上 下
17 / 50
駆の章

強さ

しおりを挟む
《空山隆之介》
城戸を始め、スペインエリアに日本勢が一気に流れ込んで行く。
俺はトップスピードで城戸の後方に詰めた。
フォワードの大海信吾は右サイドのスペースに走り込んでいる。
誰もが、そこへボールを供給すると思っている。
だから、俺によこせ。
城戸はボールを大海の方へ蹴ろうとした。
その時、イニエスタが俺の横を走り抜けて城戸と大海のパスラインに入ってカットしようとブラインドエリアから飛び出していた。
奴は笑って言った。
「バカな奴らだ。お前たちのサッカーは単純なんだよ」
次の瞬間、城戸はヒールでイニエスタがさっきまでいた場所にボールをコロコロと転がす。
そこには誰もいないはず。
だけど、そこには柴崎がいた。
俺やイニエスタのブラインドエリアから飛び出してきていたんだ。
だから、突然、現れた様に見える。
柴崎が笑っていた。
「さあ、始めよう」
何を?
ドリブルで正面の一人を抜きさる。
えっ?
そんな風に見えたが、ボールを置き去り。
空振り? 嘘だろ?
いや、違う。
そこにはミッドフィルダーの森島が入り込み、ボールをキープする。
イニエスタの動きが明らかに迷っている。
城戸に着くべきか、柴崎か、それとも森島を潰すべきか。
森島はイニエスタに向かってドリブルを始めた。
驚くイニエスタ。
俺は森島の背後に周り込み、パスを貰うように動く。
森島がチラリと俺を見た。
俺にボールが出された。イニエスタは標的を俺に変えてすぐボールを奪いに来る。
凄い。イニエスタが凄いじゃない。
柴崎はボールというエサでイニエスタを釣りだしていたんだ。
俺はボールを森島へ返すだけで良い。
少し強めに森島へ蹴り返す。
森島はボールをスルーした。
えっ?
転がった先には柴崎がいた。
柴崎はダイレクトに城戸に向かって低くて速いボールを右前に蹴った。
えっ?
今度は城戸がスルーした。
その先には大海がいる。
大海もダイレクトで中央に蹴りだした。
そこには柴崎が走り込んでいた。
「もらったー」
凄い気迫。必ず決める。
えっ?
柴崎は空振ってボールはスルーされていく。
嘘だろー
次の瞬間、海渡圭介が滑り混んでボールをゴールへ押し込んだ。
キーパーは柴崎に向いていた為、反応は出来ない。
ホイッスルがコートに鳴り響く。
日本の得点だ。
柴崎が笑顔で戻ってくる際にイニエスタに向かって言った。
それもスペイン語で。
「俺達のサッカーはお前達の守備ほど、単純じゃない」
イニエスタの顔が真っ赤になっている。

俺はまだまだだ。

城戸がスキップしながら戻ってくる。
「ひゃっ、ひゃっ、ひゃ、あと一点、あと一点」
う~ん。今回のゴールは城戸が描いたのか?柴崎が描いたのか?
誰が司令塔なのか?

どちらにせよ、日本の見事な得点なのは間違いない。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

一条春都の料理帖

藤里 侑
ライト文芸
一条春都の楽しみは、日々の食事である。自分の食べたいものを作り食べることが、彼にとっての幸せであった。時にはありあわせのもので済ませたり、誰かのために料理を作ってみたり。 今日も理想の食事を追い求め、彼の腹は鳴るのだった。 **** いつも読んでいただいてありがとうございます。 とても励みになっています。これからもよろしくお願いします。

【ガチ恋プリンセス】これがVtuberのおしごと~後輩はガチで陰キャでコミュ障。。。『ましのん』コンビでトップVtuberを目指します!

