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駆の章

ハーフタイム

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《宇垣悠里》
前半終了と同時に中継の準備が始まる。
興奮が治まらない。
前半終了間際の日本のゴール。
後半戦へ十分期待させるものであった。
スタッフからの合図だ。
正面の小さなモニターにスタジオの大居正広が
映し出されている。
宇垣悠里へ話しかけた。
「悠里ちゃん、そっちはどう?」
「はい、スタジアムは大興奮です。前半最後の得点により日本は生き返りました」
「はははは、スタジアムもそうかも知れないけど、悠里ちゃんが一番興奮しているじゃないの」
「そうなんです。空山選手がボールを奪った瞬間から始まっていました。そこから城戸選手、大海選手と流れての最速カウンターゴール。世界レベルのゴールと言っても良いと思います」
「空山選手は突然、サッカー界に現れての活躍だけど、本物かな。悠里ちゃんは、どう見る?」
「本物と思います。後半も期待して良いと思います」
「彼は何者?」
「わかりません。本当に情報が無いんです。私、彼の事を知りたい」
「おいおい、悠里ちゃん、空山隆之介に恋しちゃってるんじゃないの?」
「えっ、そんな事は」
「冗談だよ。また、お願いするね」
放送はスタジオに戻っていく。
だけど、宇垣悠里には大居の質問が心に残っていた。

私、恋はなんてしないと誓っている。
もう、騙されて辛い思いをしたくないし、信用しない。
恋を辞めて三年が経つ。

《桐谷里帆》
桐谷里帆はVIP席で大興奮。
「麟太郎、隆之介がピッチに立った。駆の夢がかなった」
執事の濱本麟太郎は優しく微笑み。言う。
「おめでとうございます。でも、なんだかこれで終わりのような言い方ですね」
「夢をかなえた後は、隆之介はヤマタニの後継者になる」
「彼がそう言ったのですか?」
「ううん。言って無いけど彼は経営者としての才能は最高の知識とセンスを持っている。私の帝王学なんて隆之介の前ではかすれてしまう。
彼はサッカー界で埋もれてはいけない」
「私も存じています。その点においては駆様やお嬢様よりも優れています」
桐谷里帆はグラスを持ち上げてピッチを見る。
「サッカーが終わった後、彼をこっちに引き込む」
「彼の事が好きなのですね」
「そんな事は無理。私は駆の許嫁。隆之介が私を見るはずが無い」
「そうでしょうか」
「もう、その話は辞めて」
何故か刹那さで胸が苦しい。
駆のせい?それとも隆之介のせい?

ピッチ上に選手達が現れた。
後半戦が始まる。

頑張れ、隆之介!



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