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