夕姫
ライト文芸
Vtuber事務所『Fmすたーらいぶ』の1期生として活動する、清楚担当Vtuber『姫宮ましろ』。そんな彼女にはある秘密がある。それは中の人が男ということ……。 そんな『姫宮ましろ』の中の人こと、主人公の神崎颯太は『Fmすたーらいぶ』のマネージャーである姉の神崎桃を助けるためにVtuberとして活動していた。 同じ事務所のライバーとはほとんど絡まない、連絡も必要最低限。そんな生活を2年続けていたある日。事務所の不手際で半年前にデビューした3期生のVtuber『双葉かのん』こと鈴町彩芽に正体が知られて…… この物語は正体を隠しながら『姫宮ましろ』として活動する主人公とガチで陰キャでコミュ障な後輩ちゃんのVtuberお仕事ラブコメディ ※2人の恋愛模様は中学生並みにゆっくりです。温かく見守ってください ※配信パートは在籍ライバーが織り成す感動あり、涙あり、笑いありw箱推しリスナーの気分で読んでください AIイラストで作ったFA(ファンアート) ⬇️ https://www.alphapolis.co.jp/novel/187178688/738771100 も不定期更新中。こちらも応援よろしくです

伝える前に振られてしまった私の恋

メカ喜楽直人
恋愛
母に連れられて行った王妃様とのお茶会の席を、ひとり抜け出したアーリーンは、幼馴染みと友人たちが歓談する場に出くわす。 そこで、ひとりの令息が婚約をしたのだと話し出した。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

【二章開始】『事務員はいらない』と実家からも騎士団からも追放された書記は『命名』で生み出した最強家族とのんびり暮らしたい

斑目 ごたく
ファンタジー
 「この騎士団に、事務員はいらない。ユーリ、お前はクビだ」リグリア王国最強の騎士団と呼ばれた黒葬騎士団。そこで自らのスキル「書記」を生かして事務仕事に勤しんでいたユーリは、そう言われ騎士団を追放される。  さらに彼は「四大貴族」と呼ばれるほどの名門貴族であった実家からも勘当されたのだった。  失意のまま乗合馬車に飛び乗ったユーリが辿り着いたのは、最果ての街キッパゲルラ。  彼はそこで自らのスキル「書記」を生かすことで、無自覚なまま成功を手にする。  そして彼のスキル「書記」には、新たな能力「命名」が目覚めていた。  彼はその能力「命名」で二人の獣耳美少女、「ネロ」と「プティ」を生み出す。  そして彼女達が見つけ出した伝説の聖剣「エクスカリバー」を「命名」したユーリはその三人の家族と共に賑やかに暮らしていく。    やがて事務員としての仕事欲しさから領主に雇われた彼は、大好きな事務仕事に全力に勤しんでいた。それがとんでもない騒動を巻き起こすとは知らずに。  これは事務仕事が大好きな余りそのチートスキルで無自覚に無双するユーリと、彼が生み出した最強の家族が世界を「書き換えて」いく物語。  火・木・土曜日20:10、定期更新中。  この作品は「小説家になろう」様にも投稿されています。

未亡人となった側妃は、故郷に戻ることにした

星ふくろう
恋愛
 カトリーナは帝国と王国の同盟により、先代国王の側室として王国にやって来た。  帝国皇女は正式な結婚式を挙げる前に夫を失ってしまう。  その後、義理の息子になる第二王子の正妃として命じられたが、王子は彼女を嫌い浮気相手を溺愛する。  数度の恥知らずな婚約破棄を言い渡された時、カトリーナは帝国に戻ろうと決めたのだった。    他の投稿サイトでも掲載しています。

【完結】真実の愛とやらに目覚めてしまった王太子のその後

綾森れん
恋愛
レオノーラ・ドゥランテ侯爵令嬢は夜会にて婚約者の王太子から、 「真実の愛に目覚めた」 と衝撃の告白をされる。 王太子の愛のお相手は男爵令嬢パミーナ。 婚約は破棄され、レオノーラは王太子の弟である公爵との婚約が決まる。 一方、今まで男爵令嬢としての教育しか受けていなかったパミーナには急遽、王妃教育がほどこされるが全く進まない。 文句ばかり言うわがままなパミーナに、王宮の人々は愛想を尽かす。 そんな中「真実の愛」で結ばれた王太子だけが愛する妃パミーナの面倒を見るが、それは不幸の始まりだった。 周囲の忠告を聞かず「真実の愛」とやらを貫いた王太子の末路とは?

どのみちヤられるならイケメン騎士がいい!

あーす。
BL
異世界に美少年になってトリップした元腐女子。 次々ヤられる色々なゲームステージの中、イケメン騎士が必ず登場。 どのみちヤられるんら、やっぱイケメン騎士だよね。 って事で、頑張ってイケメン騎士をオトすべく、奮闘する物語。

処理中です...